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「一生忘れないよ! 綾がセクシーな格好でサインしてくれたこと」と言いながらお尻を撫でる。
「ヤダ、もう!」と笑い合う。
そして、私はとんでもないことに気づいた!
「え〜〜〜〜!」
「何? どした?」と驚く匠。
「ねえ、匠! 私……もしかして、|綾瀬 綾《あやせ あや》になっちゃうの?」と言うと、
「まあ、そうだなあ〜俺、綾瀬だし……」と言う。
「いやだ〜〜〜〜! なんか変な名前〜!」と言うと、
「はあ〜〜? 待て待て! そこ?」と言っている。
「だって、綾瀬 綾って何? ハハハハッ」と、笑いが込み上げて来て、自分で笑い転げてしまった。
「ヤダヤダヤダ! 匠が、|中谷 匠《なかたに たくみ》になってよ〜!」と言うと、
「はあ〜? |中谷 匠《なかたに たくみ》もまあまあ、笑えるぞー! ハハッ」と笑っている。
「そうかなあ〜? 言いにくいだけだよ。ヤダ、どうしよう〜」
「待って! 綾! 本当に綾瀬 綾がイヤで悩んでる?」
「う〜〜ん」
「嘘だろう?」と笑っている。
「だって〜皆んな笑うでしょう?」と言うと、
「いや、気にし過ぎだよ! 別におかしくないよ!」と言う匠。
「病院で、綾瀬 綾さ〜ん! って呼ばれたら、皆んな見るじゃん!」
「いや、見ないと思うよ。漢字は分からないんだから。有名人と同じ名前の人なら見るかもだけど……」
「そっか……でもやっぱ、漢字の《《瀬》》が《《綾》》に挟まれてて面白いって思ってんじゃん!」
「いや、思ってないよ!」と言いながら、少し笑っている。
「笑ってんじゃん!」
「笑ってないよ。こんな顔だよ!」
と、子どもみたいな言い合いをする。
「変じゃない?」
「うん、変じゃないよ。大丈夫!」と、なんとか宥めてくれる匠。
でも、なんとなく腑に落ちない私がいる。
──綾瀬 綾になるとは思ってもみなかった
そして、私は、結婚雑誌を開いて見た。
素敵な結婚式場や指輪に目が行く。
すると、匠が、
「明日、指輪買いに行こうか?」と言うので、
「結婚指輪?」と聞くと、
「婚約指輪も」と言うので、
「婚約指輪は、要らない!」と言うと、
「どうして?」
「結婚指輪だけで良い!」と言った。
「ダイヤの指輪、買おうと思ってたのに」と言うが、
「付ける場面が無いし……」と言うと、
「う〜ん、そうか? 綾がそう言うなら分かった! その代わりに欲しい物が有れば言って!」と言われた。
「うん、ありがとう。匠のご両親にお会いしたい!」と言った。
「ホントに? ありがとう、喜ぶよ」と言ってくれた。
そして、早速、匠は、お母様に連絡を取ってくれた。
そして、偶然明日、久しぶりにお父様が戻っていらっしゃる日だと聞いたので、急遽、匠のご実家へ行くことにした。
「その前に、綾んちに行ってサインもらおうかな」
と言うので、「分かった!」連絡する。
なんだか、トントン拍子に話が進んだ。
ついに結婚に向けて動き出した。
私もお母さんに連絡すると、
『いよいよね、綾、良かったわね。おめでとう』と言ってくれた。
「うん。ありがとう! でもね、私、綾瀬綾になっちゃうの」と言うと、
『グッ』と母が一瞬笑った。
「お母さん今、笑った?」と聞くと、
『笑ってないわよ』と言うが、
「絶対今笑ったよね?」と言うと、
『ううん、そんなことないわよ。素敵な名前じゃない』と言う。
「う〜〜ん」と言うと、
『ちょっと綾! もしかして名前で悩んでるの?』と言われた。
「うん、ちょっとヤダなって……」と言うと、
『何言ってるの! 名前より匠くんとの生活の方が大事でしょ!』と言った。
──そうだけど……と、いうことは……
「やっぱ、面白いって思ってんじゃん!」と言うと、
『ハハハハッ』と笑う失礼な母だ。
「思いっきり笑ってんじゃん!」
『いや、昨日ね……お父さんと話してて……綾ったら、綾瀬綾になっちゃうわねって言ってたのよ……グッ』
もう完璧に笑っている。
「ああそう、もう電話切るよ!」と言うと、
『あ、綾、匠くんに代わって!』と言うので、
匠に、
「はい! 綾瀬綾で笑ってる母からで〜す」と言うと、
「ハハッ」と匠も笑っている。
──ったく! 人がこんなに落ち込んでるのに……
皆んなして笑って!
匠は、
「はい、はい! あっ、そうですね。ありがとうございます。分かりました。では、確認して又ご連絡させていただきます。はい、失礼します」と、
電話を切った。
「何だって?」と聞くと、
「もし、父が帰ってるなら、出向いてくださるから、顔合わせしないか? って言ってくださった」
「あ、それ良いね! 一度で終わるもんね。なんでお父様が帰って来られるって知ってたんだろ?」
「うちのお袋に聞いたんじゃないか?」
「そっか連絡取ってるのかな」
私が最後に、匠のご両親にお会いしたのは、4歳の頃。ほとんど覚えていないが、20年ぶりにお会い出来るようだ。
友達のお母さんからお姑さんになる。
凄くドキドキするが楽しみだ。
匠は、また、お母様にメッセージで連絡してくれた。
すると、
お父様が〈午前中には、戻って来る予定だから午後からなら大丈夫よ〉ということなので、急遽顔合わせをする運びとなった。
そして、今度は、私が母にメッセージを送る。
〈明日の午後からだったら、大丈夫そうなのでよろしく〜! 匠が場所を探してくれてる〜〉と、送ると、〈OK !〉というスタンプだけが返ってきた。
「母よ、味気ないわあ〜、さっき笑ったから気まずいのかな?」とブツブツ言っていると、
匠が私に、
「ん? まだ怒ってる?」と聞く。
「怒ってないよ!」と今度は、拗ねながら言うと、
「そうだよね〜もう怒ってないよね〜」と、抱きしめてくれる。
「皆んな笑ったから、ちょっと凹んでる!」と言うと、
「え〜そうなのか〜ごめんな」と、ヨシヨシしてくれる。
そして、
「綾瀬綾は、イヤか?」と聞くので、
「ん〜、でも匠とは結婚したいから!」と言うと、
「嬉しい!」
と、チュッとする。