乱歩side
…、死後の世界は、きっとあるんだと、知った。
遅れて、死体となって帰ってきた2人の表情が同じく妙に穏やかだったから。
敦を止められなかったことを皆に話した。
皆、乱歩さんは悪くないと、そう言ってくれる。
…そしてようやく分かったんだ。
優しくされることの辛さを。敦が皆に励まされて、僅かに苦しそうな顔をしていた理由を。
前を向いて歩くみんなと、少し後を行く僕の心の差。それを埋めるように今はただ、右の窓側に空いたふたつの席を眺めた。
今でも聞こえる。あの二人の会話も。うるさいと叱る国木田の声も。
ごめんなさいと申し訳なさそうに謝る敦の声も。
任務帰りに「特別ね」と分けたお菓子を美味しそうに食べる敦。僕のことを凄いと褒めて、自分を憐れむ敦を横目に見た事。
少しづつ、前を向く敦に少しずつ惹かれたこと。
そんな日々が輝くのは、きっと敦だったから
朝焼けの空を埋め込んだような明るい瞳をしていた。
ただそれは、今はもう閉じていて、見えないものだった。
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