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レイブは胸の襟当を締め終えて腰の腹帯に取り掛かっていたが、どうやっても周らないと判断したらしく、落胆の溜息と共に答えて返す。
「いえ、まだまだ着れますのでお構いなく……」
「だってベルトが締らないんじゃないか!」
「こんな物は腹帯だけ作り直せば済みますし…… それに、これから魔術師として活躍するだろう生徒達の試験をさせてもらうんですから、中身は『役立たず』の俺ですけど、せめて衣装だけは『北の魔術師バストロ』として、いやバストロ師匠の弟子として相手をするのが礼儀かな、そう思いますんで……」
「ふーん、じゃああの娘のローブも同じ理屈なのかい? あれはアンタが昔着ていたボロなんだろう?」
言ったズィナミの視線の先を追ったレイブの視界に、観客の最前列まで進み出てブンブンと勢い良く手を振るラマスとギレスラ、ペトラ、エバンガの姿が映った。
予定では置いて来るかと思っていたカタボラもギレスラの背中で居眠りしているのが見える。
改めて遠目で見ると、ラマスのローブも随分くたびれていて周囲の生徒達に比べると貧相この上なく見えた。
レイブは少し気まずそうな顔を浮かべながらズィナミに答える。
「ラマスのは寸法が丁度良かったから羽織っているだけで深い意味とかは無いですよ、そろそろ新調してやろうと思っていたんですけど、アイツもあれで良いって言っていたんでつい伸ばし伸ばしに――」
「おーいっ! パリーグ、生徒達を連れてきておくれーっ!」
――――くっ! 話し掛けたんなら返事くらい最後まで聞けよ脳筋め! んな感じだから未だに独り身なんだよ、クソ婆っ!
レイブは内心の苛立ちをおくびにも出さずにキャス・パリーグが連れてきた学生たちに対して丁寧に礼をしてから、少し格好つけて言う。
「良し、では順番に掛かって来なさい、何、心配要らないぞ、怪我はさせないように気を付けるからな」
ニヤリ、そんな擬音が聞こえそうな感じで微笑んで見せたが、生徒達は一切緊張する事無く、互いに顔を見合わせた後で、一列に並んだ五人の内一番左に立っていた男子生徒が答える。
「じゃあ僕からお相手願います」
「お、おう、落ち着いてるなお前等って…… 少し前までさっきのセリフで皆ビビッてたんだけどな」
「あ、はい、昨日ランディさんから全く同じセリフを言われたんで、新鮮味が無いって言うかぁ、そのぉ……」
「なるほど」
レイブは思った。
――――やっぱり飯抜きだな、あいつ
と。
そしてやや赤らんだ顔を伏せるようにしながら開始の合図を告げるのであった。
「さあ、存分に掛かって来い」
「はいっ!」