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 ネフテリアは現在、フラウリージェ他国出店計画の為に動いていた。

 まずは、ピアーニャに各国の新人募集を宣伝してもらったので、5カ国から2~3名の合計15人程度を受け入れる体制を整えている。

 エルトフェリアは大きく作ってあり、数名の居住は問題無い。だが、施設内はアリエッタも結構好きにうろつくので、あまり進んで公にしたくない存在を考慮し、密偵達のように近所に住んでもらおうと考えている。その事を密偵に伝えると、護衛も兼ねてご近所さんとして住んでもらおうという話になり、幸いにも以前にミューゼの家を護衛する為にネフテリアが近所の家を買収していたので、家数件を空けておくだけとなった。


「まぁ後は密偵に任せておけばいいでしょ」

「未来のフラウリージェ店員の為と言って、喜んで改装しに帰りましたしね」

「熱狂的ねぇ……」


 事務室ではネフテリアとナーサが今後の事を話しあっている。

 人数が増えるという事で、店と作業場も増やす必要があるが、エルトフェリアには色々な用途の為に用意した大きな部屋がいくつもある。そのいくつかを作業場にする事で解決。店の広さについては、狭くなったら2階や地下も作ろうという事で落ち着いた。

 残る問題は、数年後に開店する各国の支店。これに関しては支店を出す先の王族と連携する必要があるのだが、一番の問題はアリエッタデザイナーが本店にしかいられないという事。これに関してはアリエッタの絵を支店に渡せばなんとかなるが、その為にアリエッタにしっかりと説明しなくてはいけない。つまりアリエッタとの会話で完璧な意思疎通をする事が重要なのだ。

 その事についてネフテリアが悩んでいると、


「2年もしたら、普通に会話出来ると思うのですが」


 ナーサからごもっともな意見が飛び出した。

 アリエッタは少し前から言葉の習得に積極的で、その習得方法もこれまでファナリアにはない画期的なものである。もしかしたら1年と経たずに会話出来るようになるのではと思えたのだ。実際苦労したりよく間違えたりするが、正しく伝わる頻度は徐々に多くなっている。


「アリエッタちゃんが賢くて助かるわぁ」


 アリエッタと会話が出来るようになれば、色々な意味で助かる。それは服の事だけではなく、外出した時のハチャメチャな行動の制限も出来るのだ。

 女神の力の制御という点だけでも色々な意味で凄いのだが、既にイディアゼッター、エルツァーレマイア、ドルネフィラー、そしてグレッデュセントという神々と交流したり、ファナリアやサイロバクラムの神の存在にも触れているので、女神の力を自分の為に利用しようという発想にネフテリアが至る事は無かった。悪用したら神々からツッコミがくる可能性を本能的に感じて、考えないようにしているのかもしれない。


「まぁでも、新しい服の案のストックは必要かなぁ……」

「それは助かりますね」

「その時にチラッと支店の事話してみようかな」

「いきなりどうにかなる事でもないですし、よろしいのでは?」


 服のデザインに関してはアリエッタが自主的にやっているので、なんとなく気にならないようだ。それにアリエッタがミューゼ達と暮らす生活費として稼ごうとしているような気がして、なんとなく断れないのもある。その『生活費』も、しっかりとアリエッタの将来の貯金に回されているのだが、アリエッタはその事を知らない。


「……落ち着いたら、アリエッタちゃんには当分豪遊して暮らしてもらいたいわぁ」


 出来ればあまり働かないように…と、ミューゼ達に言いたい国の王女様であった。




「え、支店? 作るんですか?」


 ミューゼに伝えるとアリエッタを抱きしめながら驚いていた。


「アリエッタちゃんを他国に移動とかしないから。それより今のうちに色々描いてもらって、数年後に全部終わったら貴女達3人働かずに遊んでてほしいのよ」

「それだと食費が稼げな──」

「いや儲けすぎだから。なんなら数年はわたくしんを別荘にしてメイド達をコキ使って暮らしてもいいから」

「えぇ……やだぁ……」

「その心底嫌そうな顔を、少しくらい隠してくれてもいいと思うんだけどなぁっ!」

「あそこは変態の巣窟なのよ」

「否定出来ないけど、パフィには言われたくない……」


 ミューゼに抱かれて動けないアリエッタのを凝視してよだれを垂らすパフィをジト目で睨みつけ、ネフテリアは精一杯の反論をした。


「ところでサイロバクラム風の服を着せたアリエッタにラーチェルの耳と尻尾つけてもらったら、理性が余裕で吹き飛んだんだけど、テリアはどう思うのよ?」

「想像しただけで危険極まりないんだけど……見てもないのに変な気分になってきたんだけど……」


 ラーチェルとはアリエッタの前世のウサギっぽい生き物である。そんな恰好になったアリエッタの、自身を見た感想は『バニーメカ少女か。パフィはこういうフェチなのかな。よし』と、何故か嬉しそうだった。

