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家に戻って一人になると
青桜のよくわからない
言動の数々を思い出した
数年ごしに その答え合わせ
をしている気分だ
そういえば最初のころに
不穏なこと言ってた
堕として地獄見せちゃおうかな
みたいなこととか
あれって 生を謳歌してる
ヒトたちに八つ当たりして
憂さ晴らし してる感じ
だったのかな?
青桜は自分が長くは生きられない
と思っていた
だから 彼女さんに結婚したい
って言われても断ってたんだ
結婚しない主義ってそういうこと
だったのか
彼女さんの方は 多分病気の
ことも 知った上で だろうな
すごいヒトだ 本物だ
もしかしたら 彼女さんの方から
愛想尽かして振ってくれるように
女遊びしてた可能性もある
のかな?
だとしたら ちょっと
女々しいな
あんな ステディリングまで
彫っておいて
彼女のために 別れるなら別れる
結婚するなら 結婚したれよ
いや 違うか?女たらしは生来の
モノ だったと思うな アレは
別れた日 ワタシの誕生日で
クリスマスイヴだったね
思い出してきた
その前の年の誕生日も ケーキ
とかプレゼント買ってきて
祝って くれたね
でも 泊まっては行かなかった
その年はケーキと プレゼントに
ネックレスレスを貰った
銀色のネックレス トップは
白と青の小花があしらわれていた
『可愛い ありがとう!
可愛すぎて これに合う服
持ってない』
「なんで 余計なこと言うかな
オマエは..」
「素直に喜んどけよ」
「ほら 付けてやるから 貸せ」
「似合うよ 可愛いじゃん」
普通の恋人同士みたいな
甘い会話が交わされたあと
やっぱりオマエは帰る
彼女のところに
まぁ クリスマスイヴだもんね
こういう日に生まれたワタシが
悪い…って そんなわけあるか!
しんどいんだって! こういうの!
家庭持ってる男と不倫してる愛人
の気持ちじゃんか こんなもん!
一生知りたくなかったわ
こんな気持ち!ボケがぁ!!
玄関で鍵を開けた 青桜の背中に
抱きついた
好きだったなぁ この背中
『ちょっとだけ待って
振り向かないで聞いて』
『仕事辞めるって
言ってたでしょ?ワタシ』
『それで ココも引っ越すの』
『引っ越し先は教えない
もう 別れよう』
「なんで?男できた?」
アハハ
『言うと思ったソレ』
『オマエじゃないんだから!』
『そんなわけあるか!』
『逆だよ 好きになりすぎたの
本気になっちゃって
しんどいんだよ この関係が』
『だから もう 解放して?』
「なんで? 刺し殺してくれる
んじゃ なかったっけ?」
『そこまでの根性ないよ』
『それにそれは いつか誰かに
刺されるぞって言っただけ
じゃん』
『じゃあ.. ね..』
声が震えてきてワタシは会話
を切ろうとする
コイツの前で泣きたくない
「あ ネックレス….」
『..なに? 返す?』
「アホ そんな みみっちい
こと言うか! 捨てんなよ!
一生 持ってろ 呪いとして」
『ふふっ ..分かった
一生封印しとくわ 呪物として』
いつも通りの会話に 一気に涙が
溢れた しゃくり上げるほど
泣いてしまった
ああ!もう! 泣かないと
決めてたのに めちゃくちゃだよ
『..さっさと 行..って』
ドアを開けて青桜を押し出し
鍵を閉めた
しばらくドアの向こう側に
佇んでいた青桜の 気配が
歩き出して 消えていった
何も知らないワタシといるのが
現実逃避に都合が良かったの?
それで少しは救われてたの?
お互いに自分の現実と戦うのを
避けてた
逃げて 逃げて 自分に似た
弱虫の卑怯者を見つけてしまった
傷を舐め合うように
縋るように抱き合ってお互いに
足の引っ張りあいをしてたんだな
「捨てるなよ 」と言われた
ネックレスが気になって
棚の奥の小箱を取り出す
青と白の丸い5枚の花弁の
小花が 二つ ついている
コレって何の花だ?
丸い 花弁 5枚の小花
青と白 で ググる
一番近いのは勿忘草かな
花言葉は
青いのは (誠実な愛)
おいおい 何 騙ってんだよ
笑っちゃうよ
一番オマエと縁遠いヤツだろ
相変わらず嘘ばっかだな
白いのは (私を忘れないで)
あ! ちょっ
泣かせにくんな こっち か
オマエの成分
半分嘘で半分本当だもんな
うわー 調べた順番も
操作された気がするわ
オマエ もしや 今そばにいる?
あと 泣かせたいなら
ピンクだったね
ピンクのは(友情) だってさ
ピンクと白だったら
号泣しちゃうとこだったよ
でもまぁ 半分嘘でできてるのが
まさしく オマエ みたいで
それはソレで懐かしいな
もう 終わってしまった
オマエの人生に祈ったって
どうしようもないのはわかってる
わかってるけど祈らずには
いれない
どうか アイツの望んだように
最期まで自由で ふざけた人生を
送れてます ように
どうか 最期は
穏やかに逝けてますように
青桜はワタシの遅い春
そのものだった
オマエの生き方を否定したら
ワタシの青春も否定することに
なっちゃうもんな
バカだなオマエ って思うたびに
自分にも跳ね返ってくる
本当 青くて馬鹿だった
頭が悪くて頭悪い 馬鹿な
関係だったはずなのに
黒歴史なのに 振り返れば眩しい
クソな思い出をありがとう
青桜
お墓がどことか探そうとは
思わんけど このネックレスに
祈れば届いてる気がする
だって霊感とかないけ
ふと 蘇るセリフがある
「失礼な 7割だよ」
ヘラヘラしながら言う
アイツ
『あほう 3割嘘だったら
それはもう誠実じゃ
ねぇんだわ!』
『ワタシも もう 本物 を
見つけたんだよ』
『もう騙されてやれないなぁ』
生の衝動 のほかに
死の衝動もあるそうだ
死を見据え 睨みつけるように
呪うように 生きてたオマエ
死んだように流されて生きてた
ワタシ
ワタシだけじゃなく
青桜も沼の底にいたんだね
でもワタシを抜け出させてくれた
のも 間違いなく青桜だったよ
青桜が底から押し上げてくれた
青桜が撒き散らしてたのは
死に向かう破壊衝動みたいな
ものだったのかもしれないけど
不思議とワタシが受け取っていた
のは 生きる力だった気がする
『ありがとね』
声をかけて ワタシは
ネックレスを小箱に戻して
棚の奥へしっかりと
封印 しなおした