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彼女の真っ黒な瞳からポロポロと涙が伝う


「…貴方を守る。

そう決めたはずなのに、守れた事の方が少なくて

貴方のことが好き。

それなのに大嫌いなんてはね除けちゃって

貴方の為に何でもやってきた。

……それなのに、また此処で貴方を悲しませて」


「……私、頑張ったよ。

何回も何回も何回も何回も

切られて、焼かれて、潰されて、千切られて、貫かれて、削られて、食べられて、消されて、轢かれて、『規制済み』されて、

殺されて…殺されて殺されて殺されて殺されて…」


「それだけなら耐えられたのに…貴方までそんな目に遭って、それを見届けなきゃいけないなんて……私には苦しすぎるよ」


「もう嫌だよ…貴方の少しずつ無くなっていく体温も。

貴方が潰える時に見せる表情も。

貴方の最後の最期に吐く言葉も。

全部全部…知りたくなかった…

それなのに………!



………どうすればいいの?

何をしても変わらなかった。変えられなかった。

………何にも、出来なかった。」





正直、スミレが何を言っているのか分からない

俺を守るだとか…殺されてだとか守れなかっただとか

自分の知っている彼女は…常に冷静で…感情を出すことはあれど、ここまでの感情の起伏は見たことが無かった


目の前の少女は本当にスミレなのだろうか




…此処で何があったんだ?


「………」


掛ける言葉が見当たらない




「………絶対に守る…なんて言えないし、私には出来ないけど……それでも……



……もう、死なないでよ…ハンス」





















「ごめん。」


「………」



「俺には…あの日からスミレに何があったのかも、どんな想いをしてきたのかも分からない 」

「………………そ……っかぁ……



………うん、そうだ。


…ごめんね。今のは忘れ」

「だから!!!」

「…………?」

「俺は……俺はそれを知りたい。

スミレがどんな事があったのか、どんな想いをしてきたのか…

……全部教えてくれ





…今まで辛かっただろ。

一緒に解決策考えよう?…な?」



ハンスの温かい言葉





………聞き覚えのある言葉

何度繰り返そうとも、変わったのは『私』だけなのだと実感する


私の表情は…変わらなかった



「………分からないよ。ハンスには」

「………だとしても俺は…」

「分からないよ!!……ハンスにも、誰にも。





………私にも…






…………分からないんだよ… 」


…あぁ、嫌になる


貴方のことが大切なのに、貴方にそんな顔をさせてしまった











貴方の笑顔が見たいな









喉元に自決用の銃を突きつける


…が、とんでもない速度ではたき落とされた上、その勢いのまま壁際へ押されてしまう


……そんな顔しないでよ


「…スミレ!!!本当に…お前に何があったんだ!!!」




「 …どうせ話しても忘れちゃう癖に」

「っ…!…… ?? 」





(…本当にスミレが何を言っているのか分からない。


…だが、今の自殺未遂だって…

……絶対にこのままでは駄目だ)


「………少し、話をしよう」


そう言いハンスは離れ、スミレの横へ回る

流れるようにはたき落とされた銃を回収し、口を開く


「…俺は、ここでスミレに会えて本当に嬉しかった。

もう会えないと思っていたお前にまた会えたんだ。


スミレは、違うのか?」


少し嫌な言い方をしてしまったかな、と隣を覗き込めば…


「………訳ない……」

「…?なんて…」

「違う訳ないでしょ!!!

私だって嬉しかった!!!

また会えて!!また一緒に過ごせて!!

