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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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こぶし亭で食事をしてしばらく経つ。いつでも開いているのが売りなせいか、夜中でも繁盛していて混雑しっぱなしだ。


ネコスタッフの子によると、昼間はエルフで夜に獣人が訪れるということらしい。待っている時間が長かったこともあり、ここには結構な数の住人がいるということを気付かされた。


「それにしても遅い! キミ、ルティはどこへ行くって言ってた?」

「ニャ? とっても熱いトコロとか、コキョーとか言っていたニャ」

「コキョー? まさか故郷のことなんじゃ……」


どうにもおれだけが知らない隠し道が至る所にあるらしいが、そうだとしても何でロキュンテに。相変わらずあの娘《こ》の行動は予想出来ない。


待ちくたびれて少しだけ眠りかけていたところで、ネコたちの声がひと際大きくなった。ルティがやっと帰って来たようだ。


「――お帰りニャー!」


倉庫の方から聞こえて来るのでここは盛大に出迎えてやることに。


「ルティが帰って来たんだな? 中に入らせてもらうよ」

「ニャニャッ!? まだ駄目ニャ!!」


ネコたちがおれを止めようとしていたが、お構いなしに中に入った。


「お帰り、ルティ!! 待ちくたび――」


だが、彼女たちの言うことを聞かなかったおれの視界に飛び込んで来たのは――


「――はひゃぁぁぁ!? な、何で、アック様がお店に!?」

「あら? アックさまじゃありませんか! 我慢出来ずに覗き込むなんて、おっしゃって下されば良かったのに」

「ウニャ……アックは立派なオスなのだ」


ネコたちの慌てぶりに気付くべきだったが、時すでに遅しだ。決してそんなつもりじゃなかったのに、汗だくだった彼女たちの着替え途中な場面に遭遇した。


「ご、ごめんっ!!」


寝惚けていて気が回らなかった。なぜ夜中に汗だくで、しかもミルシェとシーニャまでもが一緒にいるのかまでは、聞けない状況。おれは逃げるようにして店の席まで戻った。


◇◇


しばらくしてお店の席で座っていると、シーニャが嬉しそうに隣に座ってくる。


「アック! アックがオスなのはとてもいいことなのだ! ウニャ」

「はは……」

「時々なら、シーニャの部屋に入って来てもいいのだ!」

「そ、そうだな」


シーニャ的には全身を見られたことを気にしている訳では無いらしく、むしろおれを慰めてくれているようだ。


「アック、疲れているのだ? それならアックの頭を貸すのだ!」

「うん? 頭を?」

「ウニャ! シーニャ、虎の子供を寝かせた時は膝の上に寝かせたのだ。アック、早く乗せるのだ」

「……膝の上」


ルティたちとどこへ行って来たかは聞かないとして、シーニャは膝の上を叩いておれの頭が置かれるのを促し始めた。


これは従わなければならない。


「アック、もう心配いらないのだ。シーニャ、アックの為に動くのだ。ウニャッ」


フワフワモフモフなシーニャの膝の上に頭を寝かせていると、また眠くなりそうだ。しかも頭を撫でられているとか、一体どういうことなのか。


「シーニャ? 怒ってないのか?」

「オスの本能に従っているのはいいことなのだ。アックは、オスとして足りないのだ」

「そうじゃないが……まぁいいか」


シーニャがルティたちとどこかに行くこと自体珍しすぎるが、彼女も成長しているということだろう。彼女のしなやかな肢体を見てしまったことには頭にもきていないらしい。


それなら機嫌がいい内にシーニャにはもう一つの名前を授けておく。


「ウニャ、もうすぐアックが喜ぶことが起きるのだ!」

「ほぅ、何かな」


思わせぶりだが、ルティたちと何かして来たらしいな。


「そのうちなのだ!」

「それならまずは、おれから先に……」

「ウニャ?」

「シーニャは今後、【シーニャ・イスティ】として動いてくれ。眷属獣でもあるし、授ける資格があるからな! これからは人間の国や町で名乗っても構わないぞ」


名前自体に深い意味は無いがイスティ一族のスキルは、力の一部を共有することが出来る。これに関しては、家に残っていた本を読んで分かったことだ。


シーニャはワータイガーではあるが、ルティのように反則的な強さを得られていない。その意味でもおれのスキルの一部でも使えれば、戦いにおいて不利になることを避けられるはずだ。


「フニャ……アック、シーニャを認めたのだ? アックのメスになったのだ?」

「認めたっていえばそうなるな。メスの意味ってのがよく分から――!?」

「アック、アックのシーニャなのだ!! ウニャ!!」

「お、落ち着け、シーニャ! うぐぐぐ……く、苦しい――」


どうやら物凄く喜ばせたようで、思いきり抱き締められてしまった。ただでさえ膝の上に頭を乗せていた状態だったので、逃げられずおれはそのまま意識を落とした。

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