いい加減構って!
しろニキ
仕事が忙しいしろせんせーに構ってもらいたいニキくん
ニキ視点
ボビーが構ってくれない。
仕事が互いに忙しい中、相方はよく外出関連の仕事を預かっていたり、編集用のdiscordサーバーに来たとしても長時間滞在することが最近無い。この寂しさを埋めるためにりぃちょ達とエペしたり、必要以上に編集に打ち込んだりしてきたが流石にもう限界だ。だけれど今も仕事に勤しんでいる相方を邪魔したくは無い。スマホの画面は相方に連絡をかける手前まで開いており、延々と葛藤をし続ける。通話をかけようとして何度も寸前の所で指を止める。女々しい自分が嫌になってしまう。悶々と葛藤し続けた結果、相方の名前をメッセージで送信した。
「…なに、」
『それはこっちのセリフや笑』
数分もしないうちに既読が付き、その後すぐに電話のコールが鳴った。送ったのは「ボビー」たったそれだけ、なのにわざわざ電話までしてくれる相方が本当に優しくて、また相方への好意が厚くなる。
どうしたのと優しく問いかけてくれて、本当の事を言ってしまおうかなんて考えたが、どうもそんな気にはなれなくて、なんでもないと素っ気ない返答をした。
『ニキ、お前ん家のドア開けて』
「え、うん」
玄関を開けろと言われて椅子から立ち上がり、部屋から出て玄関に向かう。期待しても良いのかな、なんて思いながらドアノブに手をかけて扉を開けた。
「よ」
「ぼび、!」
扉を開けて前を見れば大好きな相方が居て、胸が高鳴った。そそくさと家の中に居れて相方に抱き着いた。うぉ、なんておっさんくさい声を出しながらも俺を受け止めて抱き締めてくる。それに応えるべく俺も相方を抱き締め返した。
「ボビーが忙しいのもわかってた、わかってたけど流石にほっぽりすぎ…」
「…すまん」
「寂しくて仕方なかった、会いたかった…」
久方振りに感じた相方の体温に包まれて、思ってた事全部吐き出してやろうと思って包み隠さず全部話した。二人で静かに抱き合って、相方の存在を確かめるように目を瞑って相方にもたれかかる。ふわりと鼻をさす相方の匂いに自己の寂しさの器がじわじわと満たされていく。だけれども俺はそれだけでは満たされることはなくて、少し相方から距離を取る。そして、相方を視界に捉えて、にこやかに笑って声を出す。
「ね、ボビー構って?」
「閣下の仰せのままに」
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変化
しろニキ
4月14日はパートナーデーらしいです。
「愛の方向性」と同じ時間軸
ニキ視点
ボビーにプロポーズされて数日が経過した。変わった事なんて特に無く、強いて言うならば俺の左手の薬指に指輪がはまっていることくらいだろう。窓の外に向かって手を伸ばす。窓から差す光に照らされてキラキラと輝く銀色の指輪。宝石などの高価なものが付いている訳でもなく、シンプルな彫刻がされた指輪。赤の他人が見ればオシャレで付けているように感じる、そんな指輪。だけれども内側には間違いなく俺の名前が彫ってあって、彼からのプロポーズに使われた、この世でたった一つの大切な指輪。嗚呼、綺麗だ。
「ニキ?」
「…?なぁにボビー」
「いや、さっきから呼んどるのに返事来おへんから」
それくらい俺の意識は指輪に釘付けだった事実に驚いた。どうやら名前を呼んでいたようだが、何も気づかなかったことに心配した相方が俺を探していたらしい。相方が数歩近くに来てやっと我に返った俺は呼んだ理由を探るべく相方の方に振り向いた。
「な、なんだよ…」
「ん?笑」
振り向いて相方の顔を見やれば何だ、ニマニマしながら腕を組み、壁にもたれ掛かっている。まるでこちらを揶揄うような顔をしているではないか。大層ご満悦な相方の様子に理由なんてもう分かりきっている。俺が翻弄したいのに結局は彼に翻弄されてしまう。それに心地良さも喜びも感じてしまうのが情けなくて、だけれども愛人にそんなことを思ってしまうのがどうも穢らわしくて、どうするのが良いのかなんて見つからない答えを求め続けている。
延々と自問自答を続けていれば、感情と連動してコロコロと変わる俺の表情が面白かったのかふは、と彼は吐息を漏らす。俺は悶々と考えていたため、彼が徐々に近づいてきている事に気付かずにいた。
「なぁ、ニキ」
「……」
「ニキ?」
「…ん、何?」
真っ直ぐとした真紅の瞳。何か決意を固めたようなそんな眼。数秒間俺を見つめてから少し目を伏せて、俺の左手を取る。彼が何をしたいのか俺にはさっぱり分からなくて、ひとまず彼のすることに抵抗をせずに居る。
「俺のここにもあればええんやけどなぁ…」
そう言って俺の左手の薬指をなぞる。そうか、俺に渡すだけ渡して自分の分を買っていないということに今更気づいた。
「ペアルックで買えば…」
「なんか嫌やったんよ。お前が”俺のために”選んだもんを身に付けたいねん」
まるで俺の返答が予測されていたかのような発言と珍しく彼が声を被せてきた。これは相当本気だ。それに、俺が付けている指輪も、もし彼に渡すであろう指輪も全て”俺”が選んだ事になるのは嫌では無いのだろうか。
「せやから見に行こや」
そう言って彼は俺の腕を引いた。全てにおいて突拍子も無い提案に俺は振り回されながらも、久方ぶりの外出に胸を踊らせる。こんな日も有りだなんて考えつつ、鼻歌を歌いながら外へ出る支度をする。
「ほな行こか」
「ほーい」
支度を終わらせ、「行ってきます」そう言って俺にしては珍しく家の戸締りをした。
彼と他愛もない話をしながらも、ジュエリーショップで指輪を見ていたが何だか違う気がしていた。あれでもないこれでもない、そうやって唸っていたら隣に居た彼はふは、と笑っていた。ムカつく。
「あ、」
「お?」
不思議と目が惹かれた指輪を見つけた。金色に輝く、俺の指輪に似た彫刻がされた指輪。少しばかりお値が張るけれど、大切なプレゼントなのだこれくらい容易い。どうやら彼は俺の指輪のように名前を彫りたいらしい、デザインは全て彼に任せて俺はその指輪を購入した。
あの後、俺らは外食をしてから帰路に着いた。生憎、名前の彫刻には二週間程度かかるらしい。今すぐ彼に渡すことは叶わなかったが、納得のいく指輪を選べたので満足だ。そんな事を考えながらソファに座ってスマホを弄っていた。
「ニキ」
「んー?な、ッぁ…」
風呂から上がった彼に呼ばれて、体を捻って後ろを向いた。彼とバチりと目が合って、即座に感じ取った。あ、これ喰われる…と、真紅の瞳の奥底に獣のようにメラメラと燃える欲情が見えて、身体がゾクゾクと震えた。
「ふは、はよ風呂入ってき」
「…おん」
そう言われてからソファを立ち上がった。今夜起こるであろう出来事に上がった心拍数を鎮めながら、風呂場に向かった。
コメント
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舞さんの書くsrnkの空気感がとてつもなく好きです!!