テラーノベル
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翌日、元貴の家に行くとリビングのソファで元貴は眠っていた。服も着替えず、あのまま寝落ちしたのだろう。寝れたのならよかったと息をつく。
「元貴、起きれる?こんな所で寝て、体痛くない?」
元貴の肩を揺すぶってみるが反応がない。相当お疲れのようだ。毎日必要以上に神経をすり減らして生きているのだ、仕方がない。
時間に余裕はあるし、もう少し眠らせてあげようと目線を逸らした。ソファからだらりと垂れている腕。そこは、輪を書くように赤紫に変色していた。
ゾッと血の気が引く。思わず元貴の腕を強く握ってしまった。その瞬間元貴が跳ね起きる。
「い゛ッ……いたいッ!わか、いッ!」
目を潤ませながら、俺の方を見る元貴。目には怯えが浮かんでいるように見える。腕を離すと、元貴が逃げを打つように後ろに下がる。グッと肩を掴んで目線を合わせる。
「元貴、誰にやられた」
「あ……ちがう、の…これはッ」
元貴が誤魔化そうとしていることはすぐに分かった。中学からずっと元貴を見てたんだ。誰よりも元貴のことを知ってるのは俺だ。
「誤魔化さないでいいよ。意図的にやらないとそんな痣はできない」
「う、ぁ……み、ないでよぉッ…!」
元貴が弱弱しい力で俺の胸を叩く。それで抵抗しているつもりなんだろうか。何よりも許せないのは、元貴が元貴を傷付けた人間を庇おうとしていることだ。
「なんで?元貴をこんなにした人を庇わなくていいよ」
「ちがッ……おれッ」
あぁ、いやだ。今、元貴を怖がらせているのが俺だという事実も。元貴に優しくないこの世界も。
「ねぇ、なんで……なんで、もとき」
「っ、あ……わ、わかい…?」
一度言えばもう、止まらなかった。
「なんで、うそつくの……おれ、そんな頼りない、かなぁっ…」
「ちがッ……」
「教えてよ……元貴のこと守らせてよ…」
「俺の大事な元貴を、元貴が蔑ろにしないでッ……!」
肩で息をする。言ってしまった。しかも大きな声で。今の元貴には刺激が強すぎる。しん……と静まった部屋で、俺は元貴の顔を見つめていた。呆けたような顔をしていた元貴の手が俺の頬に添えられる。
「なか、ないで…ひろと」
「ごめん……おれ…」
ぽつぽつと元貴が口を開く。
言われてはじめて頬を流れるあついものに気が付いた。俺の涙を拭いながら、元貴は何かを言おうとしてくれている。はくはくと唇を開いては閉じて、今にも泣きそうな顔をしている。
その姿に言いようのないものが込み上げてきて、世界から元貴を隠すように抱きしめた。
「俺こそ急にごめんね。元貴のペースでいいから、言えそうなときに教えてね」
そう言って離れようとすると、元貴が俺の手を引いた。俯いて、震えている。俺は急かさないよう、やんわりとその手を握る。
「あの、ね……」
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