…それなのに!!!私も貴方も殺されて!!!気付けばまた最初っからで!!!……

何回も何回も何回も何回も……


何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も………!!!!!」


スミレは頭を抱えてその場でしゃがみ込む

ハンスは背中をゆっくりとさすりながらも、スミレの次の言葉を待ち続けた


「…もう、貴方との全てが苦しいの……

温かい言葉も、真っ直ぐな目も、その勇気も、力強い鼓動も…全部全部大好き。


でも…それが全部無くなってしまう感覚が、何よりも苦しくて……


…貴方が大切だからこそ、辛いの。」


一度乾いた涙がまた溢れる


「教えてよ……私は………」





「どうすればいいの?……………」





















「………スミレは、やっぱり誰かの事を思える人なんだな 」



聞き覚えのあるフレーズ

…いや、この台詞は…



「…だからここまで頑張り続けて…結局、壊れてしまう。



…『助けて』の一言くらい、言ってくれよ……」


「……私は、貴方を守らないと…」

「スミレが俺を守りたい様に、 俺だってお前を助けたいんだ」


本当にハンスは変わらない

…でも、私はこれまで何度も貴方と関わってきた

何を言われようとも私は…


「それに…俺は絶対あの時の様な後悔はしたくないんだ。


………あの時、お前の手を取れなかったことを悔やまない日は無かった。


だからこそ…今お前が生きていることが、今話せていることが、幸せなんだ。 」

「……」


初めてかもしれない

ハンスがここまで自分のことを吐露してくれたのは


「…だから今も、そして『これから』の人生も…

スミレに助けられるだけじゃなくて……俺だってお前を支えていきたいんだ。

…スミレが抱えている物も、一緒に背負いたい 」

「……!!!」





心臓がドクンと跳ねた音がした



『これから』



守るのではなく、守り合う

支えるのではなく、支え合う


抱え込むのではなく、分かち合う




貴方が望む、これから


ようやく分かった

ようやく思い出した




(…私は貴方と一緒に歩みたかったんだ)


貴方を守るばかりで、

貴方に頼る事が出来なくて

ずっと前に忘れてしまった事




それを忘れさせたのも

それを思い出させてくれたのも貴方だから









…ただ、貴方との未来のために











「……ありがとう」














───E.G.O.が発現する






「……T-03-46《白夜》」


…『管理人!■-■■-■■が脱走しました!』



「……!?!?」


(…………?)


ほぼ無意識でスミレが発した言葉に反応するように、T-03-46《白夜》が脱走した


しかし、今現在T-03-46は収容されていない

放送の音声が途中で壊れていたのもその為だろう




…勿論、この原因はスミレ───に発現したE.G.O.による物だ


赤の色を付与された特色フィクサー、 赤い視線のE.G.O.を例とすると、能力は『血液操作』

これが最も分かりやすい例だろう


スミレのE.G.O.は

『人間の持つ心と思想の力を物理的に発現させる』


奇しくもLobotomy社の特異点と同じ物であった


その為、いま脱走したアブノーマリティは『脱走』ではなく召喚…『生成』と表すのが正しいであろう




(………なるほど)


私は頭上で揺蕩うアブノーマリティへ視線を向ける

隣のハンスは腰を抜かしてしまったようで、壁へ寄りかかってしまった

周りに居る使徒は此方を見つめてはいるが、その鎌を振り上げる事は無い


「…?!?!す、スミレ!!何を………これっ……アブノーマリティか?!」

「うん………うーん……」


(…恐らく私が原因だとすると…


…………………なら、)



──────────────




「………これは…」

「……………」


A…アインはこの状況を楽しんでいた


(ついに……ついにカーリーの様なE.G.O.を発現させた。 )


当然スミレが記憶を引き継いで居ることは知っていた為、いずれは起こると理解はしていたが…

想像以上であった


「A。…これは……」

「…あぁ、光の種シナリオの邪魔だ。」


数万、数十万回もの試行錯誤の中で、既に光の種シナリオまでの条件はある程度分かっている

これはただの妨害行為でしかない

…それならば、今収容違反を起こしている職員は『処刑』対象であろう



(何かには使えると思い入社させたは良いが…光の種シナリオの邪魔をするというのならば…)



処刑弾を選択し、一時停止を…


「……あぁ、出来ないんだったな」


T-03-46《白夜》によって一時停止は封じられている

仕方無くそのまま突っ立っているスミレへカーソルを向け……




──────────────




「………O-05-47《触れてはならない》」



今までの繰り返しの中、唯一出会ったことの無いアブノーマリティである

私の目の前へ召喚する



名前通りならば、やはり触れることによって『何か』が起こるのだろう


……そして、恐らく管理人は私を処刑してくるであろう

どれほど前か覚えてはいないが、私が発狂した際に処刑された覚えがある


…だから、これは賭けだ

その『何か』へ期待し、その為なら何だって、何度だって試そう


……これからの為に



………そして────















「………触れたな?」




本来O-05-47《触れてはならない》に触れることは全職員の死亡、もしくはパニックを意味する


…しかし、これはスミレのE.G.O.によって生成されたモノであり、L社の管轄内のアブノーマリティとは異なる



…その為、L社によるクリフォト抑止力は効力を失っている




頭が割れそうなほどの爆音が鳴り響く













마!!!!!



…爆音の中、壁へ寄りかかる彼へ向き直る


…もしかすれば何かが変わるかもしないし、また最初からかもしれない



…だが、今私がやるべき事……これだけは伝えなければいけないと思ったのだ


その一言を………









「………『一緒に』逃げよう? 」



私は壁に寄りかかる彼に手を伸ばした



彼は困惑し続けていた

それでも…それでもハンスは私の表情を見て、私の目を見て…

満足そうな、待っていたかのような表情を浮かべ、

私の言葉に答えてくれたようで…



彼は私の手を───















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