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王立魔法学院への入学が決まってから、私の日常は、はっきりと形を変えた。
(……静か)
以前は誰かしらが話していて、
笑い声が途切れることはなかったのに。
今は、足音の方が多い。
廊下。
庭。
部屋の前。
どこへ行っても、護衛の気配がある。
「ルクシア様、こちらへ」
「お一人での移動は危険です」
やわらかな口調だけれど、
拒否という選択肢は、最初から用意されていなかった。
(……これが、守られるってこと)
外出は、完全に制限された。
庭で遊ぶ時間も、決められた短時間だけ。
魔法の練習は、
さらに短く、さらに慎重になった。
「今日はここまでにしましょう」
光が、ほんの少し揺れただけで、即終了。
(……まだ、なにもしてないのに)
その日の午後。
中庭で、久しぶりに友人たちと顔を合わせた。
エリオス。
セレス。
カイ。
ノア。
みんな、前と同じ顔をしているはずなのに――
どこか、ぎこちない。
「……元気?」
私が声をかけると、
一瞬だけ、空気が止まった。
「うん、元気だよ!」
セレスが笑う。
でも、その笑顔は少し硬い。
「……無理、してない?」
ノアが、遠慮がちに尋ねる。
「してないよ」
本当は、少しだけしているけれど。
カイは、私をまっすぐ見られず、
視線を逸らしたまま言った。
「……すごいよな、ルクシア」
その言葉に、胸が小さく揺れる。
「光と闇、両方なんて……」
エリオスは、少し距離を取った場所で立っていた。
「……近づきすぎるの、よくないって」
護衛に、言われたのだろう。
(……ああ)
分かってしまった。
私が変わったんじゃない。
世界の見方が、変わったんだ。
「ねえ」
思わず、口を開く。
「前みたいに……遊べない?」
その瞬間、
全員が、困ったような顔をした。
「……遊びたいよ」
「でも」
「何かあったら……」
言葉の続きを、
誰も口にしなかった。
それが、答えだった。
夜。
自室の窓辺に座り、外を眺める。
遠くに見える、王都の灯り。
(……学院に行けば)
もっと多くの人に会う。
もっと、多くの視線を浴びる。
怖がられるかもしれない。
期待されるかもしれない。
でも。
(今よりは……)
一人じゃないかもしれない。
胸の奥で、光と闇が静かに揺れた。
守られている。
でも、閉じ込められている。
それでも私は――
この力と一緒に、
前に進くしかないのだと、
静かに理解していた。