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𝐀𝐘𝐀_

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メイ
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第二章 ふわふわ大学生活
春の柔らかな陽射しが、大学の正門を優しく照らしていた。
高級車がゆっくりと正門前へ停まる。
運転席から降りてきたのは、結城千景だった。
スーツ姿のまま助手席へ回り、ドアを開ける。
「着いたよ、ちーちゃん。」
「……ん。」
まだ少し眠そうな声。
千弥はテディベアの「くぅちゃん」を胸に抱いたまま、ぽやぽやと外へ降り立った。
「今日は少し寒いね。」
千景は弟のカーディガンを整え、マフラーを軽く巻き直す。
「暑くなったら外していいからね。」
「うん。」
「飲み物持った?」
「あるよ。」
「薬は?」
「ある。」
「ハンカチ。」
「ある。」
「学生証。」
千弥は鞄をごそごそ探し、
「あ。」
「……ない?」
「ここ。」
首から下げたケースを見せる。
「よかった。」
千景はほっと胸をなで下ろした。
周囲を歩く学生たちは、そんな二人を見ながらひそひそ話している。
「また結城先輩だ。」
「弟さん可愛い……。」
「毎朝送ってもらってるんだよね。」
「あのお兄さん、社長なんでしょ?」
「めちゃくちゃイケメン。」
「でも弟さんの前だと表情違いすぎる。」
そんな声は、千弥の耳には入っていない。
本人はというと、
「にぃに。」
「ん?」
「おひる、オムライス。」
「今日は学食で?」
「うん。」
「ちゃんと食べるならいいよ。」
「えへへ。」
千景は優しく頭を撫でた。
「終わったら会社においで。」
「いく。」
「ゆっくり歩いてね。」
「うん。」
「無理しない。」
「うん。」
「体調悪かったら電話。」
「うん。」
何度も確認する兄に、千弥は笑って答える。
「にぃに。」
「どうしたの?」
「いってらっしゃい。」
その一言だけで、千景の表情が柔らかくなる。
「ありがとう。ちーちゃんも、いってらっしゃい。」
二人は手を振って別れた。
大学構内。
「……。」
千弥はくぅちゃんを抱きながら、のんびり歩く。
歩く速度もゆっくり。
途中で花壇を見つけると立ち止まり、
「ちゅーりっぷ。」
小さく呟いた。
赤。
黄色。
白。
風に揺れる花をじっと眺める。
「きれい。」
十分ほど眺めて満足すると、また歩き始める。
途中で小鳥を見つけ、
「あ。」
しゃがみ込む。
「おはよう。」
当然、小鳥は返事をしない。
それでも嬉しそう。
通りかかった学生は思わず微笑んだ。
「あれ、結城くんだ。」
「また鳥と話してる。」
「可愛いな。」
「癒やされる。」
しかし本人は全く気付かない。
教室。
「おはよう。」
「あ、おはよう結城くん。」
「おはよう。」
「今日もくまさん一緒?」
「うん。」
千弥はくぅちゃんを優しく机に座らせた。
「今日はここ。」
「毎日違う子なんだ。」
「みんなおるすばんばっかりだと、さみしいから。」
「優しいなぁ。」
女子学生が思わず笑う。
男子学生も自然と表情が和らぐ。
千弥の周りだけ、空気が穏やかだった。
一限。
教授が話し始める。
千弥は真面目にノートを書く。
……五分後。
「……。」
止まった。
ペンを持ったまま。
ぼーっ。
教授は慣れた様子で笑う。
「結城くん。」
「……。」
「結城くん。」
「……?」
「起きてる?」
「はい。」
「考え事?」
「えっと……。」
千弥は首を傾げる。
「ことりさん。」
教室中が笑いに包まれた。
教授まで吹き出す。
「鳥を思い出してた?」
「はい。」
「それは仕方ない。」
「……?」
何が面白かったのか分からない千弥は、きょとんとしていた。
休み時間。
女子学生が集まってくる。
「結城くん。」
「ん?」
「今日も可愛いね。」
「ありがとう。」
「そのくまさん触ってもいい?」
「うん。」
「名前は?」
「くぅちゃん。」
「可愛い!」
千弥は嬉しそう。
「くぅちゃん、ほめられた。」
「結城くんもだよ。」
「?」
意味が分からず首を傾げる。
「ちぃじゃなくて?」
「ちーちゃんも。」
「そうなの?」
「そう。」
「ありがとう。」
その素直な笑顔に、周りはまた癒やされる。
昼休み。
学食。
「今日はオムライス。」
席へ座る。
「いただきます。」
しかし。
三口食べたところで、
「……。」
また止まった。
スプーンを持ったまま、ぼーっ。
向かいに座る学生が苦笑する。
「朝弱いもんね。」
「うん。」
「眠い?」
「ぽやぽや。」
「無理しないでね。」
「ありがとう。」
ゆっくりではあるが、時間をかけて完食した。
午後。
図書館。
静かな空間で本を読む。
動物図鑑。
テディベアの本。
童話。
難しい専門書より、そんな本を読む時間が好きだった。
「かわいい……。」
ページをめくるたび、優しく微笑む。
司書さんもそんな千弥を見るのが日課になっていた。
「今日も来てくれた。」
「こんにちは。」
「こんにちは。」
「新しいくまさんの本、入ったよ。」
「ほんと?」
目がきらきら輝く。
「読む。」
「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
嬉しそうに受け取る姿は、小さな子どものようだった。
放課後。
チャイムが鳴る。
千弥は鞄へくぅちゃんを入れず、いつものように腕に抱いた。
「じゃあね。」
「また明日。」
「またね。」
学生たちは手を振る。
千弥もふわりと笑って振り返した。
大学を出ると、向かう先はいつも同じ。
兄・千景が社長を務める会社。
「にぃにのところ、いこ。」
くぅちゃんに話しかけながら、のんびり歩き始めた。
会社へ続くいつもの道を、春風に吹かれながらゆっくりと歩く千弥。
その頃会社では、今日も「ちーちゃんはもう来る頃かな」と、社員たちが密かに楽しみに待っているのだった。
第二章 おわり
第三章へ続く
コメント
3件
第二章をお読みいただきありがとうございました!
もう第二章読んだよ〜〜!!😭💕 ちーちゃん、今日も尊すぎて息するの忘れたわ…にぃに(千景くん)の過保護がエスカレートしてて、兄弟愛が尊すぎて胸がギュッてなった🥺「ちゅーりっぷ」って言いながら花壇眺める姿とか、授業中に「ことりさん」ってボケるところとか、ギャップ萌えが止まらん!!笑 そしてくぅちゃん抱えてる姿がもう癒やしの権化。図書館の司書さんとも仲良しで、みんなに愛されてる感じがじんわり沁みたよ〜🌸第三章も絶対読む!!続き待ってるね⋆♡