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麟兎
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#子供
虎神るの🐯✞💛@飽き性
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読ませていただきました。第2話、ほっこりする親子のやり取りと、不気味な違和感のバランスが絶妙でしたね。結衣ちゃんの「お母さんはベーコンエッグに中濃ソースだよね」って台詞、知ってる人の口調そのままで、ぞっとすると同時に愛おしくもありました。最後の押戸とランドセルの発見。あの「確かだった」という一文にゾクッとしました。続きが気になります…!
ーー二章ーー
彼女の言葉を、「未来はない」という言葉を聞いてから、あまり記憶がない、酒を飲みすぎたような、熱病に罹ったような、吐きそうな体調の悪さに襲われて、トボトボと歩き出したと思う、気がつけば自分の家にいて、その隣には少女、「結衣」がいた
不思議となんでと聞きたくはならなかった。ああ、私が連れてきたんだ、となんとなく分かったから。
「ねぇ、お母さん、そういえば、お水くれてありがとう!私、お母さんのこと、とても大好き!」
そう言って、布の擦り切れたスカートで、ブカブカですぐに指の付け根で転がってしまう、傷の付いた指輪を大事に嵌めて、心の底から嬉しそうに笑っているゆいを見るとなんだか、私に随分と欠乏していたものが、トクン、と注がれていくような感じがした。
「ねぇ、この後、洗濯物取り込んだら洋服買いに行かない?」
私が聞くとゆいは答えた
「うん、行きたい、でも私はそれよりも先に食事を取りたいな」
わかった、と短く答えて、今朝の残りの、白ご飯と、母から教わったきゅうりのピリ辛いやつ、新しく焼いたベーコンエッグをテーブルに並べた。
「おいしい!でも、きゅうりが少し辛い、鷹の爪が入ってるからだ!やっぱり、お母さんはベーコンエッグにも、中濃ソースだよね!」
ゆいは、嬉しそうに、でもお行儀よくご飯を頬張る、水を狂ったように飲み込んでいたさっきとは別人のようだ。
ゆいは、無邪気なところも、子供らしいところもある。
でもどこか不思議だ、こんな子供が鷹の爪、中濃ソースなんて言葉を知っている物だろうか、こういうところも…何とは言えないが似ている、私が小さい頃は「辛いの」「ソース」なんて呼んでいたのに、まるでわざわざチョコをチョコレートと、こち亀をこちら葛飾区公園前派出所と呼ぶような、変人と暮らしていたみたいだ、そういう、やたらとタイピングが速くて、変な雑学ばっかり知ってるような奴と、私の知らない未来で、暮らしていたみたいな…
ご飯を食べさせて、お皿を洗って私は結衣と共に近所の服ショッピングモールに行くことにした、子供の服が売っているところなんか言ったこともなかったが、あそこなら、この子に合う服もあるだろうと思ったからだ。
歩いていくには距離があるものの、うちには車も子供用の自転車もないので、周囲ばっかり前に進む、気の暗い昼下がりには汚く見える秋の道を、今朝で会ったばかりの子供と歩くのだ。なんだか可笑しくて、少し笑えた。
小さな頃の私なら、疲れたとただをこねそうな距離を歩き終えて、赤いロゴの描かれた自動ドアを潜る、広い敷地に白のタイル、そしてカラフルな服、大人用のカーディガンも、メンズのジャケットも、帽子やハンカチやアクセサリーまで、幅広く取り揃えられていた。
「あそこ、可愛らしい服が沢山ある!」
そう言って結衣が指さした先には、小学5、6年生くらいの、子が着るような、今時な感じの棚だった、私も、チラリと見ていた、私の歳じゃとても着れないキラキラとした服達の棚。
「綺麗だね、でもまだあなたには早いと思うよ」
「それもそうだね、じゃあ、あれは?」
少し奥の方に歩いていって、スパンコールのあしらわれた綺麗なTシャツと、互い違いのボタはンが丁寧に縫われた、ジーンズを持ってきた。
「いいね、センスある、自分に似合う服わかってる感じ」
「うん、私、服チョイスするの好き!」
結衣が言う
「じゃあこれもいいんじゃない?」
そう言って、私は肩の開いたトップスと、足首の裾が広がっているズボン、可愛らしいゲーミングっぽいパーカーやスカートパンツ着きの量産型っぽいスカートなんかを提案してみた。
「いいね!私はこの系統の服が好き!」
リーズナブルな価格のお店での、ちょっとした買い物だったけど、ファッションの好みが合って、なかなか盛り上がった、アクセサリーや日用品も買って、会計は結局二万を超えた、でも、明日からこの子と一緒にその日着る服を選ぶのかと思うと、子供みたいにワクワクする自分もいた。
浅い夕方の帰り道、私はふと結衣に聞いてみた「ねぇ、結衣、学校には通ってるの?」
「通ってたし、通う予定だよ、前は三浦市の学校に通ってたけど、急に引っ越すことになったから来週の月曜日からあそこの学校に通うんだ」
そう言って少し遠くに見える、うちの近所の小学校、墨田区立西原小学校を指さした
「結衣、三浦市…ってことはあんた、神奈川から押上まで一人で来たの?」
驚いて、私は問う
「そうだよ?お母さんがいきなり消えちゃったんだもん、びっくりしたよ、追いつくまで大変だったんだから」
「消えた…って何?てか、うちにはランドセルも文房具も教材もないけど、大丈夫なの?」
「ランドセルも、教材もお母さんが持ってったんでしょ?…お母さんのことだからまたクローゼットルームに置き去りにして、忘れてるんじゃないの?」
「そんなわけないでしょ!またってなに、またって!」
「絶対そうだと思うけどなぁ」
私には、よくものを無くす癖があるが、大抵クローゼットの隙間やクローゼットルームの棚の中に置き去りにされている、まるで今までの私を見ていたような口ぶりに、私は少し動揺した。
帰路が終わる、荷物を持った手を少し手繰り寄せて指を出し、ドアノブを握り、少し重いマンションのドアを肩で押し開ける。
「ただいまー」
「ただいまー!」
靴を慣れた手つきで脱いで、玄関からクローゼットに続く廊下を歩いて、木製のドアを引く、
その時気づいた。
おかしい
何かがおかしい
私の家はマンションで、外から開ける時、ドアは引き戸だ、ドアを押すことなんてありえない。両親のオーダーメイドの実家は押戸だった、服やプラモデルなんかをを買うのが好きだった両親は荷物を持ってドアを開けることが多くて、引き戸だと不便だったからだ。
でも、この家はマンション、どこからどう見てもマンション、何故さっきは押戸だったんだろう、そう思うと、霊現象にあったようで、怖かった。
「お母さん、どうしたの?」
「なんでもないよ、タグ切って、クローゼットに服しまっちゃおう?」
「わかった」
クローゼットルームを開ける、私もファッションは好きなので、親が家賃の一部を払ってくれている、私一人には広すぎるマンションの一室を、クローゼットルームにしている。
「確か、ズボンだけ入れようと思って買ったけどそのままになってた、小さいクローゼットがあったはずだから、それ使って」
そう言って、小さなクローゼットを取り出そうとして、マンションの壁にに元々あった棚を開けた時、私は絶句した。
そこには、紫色のランドセルと、教科書やノート類、お道具箱など、小学生の学校用具があった。
「やっぱりこの部屋じゃん!お母さんったら」
「待って…どういうこと…」
何も分からなかった
本当に何も分からなかった
ただ一つ、来週の月曜日から結衣が使う、私と「誰か」が買い与えたものであることは確かだった。
ただ呆然と、確かだった。