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商人の朝は早い。日が昇る前には着替えと食事を済ませ日の出とともに荷馬車を走らせる。俺は随分と早く起きてしまったものだから川へ湯浴み用の水を取りに行った帰りに見た光景に俺は少し驚いた。森の中に人と同じくらいの大きさをした三毛猫が体を丸めているではないか。少し近づき目を凝らしてみてみるとこれは三毛猫ではなく少女だった。三毛猫のように見えたのは白い布の断片と泥まみれの姿だったからだ。さてここで俺は2つの考えがあった。服を用意して風呂に入れ飯を食べさせそのまま奴隷として売るという考えとシュリメルと同じように旅の連れにするという考えだった。どちらにせよ服を用意して風呂に入れ飯を与えるところまでは同じなので連れて帰ることに変わりは無かった。「君どうしたの?こんなところで」少女は大変不機嫌な目をしていた。起こされたことへの怒りか惨めな姿を馬鹿にされると思ったのかは未だにわからない。ただ一つわかるのは俺のことをよくないと思っているということだった。「俺の名前はハヤセル。ハヤセル・ゼルディアだ」「リーニ」不機嫌ながら少女は言った。「リーニかいい名前だな」「そう?で何のよう?」「いや?こんなにかわいい子供がボロボロの布切れに泥まみれの格好だなんてあまりにもかわいそうだったものでうちで飯でも食べないか?と聞こうと思っただけだ」「行く」予想外の返答に俺の方が戸惑ってしまった。よほどお腹が空いているのだろう。ひとまず俺はリーニをシュリメルの家に連れて帰った。「どういうつもりだハヤセル」「どういうも何も見つけちゃったんだから放って置くわけにもいかないだろ?」「にしても何で連れて帰ってきた後に許可を取るんだよ」「それは申し訳ないと思ってる」「じゃぁ捨ててくるんだな」「それはもったいないだろ?奴隷にして売るもよし俺らの奴隷としてもよしどちらに転げようとも俺たちの得だ」「そういう考えは割とすぐに崩れ落ちると何故わからない?」「わかってないわけじゃないよ。ただ損はしないって話だ」「商売にとって損得勘定は1つの判断材料にすぎない。それに商談になりそうな私生活の出会いをはかるとどうなるか、わかるよな?」「商談前の目安はエントリーしていない種目の練習と同じ。その段階では価値を生まない」「わかってるならいい」「じゃ風呂に入れてくるな」「今の話を踏まえての行動か!?」正直俺はこの少女については損得だけで動いている気がしなかった。昔ただ普通に生活していた少年が今そこにいる少女と重なっているかのような。そう思ってか損得関係なくこの少女を助けたいと思ってしまっていた。奴隷にして売るなど家へ連れて行くための自分を説得させるための言い訳だったのかもしれない。「飯美味しいか?」「うん」小さく頷く少女に「食べ終わったらお風呂入りな服買ってくるから」「わかった」そう言い残し風呂に入ったはいいものの今の俺には時間が無い。明日の朝までに荷馬車で半日かかる隣町の市場で小麦をパンにして1500金貨以上で売らなければならない。そのために今日の遅くても日の出の1時間後にはここを出なければならない。そもそもこんな朝早くから開いている服屋なんてあるのだろうか?そうこうしているうちにリーニが風呂からあがってしまった。「服」「あぁわかったちょっと待ってて」俺は慌てて自分の荷物から1番小綺麗な服を用意して渡してしまった。「ありがと」「うん」気まずいここまで想定していなかったのはこちら側のミスだ。とにかく服は町に行ってから新しいものを買うということにして自分を落ち着かせ一度シュリメルのもとへ行った。