「んんん?」
肩を揺さぶられて目を覚ます。徹夜続きで仕事を終わらせて、最後に時刻を確認した時は午後7時だったので、まだ朝ではないなず。久しぶりに目覚ましをかけずに寝れるというのに。
私の眠りを妨げるのは誰だ…
「あれ…?なんでいるんです?」
重たい瞼を開ければ、超くんがこちらを見下ろすようにベッドのふちに腰掛けていた。
たしかに合鍵を渡している恋人が目を覚ましているときに家にいても何の問題はないが、超くんは私の家に来るときには必ず連絡をくれていた。
スマートフォンは寝る前に溜まっていた通知に全て返信済みなので超くんから連絡がきていれば気付くはず。
「おはよう、アキラくん」
やたらとニコニコ笑っている彼に思わず顔がひきつる。あれ、なんか嫌な予感。
「んん?ん?」
伸ばそうとした腕が動かない。とりあえず超くんから離れようと足に思い切り力を入れるも、いつのまにか彼が馬乗りになっていて身動きがとれない。どうやら先手を打たれていたらしい。
「まって、待って…ください…」
「ん?なぁにアキラくん。僕から逃げようとするなんて酷いじゃん。今日は酷くして欲しいって?」
「ちがいます!!ていうかなんでそんな怒って…」
「先週末のデートのドタキャン、そして先日一緒に夜ご飯の約束もドタキャン。そして連絡してもずっと返事がこない。」
「そ、それはっ、本当に申し訳ないと思ってて…ごめんなさい…バタバタしちゃって…っ」
確かに思い当たる節が急にたくさん出てきた。せっかくの超くんからのデートのお誘いを急な仕事の打ち合わせでドタキャンしてしまったり、夜ご飯食べようって言われてたのに用事と重なってしまい行けなかったり。謝り倒して理解してくれたと思っていたけれど本当はこんなに怒ってたのか。
「泣かないでよアキラくん、別に怒ってるわけじゃないよ」
「じゃあなんで…」
両腕はベルトで固定されておりうまく動かせないし超くんの笑顔はなんだか怖い。身動きしてみるけど、動いちゃダメでしょと超くんに掴まれる。
「怒ってないけど、僕だって恋人に蔑ろにされたら寂しくなっちゃうよね。だからさ」
もっと構ってよ、?
「ひゃあ…っうっ、」
大好きな低音ボイスで囁かれて、思わず変な声が出た。そしてするり、と首筋を撫でられる。
「ちょ、っ……」
「やっと可愛い顔になったじゃん」
前髪をそっとかきあげられて、ちゅっとおでこにキスが落とされる。いつもなら可愛くない、なんて反論するところだが極上の笑みを浮かべた超くんに見つめられると言葉が出ない。
「や、やさしく…」
「それはアキラくん次第でしょ」
どちらにせよ、縛られているので超くんのなすがままにされるしかない。私は諦めて超くんに全てを委ねた。