コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ちょっと重たいお話です。オチ弱い。
※inmの過去捏造注意、一瞬で解釈不一致だと思ったらバックしてください。
inm視点
人を助けたとき、色んな人の言葉を聞く。助けた瞬間が最期でも否でも、どれも美しく、華麗な台詞。
『ぼく、まだ生きれるの…?』
『助けてくれて、ありがとう』
『生きていいんだ、まだ』
『ヒーロー、大好き』
たまに酷い言葉をかけられることもある。でもやっぱり、それ以上に感謝されることが一番の喜びで。ヒーローをやって、生きていることがいかに素晴らしいことなのか知った。
『なんで、俺を助けちゃったの?』
そう言われた時は背筋が凍った。今までそんなこと、言われたことなかったから。みんな、生きたいものだと思っていた。世の中には必死に生きている人もいる。助けてほしいのに死ぬ運命しかなかった人もいる。なのに、どうして?
『俺、もう疲れちゃった』
何に?人間関係に?社会に?この世界に?
『あはは、死にたいんだけど、どいてくれる?』
助けることが一番の幸せだと思ってた。死と対面にある生。生きることは、最大の幸せだと思っていた。でも、ヒーローとして願うべきは、その人にとっての幸福。おれは彼の最期を見届けた。お別れする前に、彼が言ったこと。
『ありがとうヒーロー、今までこんなに協力的なヒーローに出会ったことはないよ』
皮肉めいたその言葉は、今でもずっと呪いのように頭に残っている。おれ、正しいことをしたのかな?
「なあ、ライだったらどうする?」
ふと我に返る。ヒーローの任務が終わって、今はみんなでニュースを観ながらご飯を食べていたところだった。
「え?」
「話聞いとらんかったんか?このニュース。」
テレビを見ると、最近自殺願望者が増えている、といったような内容。自殺する人を止めるべきか、否か?みたいな。珍しくみんな真剣にヒーローの話をしているので、おれも真剣に考えてみる。
「おれ……人の人生を自分が決めていいのかなって思っちゃう」
「と言うと?」
「自殺する人は本当に死んじゃいたい人じゃん?その人を助けたところで、その人は生きたいと思ってないわけで、えーっと……」
「あーわかるかも」
「実際助けたところで、また自殺しちゃう気がする」
「なるほど??」
「でもさ、そこで助けたら改心する可能性もあるわけで」
実際自分がそれだった。いつの日か、おれも死にたいと思ったことがある。本当に、居なくなりたいと思っていた。消えたい。この世界におれはいらない。……なつかしいなあ。気づいたら、現れた大きな敵の前に立っていた。殺されたい。ただその一心だった。ヒーローがやって来たとき、クソ、と思った。おれは死にたいのに。なんで邪魔するの。
「下がれ」
「邪魔。おれはいいの」
「何言ってる?一先ず下がれ」
「この敵に倒されないとおれはムリ、やってけない」
嫌と言えば言うほど、守りを固めるヒーロー。意地でも死なせてもらえなかった。
「なんで助けたの?」
「ヒーローだから」
「助けることが必ずも正義だと思ってる?ダサ」
「お前、ヒーロー担ってみろよ」
「…………は?」
ヒーローを、おれが、担う?
「どうせ死ぬなら、ヒーローとしてダサいことやって死ぬぞ」
「……ムリ。おれがヒーローなんて」
「自殺するつもりなんだろ?じゃあ最後くらい楽しもうぜ」
たしかに、社会に恩恵はある。その恩返しくらい、してもいいかもしれない。ヒーローとして役目を果たして死ねるなら本望かも。おれはそこから3年特訓を積んで、ヒーローになることができた。
「おれ、わかんなくなってきちゃった」
「なにが?」
「何が、正義か」
いつもは口を開かないロウがこちらを向いてニヤッと笑う。
「お前、なんでヒーローなったんだっけ」
「え?」
「そういえば?お前助けたような記憶があって」
「まってまって、あれロウだったの!?」
「まだ気づいてなかったのかよ」
「えーーーなんのはなし??」
「ひみつ」
おれはロウと目を合わせてクスッと笑う。おれの恩人、ロウだったんだ。
「まあどうであれ、自分の正義を貫き通していいんじゃない?」
「たまには文句言われるかもだけど、少なくとも今反乱が起きてる訳じゃないんだし」
そう言われて納得する。市民のみんなは、おれたちヒーローに信頼を置いてくれている。しあわせの形がどうであれ、世界が美しく輝けばいいなと思う。