ふわり、と芳醇な香りが鼻をくすぐる。
出元がスーパーのティーバッグだとしても、「それ」はいい匂いとして部屋に充満していた。牛乳を注ぎ、少しだけぬるくなったミルクティーを君は運んでくれる。
「わあ、ありがとう〜。最近ミルクティーにハマってんだよね〜」
「どういたしまして。分かる、そのままだとちょっと物足りないっていうか」
「そうそう!今まで紅茶があんまり得意じゃなくて」
と、途中で区切りティーカップに口を付ける。するとミルクティー特有の独特の甘みが広がる。
「それでミルクティーも避けてたんだけど、ちゃんと飲んだら美味しいって気づいて」
そこまで言うと元貴はふふっと笑う。続けて僕は、
「今まで風味とか濃くて苦手だったのかなぁ」
と言うと、元貴はえぇ?とおどけたようにびっくりした。
「あんなに強いお酒飲むのに?涼ちゃんが?」
お酒とこれとは別でしょ〜と笑いまた味わう。元貴も楽しそうにカップを口に運ぶ。
こんな朝の時間がたまらなく幸せだ。他愛もない話と紅茶がリビングを柔らかく包む、この感覚が好きだ。
「あ、そうだ涼ちゃん。今日のスケジュールなんだけどさ…」
彼の口から次々と出てくる仕事の量に、今日も目眩がしながら思う。
君は気づいてるかな。
この時間のためにミルクティーにハマったこと。
忙しくなる前の優越感が手放せないこと。
心の中でクスッと笑ったつもりだったが、笑い声が漏れていたようで。
「どした?なんか変だった?」
一生懸命伝えてくれている分には申し訳ないが、やはり愛おしくて。
「ごめんごめん、なんか幸せだなぁって思っちゃってさ。」
呆れたのか、照れたのか、どっちとも取れる笑みをこぼし、立ち上がった。こちらまで来ると、ずるいなぁと呟き唇を奪われる。
先程までミルクティーを飲んでいたため、いつもよりじんわり暖かい。その時、またあの芳醇な香りが鼻いっぱいに広がった。
こんな日々がいつまでも君と続きますように。
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初めてなので至らぬ所多いと思います…! 2人は付き合っている設定です。
今後ともぜひ読んでいただけると嬉しいです。
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