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通常、選抜試験だけではなく模擬戦の類は校舎裏に設えられた格技棟で行われるのが慣例となっていた。
因みにだが、ズィナミの命令で格技棟を建築したのはレイブ一派である、有無など無い、当然だ。
雨季があるこの地で全天候型の修練場が欲しいっ! とか何とか言う我が儘三昧に折れた形であったが、頑張った結果、それなりに立派な建物になったとレイブは自負しても居た。
故に思い、同時に疑問とむかっ腹の煮え立つのを感じていたのである。
――――いつもいつも思い付きで命令しやがって…… 絶対他人に譲ろうとしないし、その癖すぐに飽きちまいやがる! 思えばバストロ師匠もそう言うセルフィッシュな所が多かったしな…… あれか? 太師匠(たいししょう)のグフトマだったか? 甘やかしたんだろうなぁ、性格破綻者だもんね、二人とも……
そんな感じで自分の事は棚に上げたレイブであったが、グフトマやバストロ、ズィナミを知るキャス・パリーグやエンペラ、カゲトやベテランの教授陣からは、レイブもラマスもお師匠や太師匠にそっくり♪ 的に微笑ましげに言われていた事など知る由もなかったのである、残念至極……
聞こえない位のボリュームでぶつぶつ文句を言いながらエンペラの呼ぶ方向に向かったレイブは、少し高く盛り上がった土山を越えた所で、何故表でやるのか、その理由を理解した。
理解した上で新たな疑問に頭を捻ることとなる。
――――は? 何だよこの人数は…… 全学年の生徒だけじゃなくて教授連中やその他の職員も勢ぞろいってぇ、何で? 良く見たら卒業してサリト村の防衛に向かったヤツラや輸送係の竜達まで揃ってんじゃん! 一体何事だって言うんだよ、これ?
固まって歩みを止めたレイブを見咎めたズィナミが声を掛けてくる。
「これは皆アンタのオーディエンスだよ! 忙しい中集まってくれたんだ、嬉しいじゃないか、なあレイブ!」
レイブは仕方無さそうにしながらもズィナミに近付きつつ答える。
「あーそうなんですか? 納得いかない事ばっかりだし特段嬉しいとも思いませんですけどね~、それより俺の心の声とか聞こえているわけでは無いですよね、おばさ、学院長?」
ズィナミはキョトンとして答える、実年齢はまるで謎だがこうしていると十代に見える位には若々しい。
「心の声? 一体何の事だい?」
「いえ…… 判らないのなら結構です」
「? ま、兎に角サポーター? オーディエンスもお待ちかねだからさ、早速選抜試験をやって貰おうかね」
「はいはい」
気楽に答えたレイブは、背負っていた背嚢(はいのう)を下ろして中から薄汚れて見るからに古ぼけたフード付きのローブを取り出して袖を通し、皮製の襟当を丁寧に留め始めるのであった。
その姿を眺めながらズィナミは苦笑いを浮かべつつ声を掛ける。
「まだそのローブを使っているんだねレイブ…… そろそろくたびれて限界じゃないかい? いっそ作り直せば良いじゃないか、ここまで大切にして貰えればアイツだって本望だと思うよ」