「…こさめ」
「なつくん?どしたの?」
「俺この役よく分かんないから…変わってくんね?」
『はだしのゲン』の台本に書いてあるゲン役を指差した。
「俺…こう言う役より…なんというかあれ…あっち系だから…うん」
なつの顔はどんよりとしていて斜め下を見ていた。
「あぁ…なるほど」
「…だからこさめの役と交換してくれないか?ちゃんと部長には許可得たからさ」
↑先ほど土下座して部長に頼んだ。部長は元人気子役だった子に土下座してしまったことに罪悪感がある。
「……まあいいよ。」
「ありがとうな」
「……ゲン役…か。」
こさめの表情は暗かった。
「こさめ〜役変わったって本当?」
らんがこさめの肩を軽く叩き、話しかける
「うん…なつくんがこういう役は苦手なんだって」
「へぇ…意外」
(なつくんならこういう役できそうだけど…天才子役でも苦手なことはあるんか…)
「ただいまー」
玄関のドアを開ける。奥のリビングからお婆ちゃんがにっこりと笑い、
「おかえり」
と、言う。
「…ただいま!」
こさめの声はでかく、お隣さんの家まで聞こえていた。
「今、ご飯用意するからね。少し時間かかるかもしれないけどいい?」
「いいよ。勉強するから」
「分かった」
「疲れたー!」
ベットに倒れ込み顔をモーフに埋める。
ふと、思い出し、バックの中から台本を取り出す。『はだしのゲン』だ。
「……ゲン役…こさめにできるかな…舞台は戦争だし…主役だし……」
「!」
目の前には火の粉が降っていた。
赤く燃える炎に一つの村が呑まれていた。
逃げ遅れた村人の死体が、崩れた家の下敷きになり、血だらけだ。
「…う…ぁ…ッッあ”ぁぁぁぁ!嫌いッ!大っ嫌いッ!」
___ちゃん!
___ちゃん!
こ__ちゃん!
「うわぁぁ!」
ベットから勢いよく起き上がる。こさめの目の前にはお婆ちゃんが居た。
「おばあちゃん?」
「ご飯できたよ。大丈夫?うなされてたけど」
「…大丈夫!早くご飯食べよ!」
「そうね…」
こさめほ笑顔は仮面のようだった。
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