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:「昼休みの俺」
昼休み。学園中央の巨大食堂。
天井は吹き抜け、天使族が空中席で羽ばたき、竜人たちは火を吹いて肉を焼く。
その端の、陰の隅に――一人の生徒がいた。
伊弉諾 林野
「俺は、ここが好きだ。静かだし、飯も落ち着いて食える。」
トレーに乗ってるのは、Dランク向けの質素な食事。白いパンとスープ。
林野はそのパンを一口ちぎって、静かに咀嚼する。
でも今日は、違った。
向かいに、誰かが座った。
???「へぇ、ここ座るんだ。意外」
現れたのは、鮮やかな銀髪に赤い瞳、紅のスカーフを巻いた少女。
制服の袖には、Sランクの紋章。
林野「……誰?」
???「霧咲(きりさき)ユナ。Sランクよ。あなたは、Dマイナスだったっけ?」
林野はパンをかじったまま、返事をしない。
ユナ「あなた、昨日の実技……意図的にやったわけじゃないでしょ」
林野「さあ……眠かったから、あんま覚えてない」
ユナ「……その無気力キャラ、いつまで通せるかしらね」
彼女はパンを一つ、トレーから盗って食べる。
ユナ「私、気になってるの。“この世界に存在しない能力”っていうもの。あなた、違うレイヤーから力を引いてるわ」
林野「……知らないな。俺はただの“落ちてるやつ”だよ」
ユナは小さく笑って、立ち上がる。
> 「じゃ、またね。“落ちてるやつ”。そのうち、誰かが拾いに来るよ?」
その場には、沈黙とスープの湯気だけが残った。
> 「俺は静かに過ごしたいだけだ。
けど……どうやらこの学園は、“静か”を許してくれないらしい。」
次回予告:第6話「野外実習」
> 「今日は野外実習とかいうやつだった。」
「森に入って、魔物の気配を探ったり、陣を組んで進んだり……」
「俺には関係ないと思ってた。――最初のうちは、ね。」
> 「重力が、ねじれた。空間が、軋んだ。……何かがいる。ここじゃない何かが。」
> ――次回、『野外実習』
静かな森が、音を失う時。
“見えない存在”が、現れる。
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