テラーノベル
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*ご本人様には一切関係ございません
太智視点
飲み始めてすぐ、吉田さんは軽く酔い始めていた。
__この人あんまお酒強ないもんな。
普段は「ミルクのしっかり者のリーダー」として、誰よりも周りに気を配って、カメラの前では100点満点のツッコミを返して回っているこの男。
吉田さんとはもう10年以上の仲やけど、こうしてサシでご飯行くなんて、今までで1回、2回あったかどうか。まあ、もちろん吉田さんの事は好きやで。( 絶対に、死んでも本人には言わんけど)
互いのことなんて、もう家族以上知り尽くしていて今更。 「ご飯一緒に食べに行こ」なんて、誘う気も起きひん、多分吉田さんも同じ事思っとる。
そんな吉田さんが、わざわざ俺をご飯に誘うなんて。
__相当きてんねやろな。
朝来た時柔太朗と、佐野さんの態度も色々おかしかったし、吉田さん目腫れとったし、多分どっかで泣いてたんやろな。
流石に、大切な同期なので話ぐらい聞いたらな、と思い誘いに乗った。
仁「……これ、うまぁ…」
目の前の同期が、おつまみを口に運び、ふにゃりとだらしなく口を緩ませていた。
飲み始めてすぐだというのに、酔いが回って、普段から水分量の多い目が、さらにうるうると熱を帯びて潤んでいくのが分かる。
仁「…だいち〜……」
瞳をうるうるとさせ、上目遣いでこっちを見てくる仁人。
__……この人、ほんまあざといな。
無自覚なのは分かっているが、無防備にこちらの顔を覗いてくるその顔に、少しでも”かわいい”と思ってしまった自分がいて、無性に腹が立つ。
太智「吉田さんその顔やめーや、あざといねん!」
引きつった声でそう一喝すると、仁人は「あざとくねえわ!」とふにゃふにゃと口を尖らせた。
__……吉田さん、あんたまじで、そういうとこやぞ。
反論してくるその口元の尖らせ方も、お酒のせいで完全にふにゃふにゃになっているその締まりのない態度も、そのすべてが計算なしの天然なのだから余計にタチが悪い。
太智「…はぁー」
俺は頭の後ろをガシガシとかきながら、あきらめたように盛大にため息を漏らした。
仁「……なんだよ、」
すると、目の前でムスッとした顔の仁人が、キッとこちらを睨んでくる。
__これでこの人、ポーカーフェイス名乗ってんのか。
いつものきりっとしたリーダーの威厳なんて微塵もなくて、ただの拗ねた子供みたいになっているあいつの顔を見て、俺は心の中で吹き出しそうになった。感情が全部顔に出てんねん、吉田さん。
太智「なんでもないわ笑、…それで、佐野さんと何があったん?」
俺の言葉を聞いた瞬間、仁人の大きな瞳が、ハッと息を呑んだように小さく揺れた。
仁「……でさ〜、”どっちでもいい”とか言ってくるくせに、撮影の時ずっと”かわいい”とか言ってくんだよ…、思わせぶりだろあんなん。」
グラスを両手で包み込んだまま、仁人はうるんだ瞳からポロポロと大粒の涙を零しそうな顔で、一気にそこから本音をぶちまけてきた。
__佐野さんも罪な男やで。
完全に酔いが回って、トロンとした目でムスッと不満を溢している仁人の姿を見つめながら、俺は心の中で小さくため息をついた。
グループの中で1番メンバー愛の強い佐野さん。仁人の気持ちなんてこれっぽっちも知らへんから、軽はずみにそんな事言えんねやろな。
仁「…しかもさ〜、俺と舜太が2人で話してたら、”俺には言えない事なの”ってキレてきたんだよ!なんなのあいつ!!」
仁人はトロンとした目をさらにうるうると熱く潤ませて、今度は怒ったようにぷくーっと頬を膨らませてぶちまけてきた。
__…………ん?ちょい今なんて…?
グループの中で1番メンバー愛が強くて、いつだって一歩引いて全員を優しく見守っているあの佐野さんが?
