「…………………………ぇ」
もはや見慣れてしまった薄黄色な部屋にパイプが張り巡らされている部屋
その景色自体は何も変わらない…が、
私の背後にいた大切な人は霧散してしまったように消えていた
巻き戻し3回目
それを理解した時、もう周りには何も残っていなかった
途轍もない喪失感
先程までの全てが否定されたような
全てが無くなってしまったような
彼の勇気が
あの言葉が
気持ちが
葛藤が
彼の存在そのものが
最初から何も無かったように
……また新たに分かったこと
4つ目、どれだけハンスを守ろうが私が生き抜こうが、49日目以降を迎えることはできない
光の種シナリオエラー、 光の種シナリオ再起動という放送と共に一日目へ戻ってしまう
……そして5つ目
この巻き戻しは2回3回などではなく、数千数万回と続くこと
…『死にたくない』などと願ってしまった事への罰なのだろうか
何度死んでも、殺されても、溶かされても、バラバラに引き裂かれても、ドロドロに溶かされても、自分で命を絶っても
……何をしてもまた目が覚める
巻き戻し6回目
『管理人!O-06-02《何もない》が脱走しました!』
「「!!!」」
〔Good bye.〕
「………ごめんな」
「喋らないで!!!
っッ!!止血を……血が……」
「スミレ」
「何か…何か治療できるものを…」
「……スミレ」
「………やだ…嫌だよ……」
巻き戻し28回目
『管理人!T-02-71《夢見る流れ》が脱走しました!』
「…廊下の証明が虹色に… 」
「…ハンス、取り敢えずエレベーターに避難して。
鎮圧指示が入るまで待機───…」
「っスミレ!!危ない!!!」
「!!!っやめ───!」
「…ぁ………うそ…………」
巻き戻し112回目
■■■
▷ ハンス ◁
■■■■■
〔おぎゃぁ!!っふぎゃぁ!! 〕
「ハンス!!!聞いて!!!
あんなルーレットの結果なんて聞いちゃ駄目!!!」
「………」
「ねぇ!!ねぇって!!! っあ…!!開けて!!!駄目!!!嫌!!! ハンス!!!」
グチャ
〔おぎゃぁ!!ふぎゃぁ!! ぁ……あう……………〕
「…………はん…す…」
巻き戻し816回目
「……俺と、ずっと一緒に居てくれないか?」
「……………なら」
「…?」
「…なら!!!もうどこにもいかないでよ!!!!
いつもいつも私を庇ったり!!
勝手に置いていっちゃうし!!!
逃げてっていっても逃げてくれないし!!!
……それなのに……それなのに!!!
…私の気も知らないで!!!!」
「…え…っと、スミレ?」
「ッハンスなんか!!!!
………大っ嫌い!!!!」
<!光の種 シナリオエラー!>
<!光の種 シナリオ 再起動!>
巻き戻し26■■回目
「………そうか、俺が…俺達が覚えてないだけでスミレにそんなことが……」
「…………」
「…信じるよ。スミレがそう言うならきっと本当だろ?
…今まで辛かったな。
一緒に解決策考えよう?…な?」
「……………うん……」
『管理人!T-03-46が脱走しました!』
「………ぁ…… ハンス………
……ぅ……は、離…………」
巻き戻し8■■■回目
「ごめんなさい……ごめんなさい……
守れなくてごめんなさい
助けられなくてごめんなさい
何もできなくてごめんなさい…… 」
「す…スミレ!?どうしたんだ!?
…えっと、カウンセリングは何所で…」
「……ごめんなさい…ごめんなさい…」
ごめんなさい………
巻き戻し2■■■■回目
〔むかし むかし、温かい木々がたくさん生えた森に、とある3羽の鳥が居ました。鳥たちは森の中で幸せに暮らしていました。〕
〔小鳥は自分のクチバシを使って、悪いことをした森の仲間に罰を与えることにしました。〕
〔高鳥は森の平和のために、森に入ってくる者に罪の重さを測ることにしました。
高鳥の天秤はいつも正しく罪の重さを測ることができたからです。〕
〔大鳥は森に怪物がいないか監視することにしました。
大鳥の目は遠くまで見ることができて、他の仲間には見えないものも見ることができたからです。〕
〔そんな時に誰かが逃げながら叫びました。
「あそこに怪物がいる!この森には怪物が住んでるんだ!」〕
〔どんな物を飲み込める小
鳥の口は閉じられ、〕
〔いつも空を見上げていた高鳥の頭は垂れ、〕
〔遠くを見通せた大鳥の目は見えなくなり、〕
〔鳥たちは森を徘徊して怪物を探すが何も見つからない。
物も、他の生き物も、太陽と月も。残ったのは一つになった3羽の鳥たちと黒い森だけでした。〕
「………………………………」
「…スミレ、聞いてくれ」
「………………………………」
「俺、スミレが居てくれて本当に幸せだったんだ
何時でも側で守ってくれて、
何時でも側で助けてくれて、
何時でも側に居てくれて」
「…, …………………………」
「もっと…もっと早くに言えれば良かったな……
スミレ。俺は……お前の事が───……」
「…………ぅ…、…………
………ぅ”う”……あ…………
ぅ”う”う”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ””あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ” !!!!!………………
巻き戻し■■■■■■回目
「 」
──────────────
仕事場へと付く
薄黄色な部屋にパイプが張りめくらされていて、他の職員も見る事が出来た
この会社の見取り図は確認済みなので、 この場が中央本部な事は分かったので、問題は仕事内容なのだが…
(…まぁ、何とでもなるか)
そう思い、メインルームへと足を運ぶ
周りに居る職員は黒スーツの姿と色鮮やかな服装をした職員の姿が見られた
そしてその中に…
「…………は?」
目を疑う
一度目を擦り、もう一度視線を元の場所へ向ける…が、それでもその人物の姿は変わらなかった
思わず声が漏れる
「…………スミレ?」
「…………………………」
返答は返ってこないが、その立ち姿に彼女の面影が重なり……
「っスミレ!!」
彼女を抱き締めてしまう
彼女は反応も声を出すこともなくただ立ち尽くしている
…しかし、彼女の体は小刻みに震えていた
「良かった……本当に良かった………」
「…………………………」
(………?)
一切反応を示さないスミレに違和感を覚え、彼女の瞳を見る
…その瞳は光も反射しないほど真っ黒で、自分の記憶上の彼女とは異なる物だった
そうしてゆっくりと、震えながらもスミレの口が開かれ…
「………はんす…」
「……あぁ」
「……私、どうすればいいのかな」
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