 既にアリエッタは、ミューゼとパフィが喜ぶならどんなコスプレも厭わない所まで恋心を拗らせている。

 そんな恋する乙女は今、ミューゼによって抱かれているせいで控えめな胸に顔を埋めている。その顔は真っ赤で、頑張って別の事を考えようと努力している。


(ミューゼはどんなコスプレなら喜ぶかなっ柔らかいじゃなくてもっとこう清楚な感じかなそれとも柔らかくないけどセクシーなのがいいのかなパフィは柔らかいハイレグでよさそうだけどミューゼは柔らかすぎない幸せなかわいいのがいいのかな柔らかいよう好みを調査する必要があるな柔らかく頑張らなきゃ)


 全然集中出来ていないようだ。

 そんなアリエッタの葛藤を他所に、ネフテリアは今後のフラウリージェについて話を進めた。


「今後フラウリージェに他国からの裁縫師が修行にやってくるの。いずれ母国に戻ってフラウリージェの支店を経営してもらうつもり」

「はぁ……」

「今はシャンテとアーシェが店長候補なんだけど、もしかしたら経営が得意な人材が来るかもしれないわね」

「そうなんですね」

「各国にフラウリージェを広めるけど、本店としてイニシアチブを失うわけにもいかないの。しばらくは今のまま絵を描いててほしいけど、いずれアリエッタちゃんには服の絵を描く先生になってもらいたいわ」

「? ずっとアリエッタが考えるわけじゃないのよ?」

「アリエッタちゃんがフラウリージェに就職するならそれでも良いんだけど、あまり縛り付けてもね」

「たしかになのよ。アリエッタは自由に生きてほしいのよ」


 経営は大事だが、まだ幼い女神であるアリエッタの自由を阻害する気はないネフテリア。アリエッタの善意が向けられているうちに、服のデザインに関する知識を継承しておきたいと考えている。


「そしていずれフラウリージェとエルトフェリアが広まれば、世界中が味方になってくれると思う」

「いきなり壮大ですね」

「わたくしもそう思うけど、実際これで5カ国の民意がエインデルの味方になっちゃってるのよね」


 それは文化による浸食と支配と言えるかもしれない。他国であろうと優れた物を輸出し、民衆に好かれると、文化の発信源となった国の印象は好転する。そしてそんな民衆の意思は権力で抑える事が難しい。もし強引に上から抑えつけようとすれば、民衆に不満が募り、クーデターが起こる可能性が発生する。

 さらに発信源となった国を敵対国家が武力で支配しようと動いた瞬間、その文化を好む世界中の民意(自国を含む)が敵に回る可能性が高い。つまり戦争の勝敗に関係なく、戦争を仕掛けた国が滅ぶのがほぼ確定してしまうというビジョンがネフテリアにあるのだ。


「つまり、フラウリージェが世界に認められ、守られるの」

「へー」

「頑張るといいのよ」

「興味無さすぎじゃないかなっ!」

 どんっ


 あまりの冷めた返事に、思わずテーブルを叩いてしまった。視界を柔らかく塞がれているアリエッタがビクッとした。

 王族として半ば政治をしているネフテリアに対して、ミューゼとパフィはいまいちそのイメージが出来ないので、とりあえず返事をしているだけである。

 もちろんそんな事はネフテリアにも分かっているので、とりあえずツッコミを入れただけ。


「……まぁ、いずれ来るその時の為に、もっとアリエッタちゃんとお話しして、会話出来るようにならないとね」

「それはそうですね」

「まずは一緒にお風呂はどうかな。ニオと一緒に」

「なるほど面白そうなのよ」

「なんて酷い事を……」


 その頃、フラウリージェの手伝いをしているニオは、言い知れぬ悪寒を感じていた。


「そういえばエルトフェリアにお風呂ってありましたっけ?」

「あるわよ。ちゃんと店員用の大きいのが」

「決まりなのよ」

「決行する日は先に入っててください。後でアリエッタ連れていくんで」

「っしゃあ! ミューゼとおっふろ~♪」

「あたしにはお触り禁止ですからね」

「え~」


 こうして、ファナリア中を動かしかねないフラウリージェを使った壮大な策謀と、ニオの為のドッキリ入浴計画が楽しく決まっていった。敵対軍事国家と魔王っ娘ニオの運命やいかに。

からふるシーカーズ

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