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ランドセルを背負って、小学校の門をくぐったあの日。新しい教室、新しい友達、少しだけ大きく見える黒板。
全部が少し眩しくて、少し怖くて、それでも楽しかった。
でも、その“普通”は長くは続かなかった。
最初は、小さな違和感だった。
机の中に入れていたはずの消しゴムがなくなる。
大事にしていた鉛筆が、気づけば折れている。
「まあ、なくしただけか」
そう思い込んだ。
思い込もうとした。
でも、それはだんだん形を変えていった。
陰で聞こえる小さな笑い声。
自分の名前が混ざる悪口。
気づかないふりをしても、耳には残った。
心の中で何かが、少しずつ削れていく感覚があった。
それでも、誰にも言えなかった。
言っても変わらない気がしたから。
むしろ、もっと悪くなる気がしたから。
時間が経つにつれて、“居場所”はどんどん狭くなっていった。
そして、小学四年生くらいの頃。
家の中の空気も、変わり始めた。
前までは笑っていたはずの食卓。
何気ない会話があったリビング。
それが、静かになった。
いや、“静か”というより、重くなった。
親同士の言い合い。
扉越しに聞こえる声。
聞こえないふりをしても、胸の奥に刺さる。
学校でも家でも、息がしづらくなっていった。
――だから、決めた。
「笑おう」
誰にも心配をかけないように。
これ以上、何も壊れないように。
笑顔の仮面をつけることにした。
「大丈夫だよ」
「別に気にしてないよ」
そう言いながら、本当は全然大丈夫じゃなかった。
でも、笑っていれば――
少なくとも、“普通”に見える気がした。
誰にも気づかれないまま、時間は過ぎていった。
本当の自分がどこにいるのか、わからなくなっていく。
悲しいのか、苦しいのか、
それとも何も感じていないのかさえ、曖昧になっていく。
ただひとつ、はっきりしていたのは――
「仮面を外したら、壊れてしまいそうだ」
ということだけだった。
だから今日も、笑う。
誰にも見えない場所で、少しだけ息を止めながら。
仮面の奥で、静かに、自分を隠しながら。
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ガッポイ田中
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