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急いで病院に向かい、受付から無理矢理お母さんの病室の場所を聞き出して病室に向かうと、
お父さんに捨てられたお母さんと私ひ唯一優しくしてくれたおばあちゃんと叔母がいた。
叔母の目が少し赤くなっていたこと、そして同室の医者の表情を見て、お母さんはまだ生きているのだと確信した。
それがわかって嬉しくなった私は、お母さんに駆け寄ろうとしたのだが、どうやら生きていてもあまり良い状態ではないらしく、すぐに医者と叔母に止められた。
少しの沈黙の後、おばあちゃんが口を開いた。
「天音ちゃん、今日から天音ちゃんはおばあちゃんのお家で暮らすのよ。」
突然の祖母の言葉に驚いた私は、反射的に聞き返した。
『‥やだよ、お母さんはどうなるの!』
涙目で祖母に問いかけた私を見て、少し寂しげな、また驚きの表情が生まれたが、すぐにそれは普段のものへと戻された。
そして、祖母が口を開こうとする。
だが、その前に口を開いた者がいた。
「大丈夫よ、天音」
ずっと祖母の方を向いていて気がつかなかったが、お母さんが目を覚ましていたのだ。
『お母さん…なんでわたしはお母さんと一緒に暮らしちゃだめなの‥?なんでっ』
「天音」
「お母さん、すぐ元気になるからね。」
ーーーーーー
それから、一年経ったころ、
私は祖母と、そして叔母との暮らしに随分慣れていた。
結局、お母さんはまだ帰って来ず、ずっと入院を続けている。
そのため、月に二回ほど、お母さんのお見舞いへと向かっている。
今日は、お母さんのお見舞いの日。
つい最近有能な医者が入ったそうで、お母さんの容態は安定している。
そのため、最近のお母さんのお見舞いへ行くときはとても高揚した気分で向かう。
今日は兎型の林檎をつくったので、お母さんに食べさせて喜んで貰おう、と思うのだ。
お母さんの喜ぶ顔を思い浮かべると、思わずわくわくする。
『今日は、お母さんとどんなお話ができるかな~!✨』
「ふふ、天音ちゃんは本当にお母さんと会えるのが楽しみなのね♪」
『うん!』
最近、おばあちゃんは足が悪くなってきていているので、お母さんのお見舞いには叔母と行くようになった。
叔母は私と歳が近く、最近の学校での話や叔母の好きなアーティストの話をしたりなどで、仲が良いね、とお母さんによく言われている。
『あ、ねぇねぇあかりさん!』
「あら、どうしたの?」
『お母さんのお見舞いが終わったら、りんちゃんと公園で遊んでいい?』
「いいよ~」
『やったあ!』
ついこのまえ、公園でりんちゃんとはじめましてしたの!
あかりさんにいいよって言ってもらったから、今日もりんちゃんと遊ぶんだー!
楽しみ~✨
ーコンコンコン
「はーい、どうぞ~」
『お母さん、お邪魔します』
「はい、いらっしゃい」
「お姉ちゃん、久しぶり。」
「あら、明莉もいたのね、いつもありがとう。」
「全然いいよ~(笑)」
「私もお姉ちゃんのお見舞いにきてるんだから、気にしないで。」
「それで、天音ちゃん、お母さんに見せたいものがあるんでしょう?」
『あ、そうだった!』
『はい、お母さん!』
「あら、かわいい林檎ねぇ。」
「明莉が作ったの?」
「ううん、天音ちゃんがやったのよ」
「あら、本当?凄いわねぇ、天音。」
『えっへへ~✨』
「私が見ない間に女の子のスキルあがっちゃって~(笑)」
ーーーーーーー
「お姉ちゃん、お邪魔しました♪」
「はい、気を付けて帰ってね~」
『お母さん、お邪魔しました!』
「じゃ、また来月来るね~♪」
ーガラガラガラガラ~♪
『お母さん、喜んでた!』
「良かったね、天音ちゃん。」
『うん!』
「それじゃ、公園行ってりんちゃんと遊ぼっか!」
『あぁ!忘れてたぁ!!』
「もう、天音ちゃんは昔っから忘れん坊ね(笑)」
『それじゃあ、行こ、あかりさん♪』
ースッ
『ん?』
「どうしたの?」
『いや、何でもないよ。』
かんちがいかな?
いま、
お父さんが見えたような‥?
ーーーーーー
ーコンコンコン。
「入るよ、早紀。」
「…えぇ。」
ーガラガラガラガラ。
「今日も来てくれたのね、あなた。」
「まぁ、俺はきみの
“夫”だからな。」