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二十話 残っていたもの
古い写真を見つけた翌日。
彼は学校から帰ると、
昨日のことをもう一度思い出していた。
机の上には、昨夜見つけた写真が置いてある。
写真の端に残っていた言葉。
――「また、ここで」。
誰が書いたのか。
いつ書いたのか。
どうして自分がこの写真を持っているのか。
何も分からない。
ただ、その文字を見ていると、
不思議と胸の奥がざわついた。
「また、ここで……」
小さく呟く。
その瞬間、ほんの一瞬だけ何かが頭をよぎった。
夕方の景色。
誰かと並んで歩いている感覚。
そして――
「またね」
そんな声。
けれど、次の瞬間には消えていた。
彼は眉を寄せた。
今のは何だったんだ。
思い出そうとすると、頭の中がぼんやりする。
無理に考えるのをやめて、写真を引き出しに戻した。
その夜。
いつもの時間にサイトを開く。
すぐにメッセージが届いた。
『今日どうだった?』
『普通』
『また普通(笑)』
『今日は本当に普通』
『そっか』
いつものやり取り。
でも、今日は彼女に聞きたいことがあった。
『昨日の話、覚えてる?』
『昔の約束のこと?』
『うん』
『思い出した?』
『少しだけ』
『ほんと?』
『うん。でも、まだ全然分からない』
『そっか』
彼女はそれ以上聞かなかった。
そのことが、彼にはありがたかった。
『写真見つけた』
『見せて』
少し迷ってから、写真を送った。
『これ?』
『うん』
彼女からしばらく返事が来ない。
『どうした?』
『なんか……』
『うん?』
『この場所、見たことある気がする』
彼は画面を見つめた。
『本当に?』
『たぶん。どこか分からないけど』
『俺も』
二人の間に、しばらく沈黙が流れた。
『不思議だね』
『うん』
彼女は写真をもう一度見た。
写っているのは、特別な場所には見えない。
でも、なぜか気になる。
『これ、いつの写真?』
『分からない』
『撮った人は?』
『それも分からない』
『じゃあ、どうして持ってるの?』
『……分からない』
彼女は少し考えた。
そして、
『大事な写真だったのかもね』
と送った。
彼は画面を見つめた。
大事な写真。
その言葉が、妙に心に残った。
『そうかもしれない』
『じゃあ、いつか思い出せるといいね』
『うん』
それから二人は、写真の話をやめた。
いつものように学校の話をした。
くだらない話をした。
笑った。
けれど、その夜はいつもと違った。
二人とも、
さっきの写真のことが頭から離れなかった。
会う日まで、あと少し。
彼女はふと思う。
もし会ったときに、この写真のことを話したら。
何か思い出すのだろうか。
そんな考えが浮かんだ。
でも、まだ言わなかった。
そして彼もまた、
引き出しの中の写真を見ながら考えていた。
自分が忘れている何か。
それは、いったい何なのか。
写真の端に残された、
「また、ここで」
という短い言葉だけが、
答えのないまま残っていた。
コメント
4件
そうなんですー! ありますよー!会えたら、、、、ですけどね? ありがとうございます! なるはやで書いてきますねー! 嬉しいです🤭
みぅです🥀 第20話、読みました。 なんか……すごく静かで、でもじわじわ重くなる感じが好きだった。 「また、ここで」っていう短い言葉が、ずっと胸に残る。 写真の持ち主も、撮った人も、約束の意味も思い出せないのに、二人だけはその写真のことを大事に感じてる……その距離感が切なくて、読んでてちょっと苦しくなった。 会う日まであと少しってところが、すごく気になる。 次、どうなっちゃうんだろう……待ってます🌙
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