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城の地下は、地上よりも物静かだった 。
戦場の喧騒も、玉座のざわめきも届かない 。
其処にあるのは、湿った石の匂いと、鎖の擦れる微かな音だった 。
牢の前で立ち止まり、翡翠の王子は1度だけ息を整えた 。
____ 監視役 。
そう、命じられただけだ 。
特別な意味はない…、筈だった 。
「入れてくれ」
兵が鍵を外し、重い扉を開ける 。
中に居るのは、
数刻前まで「停戦の希望」だった王子が一人 。
琥珀の王子は壁にもたれ掛かり、床に座っていた 。
鎖は両手首に巻かれているが、暴れたような形跡は無い 。
顔をあげたその瞳は、静けさを物語っていた 。
「… 貴方が来ると思っていました 。」
その声に、翡翠の王子の胸が微かに軋む 。
何故、分かる 。
何故、責めない 。
「状況は理解しているな 。」
「はい 。捕虜ですよね」
「そして…、交渉は、最初から成立していなかった 。」
淡々と告げられる事実 。
それは、斬られるよりも重かった 。
翡翠の王子は目を逸らし、冷たく言う 。
「命があるだけ、有難く思え 。」
「此処では、それが最大限や 。」
琥珀の王子は、翡翠の王子の言葉を聞いて小さく笑った 。
「… 慈悲、ですか 、」
「それならば、十分です 。」
その言葉が、翡翠の王子を苛立たせてしまった 。
受け入れるんじゃない 。
そんなふうに、運命を 。
「… 怪我をしている 。」
話題を変えるように、翡翠の王子は近づく 。
捕縛の際に出来たかすり傷 。
血は止まっているが、放置すれば魔法が乱れてしまう 。
「… 手当する 。」
「… 有難う御座います 。」
拒まない 。
それが、何故か1番苦しい 。
翡翠の王子は手袋を外し、布を取り出す 。
「良いのですか、?」
「俺みたいな者に素手で触れるなんて…、」
「…物と人間の区別くらいできる」
指が琥珀の王子の腕に触れた瞬間、はっきりと分かった 。
____ 生きている 。
戦場で触れる的の体とは、まるで違う 。
温度があり、脈があり、微かに震えている 。
「震えるな」
「…少し、緊張しているだけです 。」
そう言って、琥珀の王子は視線を伏せた 。
翡翠の王子の指が、無意識に力を緩める 。
血を拭う、その動作が必要以上に慎重になる 。
「… このような怪我には慣れているのか?」
「はい 。戦争は、長いですから 。」
治癒魔法を使えば、一瞬で済むはずだった 。
だが、琥珀の王子は魔法を使わない 。
捕虜として、力を封じられている訳では無いのに 。
「… 魔法は使わないのか 。」
「今は、貴方に任せたい 。」
その一言で、翡翠の王子の中の何かが崩れた 。
任せるな 。
俺は、御前を殺す側の人間だ 。
それ以上触れてはいけないと分かっていても、
手を離すことができなかった 。
「… 少しの間だけや」
それは治療のための言い訳であり、
自分自身への猶予だった 。
やがて布を下ろし、距離をとる 。
琥珀の王子の腕には、もう血は残っていなかった 。
「明日」
翡翠の王子は背を向けたまま言った 。
「御前の処遇が、正式に決まる 。」
琥珀の王子は、少し考えたような振りをして答えた 。
「… 処刑、ですか 。」
否定出来ない事実 。
沈黙が、その答えだった 。
「そうですか」
その声は、驚くほど穏やかだった 。
「では、貴方が剣を振るうのですね 。」
翡翠の王子は振り返る 。
琥珀の王子は、真っ直ぐこちらを見つめていた 。
恐れていない訳じゃない 。
ただ、もう自分の人生を選んでしまったような目だ 。
「少し、休んでおけ 。」
それ以上、何も言わずに牢を出る 。
扉が閉まる音が、やけに大きく響く 。
その夜、翡翠の王子は一睡もできずにいた 。
明確になったことはひとつだけ 。
この感情はもう、命令ではない 。
____ 殺す日が、近づいている 。
____ そして、自分はもう無関係ではいられない 。
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この作品めちゃ伸びですね … 😳✨
言葉選びが難しい…
けどノベル書くのめちゃくちゃたのしいです
読んでくださりありがとうございました!
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝ 250♡