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私のお母さん、樋早紀は、38歳でお父さんと結婚した。
そして、お父さん側の不妊やら色々あったせいで、私の出産は41歳のときになってしまった。
そのせいもあり、お母さんは体調が優れないことが多く、お父さんが家事、育児、仕事を担う、まさに一家の大黒柱となった。
だが、たとえお父さんでも、幼い子供と大切な妻を持つお父さんにも、限界というものはある。
数年後、お父さんが家に帰って来なくなった。
友達が偶然お父さんを見た、と言っていたことがある。
友達が語るに、お父さんは知らない女の人と一緒にいた、らしい。
友達、つまり子供が言ったことなのだから、100%本当で間違いないだろう。
幼い私にはあまりよく分かっていなかったが、お父さんは、疲れてしまったのだろう。
体の弱くなった妻に、幼い娘。
心が疲れてしまった人間には、ちょっとした揺さぶりだけで苦しくなってしまう。
もちろん、その時の私には到底そんなことら思い付かず、ずっと不思議に思っていた。
だが、お母さんが、
「あなたは何にも気にしないでいいの。お母さんに任せて?」
そのころの私は、お母さんとお父さんのことが大好きな子供だったので、何の疑問も持たずお母さんに全て任せた。
それが、悪かったのかもしれない。
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お母さんは、家賃、電気代、ガス代、税金、そして私の食費や生活費などを稼ぐため、朝から晩まで働いた。
朝は4時に起きて私の朝ご飯と夜ご飯を作り、自転車で坂道を上って通勤。
夜は11時になっても帰ってくることがないときもあった。
ある日、私がいつもの様に起きてお母さんのご飯を食べていたとき、
家の黒電話が鳴った。
うちの電話が鳴るなんて珍しいな、と思っていたが、
電話の内容を聞いてから血の気が引いた。
お母さんが、信号無視の車に轢かれた、と。