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意識を取り戻してから、数日が経った。
体は安定している。
倒れることもなく、魔力の暴走も起きていない。
――けれど。
(……落ち着かない)
胸の奥で、光と闇が静かに揺れているのを、はっきりと感じていた。
その日、王宮から正式な招集がかかる。
集められたのは、王と王妃。
父と母。
騎士団長アルベルト。
そして数名の宮廷魔導士だった。
私は、母の隣に座らされている。
「結論から言おう」
王が、静かに切り出した。
「ルクシアの魔力は、すでに外部へ影響を及ぼし始めている」
その言葉に、空気が張りつめる。
宮廷魔導士の一人が、魔導具を操作した。
淡い光の中に映し出されたのは、
王都周辺で観測された魔力の揺らぎ。
「この波動は、光と闇が混在しています」
「通常ではあり得ない反応です」
父が、低く問う。
「娘が、意図せず放っていると?」
「はい」
はっきりとした答えだった。
「現在は微量。
しかし成長と共に、制御が追いつかなくなる可能性が高い」
母の手が、ぎゅっと強くなる。
「……危険なのですか」
王妃が、ゆっくりと口を開いた。
「制御を誤れば、周囲に影響を及ぼします。
噂が広がれば、恐れを抱く者も出るでしょう」
(……もう、始まってる)
貴族たちの視線。
囁かれる言葉。
“光の子”
“闇を孕む存在”
どちらも、私を縛る。
「だからこそ」
王が、はっきりと言った。
「ルクシアには、正式な管理と教育が必要だ」
視線が、私に集まる。
「王立魔法学院への入学を、義務とする」
その言葉に、ユリウスが思わず声を上げた。
「義務……?」
「年齢は、十六」
静かな宣告だった。
「王立魔法学院は、王国で最も高度な結界と教育体制を持つ」
「そこで、光と闇、両方の制御を学ばせる」
レオンハルト王子が、拳を握る。
「……選択の余地は?」
王は、首を横に振った。
「ない」
はっきりとした言葉だった。
「これは、王国としての決定だ」
父は、目を閉じる。
母は、私の肩を抱き寄せた。
「……ルクシア」
私は、少しだけ考えてから、顔を上げる。
「……行きます」
全員が、息を止めた。
「怖いです。でも」
胸の奥で、光と闇が静かに応えた。
「ちゃんと、知りたい。
私の力が、何なのか」
王は、深く頷いた。
「覚悟があるなら、我々も守ろう」
アルベルトが、低く告げる。
「学院入学までの十数年」
「王国は、全力であなたを秘匿し、守備を固めます」
それは、守りであり、
同時に――檻でもあった。
(……16歳)
遠い未来のようで、
確実に近づいてくる日。
王立魔法学院。
そこが、私の運命の分岐点になる。
――光と闇を抱えたまま。
逃げることは、もう許されない。