太智「……仁人、それお前、ほんまに言うとる?」
目の前で「ほんとだよ、嘘ついてどうすんだよ……」とムスッとグラスを睨みつけている仁人。当の本人は、ただ佐野さんに理不尽に怒られたとしか思っていないのか……?
仁「……あんなの、誰でも勘違いすんだろ……」
仁人はうるんだ瞳をさらに熱く潤ませて、ぽつりと、自分自身をあざ笑うように切なく言葉を溢した。
__……えっ?これほんまに気づいとらんの?
待て待て待て、吉田さん。お前マジで何言っとるん?
お前は自分が佐野さんの思わせぶりな態度に振り回されとると思っとるみたいやけど、それ、絶対に違う。
__これって、佐野さんも仁人のこと好きなんやないん?
でも、こういうのって、第三者が首突っ込みすぎんのも野暮やしなあ。
仁「…聞いてんの太智……!」
俺が心の中でそんな葛藤を繰り広げているのなんてお構いなしに、仁人が瞳をさらにうるうると熱く潤ませて、不満そうに俺の顔を覗き込んできた。
__だから、あざといねん!
俺は「ふぅー」と、小さくため息を吐き。
熱くなりかけた脳内をなんとか落ち着かせるように息を整えると、お酒のグラスをゆっくりと机に置いて、もう一度目の前の同期へと向き直った。
太智「仁人さ、佐野さんにこのまま気持ち伝えへんつもりなん?」 俺の唐突な、だけど一番核心を突く質問に、仁人の水分量の多い大きな瞳が、ハッと息を呑んだように大きく見開かれたが、すぐにふっと顔を下に向けた。
仁「……こんなこと伝えたら、絶対勇斗のこと困らせるし、……嫌われたくないもん。」
自分の膝の上でぎゅっと握りしめられた仁人の細い指先が、微かに震えているのが見えた。
__……嫌われたくない、もん……って。
こんな時にもあざとい仁人に文句を言いたくなったが、可哀想なのでやめてあげた。
自分の気持ちを伝えたら、あの優しい佐野さんを困らせてしまう。その結果、今のこの温かい距離感すらも壊れて、あいつに嫌われてしまうかもしれない。
太智「うーん…、困らせたないんはわかるよ、アイドルやしな色々、仕事とかもあるし。」
俺は、机の上のグラスをゆっくりと回しながら、少しトーンを落とした優しい声でそう言葉を返した。
太智「…でもな、佐野さんがそんなことで嫌うはずないやん。そんなん、あんたが1番分かっとることやろ?」
俺のその迷いのない言葉を正面から浴びた瞬間、仁人はハッと息を呑んだまま、うるんだ瞳を大きく見開いて、俺の顔をじっと見つめ返してきた。
仁「……でも」
尚も、長年ひとりで抱え込みすぎて臆病になってしまった頭で、次の言い訳を探そうと、仁人の薄い唇が微かに震える。
太智「不安症なあんたに言っても、まあ信じられへんと思うけど、少なくとも俺は、そんなんじゃ絶対勇斗は嫌いなったりしやんって思ってる」
先回りをさせるように言葉を重ねると、仁人は今度こそ完全に言葉を失ったように、ぽかんと口を開けて俺の顔を凝視した。
太智「俺がここまで言うてやったんやで、今更無理やとか許さんで」
10年以上、お前ら2人の関係をずっと一番近くの特等席で見てきたこの俺が、太鼓判を押してやったんや。お前はちゃんと明日、佐野さんと真っ直ぐに向き合って、その本音をぶつけてこい。
太智「……なんや、まだ言い訳あるんか?」
未だ、ぽかんと口を開けて、びっくりしたような顔で見てくる仁人に、俺はフッと口元を緩ませながら意地悪く眉を上げてみせた。
仁「……いや、お前ってメンバーのこういうのまじで興味ねえと思ってたから、驚いて」
目を大きく見開き、口が半開きになっている仁人。
