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触れた瞬間、びくり、と腰が跳ねる。
元貴は俺の反応を楽しむように、意地悪そうに微笑んだ気がした。
元貴の指先が、俺の根元を逃がさないように引き寄せる。
俺の太腿の付け根に顔を深く埋め、執拗に、かつ丁寧にその熱を這わせていく。
「んっ…ふ、ぅ…」
自分の情けない声が玄関に響く。
俺を愛おしそうに、けれど飢えた獣のように貪る元貴の姿が嫌でも目に入る。
艶やかに湿った唇が、先端を割り込むようにして、熱い口内へと招き入れる。
「………っ、あッ!?」
吸い上げるような強い圧迫。
元貴は上目遣いに俺の顔を覗き込み、羞恥に顔を歪める瞬間を、一瞬たりとも逃さず脳に焼き付けている。
その瞳は、俺を壊すことしか考えていない。
狂おしいほどの愛撫が、心をじりじりと溶かしていく。
俺は耐えきれず、元貴の柔らかい髪に指を突っ込み、
拒絶なのか、あるいはもっと奥へと誘っているのかも分からない力で、その頭を自分の方へと強く引き寄せてしまった。
元貴は深く、深く、吸い上げた。
膝がガクガクと情けなく震え出す。
喉の奥を突くような、容赦の無い深さ。
「……もと、きっ…喉は、やめッ……!」
俺の制止など、今のこいつには届かない。
本来なら体が拒絶するするようなところまで、喉の奥をこじ開けるようにして迎え入れている。
この男は自らの「命」さえも、俺を繋ぎ止めるための快楽の道具として差し出しているのだ。
喉仏が淫らに上下するのを見て、俺は思わず目を逸らした。
「……ッ、ん、ぅ…あ……ッ…!!」
限界だった。
一番敏感で熱い場所へと、すべてを吐き出した。
元貴は苦しげに喉を鳴らしながらも、一滴も零さずに俺を飲み下していく。
吐息が、水音が、静まり返った。
ようやく解放されたとき、壁に背を預けたまま、ずるずるとその場に座り込んだ。
「っ……元貴、ごめん……」
せり上がる罪悪感に声を震わせる俺の前で、元貴は顔を上げた。
口の端に残った熱を指先でなぞり、それを舌で追いかける。
「……んーん、……ご馳走さま」
いたずらっぽく、けれど底知れない独占欲を込めて微笑む。
「若井の『全部』、俺の喉が覚えてるから」
そう言って喉仏を愛おしげにさする彼を見て俺は悟った。
謝る必要なんてなかったのだ。
………やはり、狂ってる。
目の前の男の濁った熱に当てられて、思考が真っ白な照明の中へと溶けていく。
逃げ道なんて最初からどこにもなかった。
俺の全てをその身に宿した「天才」が、満足げに目を細めてこちらを見つめている。
俺たちは、この場所からもう、二度と戻れない。