テラーノベル
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第13話
アズメイン/戦闘パロの後日談
コンコンと2回だけの軽いノックが鳴らされる
その後に「入りますね?」と淡々とした様子で引き戸を開けてきた
まだ意識が朦朧としている俺に紗知はいつもと変わらない様子で話しかけてくる
「朝食です、お好きなタイミングでどうぞ召し上がってください」
重い体を起こそうと身体に力を入れるがやはり身体は再生するからと言って疲れや致命傷の傷はすぐには治らないためすぐに身体には痛みが走る
っ”…と声にならない声を上げては自身の胸を抑える
「貴方…まだ完治しきってないんですから下手に動かないでください」
私の手間が増えるんで、と素っ気ない言葉でそう付け足しては立ち上がり、部屋を後にしようとする紗知を掠れた声で呼び止める
ちなみに、身体の再生は出来ても一度致命傷である脳や心臓を狙われると全体的な再生が遅くなるのがアズ自身欠点だと思っている
その為、先日の戦いで心臓をやられたため喉や肺、靭帯などの再生はまだ完全に出来ていない
それでもなんとか声を絞り出す
「その…助けてくれてありがとうな」
軽く頭を下げてははにかみ、無理やりでも身体を起こす
紗知には絶対に直接言わないが、後から黒美に聞いた話によるとどうやら紗知は意識が完全に無くなっていた俺を本当に心配してとにかくその場で出来ることだけやったとのこと
そして、黒美がいる場へと帰ってきた紗知は自身の体力も気にせず応急処置してくれたこと
最後に、俺が僅かながらに意識を取り戻し、呼吸も脈も正常になってきた時に涙を流して喜んでくれたこと
そんな紗知にお礼がしたくて精一杯頭の中で選んだ言葉がこれだった
するとすぐに紗知の足がその場で止まった
「何なんです?急に…私は黒美に任された事をやったまでです」
その言葉に返事をしようと何とか声を出そうとするがそれを遮るように紗知が「どうせ声が出ないんでしょう?無理して喋らないでください」と声に出す
それに付け足すようにして発した言葉は予想外のものだった
「…まぁ、生きてくれてて安心しましたよ」
急にそんな事を言われては驚き、こちらにまた振り返って向かってくる
一度俺を見たかと思うとすぐにベッドの隣の椅子へと座る
明るく差し込んでくる太陽の光にカーテンを閉めてほしいと紗知にお願いをし、紗知が作ってくれた朝食に口をつける
「どうです?お味は」
「昔よく、私の母親がしていた味付けなんです」
「まぁそれもこれも全て他人類であるヴァンパイアに壊されたんですけどね」
そう言っては足を組み外を眺める紗知に俺はその言葉になんと返していいのか分からず朝食を食べる手が止まった
悲しさや悔しさ、怒りなど色々な感情が紗知からは読み取れた
「なので私はヴァンパイアが心の底から嫌いです」
「特に…貴方みたいなヴァンパイアが大嫌いなんです…どうしてか、私の感覚が狂いそうになるんです」
「貴方みたいな心優しいヴァンパイアと接していると…」
そんな言葉を言われ、ぽかーんっとしていると紗知がまだ言葉を続ける
「あ~、もういいです、この話やめです、私はもう行きますからね」
そう言うと組んでいた足を戻しサッと立ち上がると俺が声を出す間もなく紗知はそそくさと部屋の扉を開け放ち、行ってしまった
俺は紗知が発した言葉になんと返せばよかったのかと冷えきった朝食を口に運びながら考えていた
分かるはずもない答えを考え続け食べ終わると同時にまたベッドへと伏せ、その意識を自身の瞼の裏へと預けた
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「怜~?起きてる?入るよ~!」
いつもと変わらない様子で元気よく声を出しては言い終わるよりも先に扉が開け放たれていた
俺は俺でアズよりかは軽傷だが普通の人間ならば即死するほどの怪我を負っていた
「これ朝ご飯、紗知が作ってくれたんだよ、冷める前に食べたら?」
そう言ってはベッドの隣の椅子へと座りそれと同時に運んでくれた朝食も机へと置く
「ねぇ、いっつも思うんだけどさその狐面に口布…暑くないの…?」
普段付けている狐面は今は外しているがその下にはもう一枚口布をしている
「今までずっとこれで生活してきてるからな…多分感覚が麻痺してるんだろうな、全く暑くない」
ふ~ん、と軽い返事をしては暇そうにする黒美にこちらは身体を起こし朝食を口に運ぼうとスプーンを手に取る
その瞬間に激しい金属音を立ててはスプーンが落下するのが目に見えた
「あ~…まぁそうなるよね…」
黒美が納得するのも当たり前だ
なんせ、先日の戦いで利き手の指は三本無くしているからだ
無くしたからと言ってもう二度と再生しない訳ではないが完全に元通りになるまでは時間がかかる
「ほら、口開けて」
そう言い、スプーンを持ち直してはそれで朝食を掬い、まるで小さい子供にご飯をあげるかのように俺に催促してくる
は?と、困惑している俺に黒美はきょとんとした顔を浮かべている
「…黒美の中でこういう事をするのは普通なのか?」
すると黒美は珍しく驚いたような照れているような表情を浮かべては言葉を発する
「あ~…いや、えっと…これはぁ…いつも紗知が体調崩した時にやってあげてるからつい癖で…」
そう必死に弁明しようと早口で喋る黒美が何故だかとても可愛らしく思えてしまった
「いやまぁ…黒美が言うなら…」
そう言っては困惑している黒美を他所に口布に手をかける
平然を装っている俺も何だかんだ言って少しの恥じらいがある
「…早く口開けて」
そう催促されては小さく口を開けては食べる
この瞬間がまるで永遠のように感じた
「後はもう自分で食べて!」
そう少しはにかみながら部屋を後にしてしまった
どうしても少し嬉しかった自分がいるのが不思議で仕方がなかった
オワリ
コメント
5件
うわぁぁぁぁぁああ後日談あるとは思わないじゃんッッ!!!!! 紗知ちゃんツンデレな部分出てて可愛い、、、!!!💕 複雑な心境なんだろうけど、見てるこっちは尊すぎて死亡() 怜と黒美のやりとりかわいすぎだろ!! 何でこんなに癒されるんだぁぁあ ありがとうございますッ!!🙌✨