__なっさけない顔やな。
いつものきりっとしたリーダーの威厳なんてどこへやら、完全にマヌケな顔でこちらを凝視しているあいつの顔が、おかしくて堪らない。
だけど、そんな風に自分のことなんて一ミリも疑わずに、全面的に驚いて、全面的に俺の言葉を真っ直ぐに受け止めようとしてくれているその瞳を見つめていたら。
なんだか、俺の胸の奥までどうしようもなく熱くなってきて、強がりのメッキがボロボロと剥がれていくのが分かった。
太智「……興味ないけど、…流石に大切な同期がこんな悩んどるのにほっとくほど、酷い性格しとらんわ……///」
カッと自分の顔が一気に熱くなっていくのを感じながら、俺はわざとらしく顔を背け、耳の付け根まで真っ赤にしてぶっきらぼうに言い放った。
__あーあ、言ってもうた、恥ずかし。
絶対に本人には死んでも言わんって決めとったのに、お前のそのなっさけない顔を見ていたら、格好つけるのなんてどうでもよくなってしまった。
シーン、と静まり返る個室の空気。あいつのその真っ直ぐな視線に、俺の恥ずかしさはもう限界をとうに超えていた。
太智「……なんか言えや///」
カッと顔に血が上るのを感じながら、俺は耐えきれなくなって、大照れ隠しの声を張り上げてあいつを睨みつけた。
仁「あはは、ごめん、ごめん。まさか太智からそんな事言われると思ってなくて……///」 すると、俺に睨まれた仁人は、両手を合わせて平謝りしながら、いつの間にかあいつまで顔をじんわりと真っ赤に染めて照れくさそうに笑った。
太智「……まあ、そういう事やから、早いうちに佐野さんに伝えたりや」
俺は少しだけ照れくさそうに視線を泳がせながら、だけど今度こそ迷いのない真っ直ぐな声で、あいつの目をじっと見つめてそう告げた。
仁「うん。……明日、勇斗と話してくる」
仁人は、グッと覚悟を決めたように口をキュっと縛った。
__あっ、本気の吉田さんや。
心の中で少し吉田さんを馬鹿にしながらも、俺の胸の奥には、いつの間にか温かい誇らしさがじわじわと広がっていた。
仁「あっ、てかお前!収録中要らんことばっかり言いやがって!」
バンッとテーブルを軽く叩きながら、さっきまでうるうる上目遣いで甘えていたはずの仁人が、急にいつものキレキレの顔に戻って俺を指差してきた。
さっきまでのあのしおらしくて、今にも泣き出しそうだった恋する男の子の姿はどこへやら。
完全にいつものいじられリーダーのノリに形勢逆転されて、俺は思わず「ひゃはは!」と、今日一番のいつもの甲高い爆笑を個室の中に響かせた。
太智「ええやん、動画めちゃくちゃ盛り上がったんやから!ほら、吉田さん奢りなんやから、ポテトのおかわり頼んでええ?」
仁「頼むな!もうお前には一銭も使いたくねえわ!」
怒ったように口を尖らせつつも、その大きな瞳にはもう、朝からのあの絶望的なパニックの影なんて微塵も残っていなかった。
コメント
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太智視点、すごく良かったです。いつもクールな太智が内心であれだけ仁人のこと気にかけてるのが伝わってきて、「興味ないけど…///」って照れながら言うところ、すごく好きです。仁人の酔ったあざとさも、佐野さんの反応に気づいてハッとする太智も、全部が生き生きしてて。なんだかんだ言って10年以上の同期の絆がじんわり沁みました。明日の話し合い、うまくいくといいな…応援したくなります。
翡翠
198
#snjn
のりもちさん
3,945
ゆき
2,237