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俺は立ち上がった
ふらつく足で、波打ち際へと向かう
靴に水が入り、ズボンが濡れる
あの日より冷えた海に飲み込まれていく
でもそれ以上に、心はもっと冷たかった。
「もう一回だけ…,ttに会わせてくれよ 」
「お願いだからさ…ッ」
自分でもわかるくらいに声が震えていた
泣きたかったけど、やっぱり涙は出なかった。
「俺…自分ひとりじゃ何も出来ないんだ…ッ!」
「ttが居なかったら駄目なんだよ…」
1歩ずつ、海の中に足を進める
水が膝を越え、腰まできて。
それでも俺は、止まらなかった。
𓈒𓏸︎︎︎︎
苦しかった
冷たかった
でも、それでいい。って思った
こんな風に地獄の中で生き延びるくらいなら
あの夜、一緒に終わるべきだった。
間違ってたのは、助かってしまった俺だ。
「ttのとこに……行きたいよ」
その声は海の泡となって消えた
もうこの声も、体もどうでもよかった。
だから……
終わりにしてもいいだろ____?
まるでttに許可を求めるように
まるで、最後の祈りのように
呟いた。
.。o○
深く深く沈んでいく海の中
世界はぼんやりと揺れていた
現実とも、夢ともつかない、
遠い場所へと。
.。o○
何かが遠くで囁いているようだったけど
それが誰なのか、何なのかはわからない。
終わりか始まりかも、わからなかった
ただ、今ここにいることだけが
確かな気がしてそうでもない気もした。
知らないまま終わり、
俺はまた一歩ずつ進んでいく
☆*.✧
あの海に、俺は全てを捨てた 完
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈𓈒𓏸︎︎︎︎
一体、彼が何処へ行ったのか
もう一度あの子の居ない世界で過ごすのか
あの子と再会することが出来たのか
彼にとって、 海で揺られたのが
良い方向に進んで行ったのか
悪い方向に進んで行ったのかなんて
答えはどこにも書いてない。
彼のこれからがどんな物語になるのかは
読んだ貴方の中だけにあればいい。
彼の物語も
貴方の物語にも
幸せが訪れますように。