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「私、ここで育ったんですよ」
そう話すシオン
写真ではなく、位置情報を教えられ少し疑問に思いつつもシオンの方を振り向く
「ッ……ゔ…」
「シオン?」
そこにはどこか首を押え苦しそうにするシオンがて心配になり近寄るが「大丈夫」というようにカラスバの顔の前に手を出し話を続け出す
「っ、ゲホッ…そこでは…優秀な殺し屋を造ってるんです。
毒が効かない人間や、身体能力が高い人間……けどその薬に適応できなければ死ぬ。
まぁ実験ですよね。完璧な殺し屋を造るための」
「は?お前…なに、言って…」
そんな人道に外れた組織が今の世の中にいるはずが無いし、見つからないはずがない
信じ難い言葉をいつもの軽い口調で話すシオンに困惑するカラスバ
しかしそんなカラスバの事は気にかけず、話を進めるシオン
「今もここでは私達の兄弟が生まれては死んで…殺し屋にする為に色んな実験が施されてる
…だから可愛い彼女からのお願い、ここの施設ぶち壊してくれませんか?」
そう言ってシオンは笑う
しかし次の瞬間「ゔ、ゴホッ!!」と激しく咳き込んだかと思えば口から赤黒い血を吐く
「シオ、ン………」
「ゲホッ!ゴホッ!!…ハッ…、ハァッ…ダメ、まだ……」
「シオン!!」
弱々しく呟いた瞬間、カラスバを掴んでいた手が解けよろよろと苦しそうに後ろへ倒れ込みそうになるが、それに気づき我に返ったカラスバが慌ててシオンを抱き上げる
「シオン!!しっかりせぇ!!」
「はァ、はッ…カラスバさ…」
「毒か…!?」
ジワジワ苦しんでいる表情からして何かの毒か
カラスバは常備している強めの解毒剤を手に持ち、それをシオンに刺す
しかしシオンの顔色は変わらず、それどころか段々と青ざめていく
何が何だか状況が分からず困惑するカラスバに対し、苦しそうにしつつも笑顔でカラスバの胸へ手を当てるシオン
「お願い…姉弟を、助け、て…ッ…」
「阿呆!それよりまずは生きるんや!!」
シオンを抱き上げ、エイセツシティの病院へ走る
その最中段々とシオンの意識は遠くなっていく
「…幸せ、だった…」
「何が『だった』や!阿呆みたいな事言うんもいい加減にせぇ!!
これからやろ…これから、一緒に…」
こんな結末はないやろ
何もかも急すぎる、さっきまで元気に笑っていたシオンの体温が心做しが冷たくなっていくように感じる
「シオン!あと少しや!!あと少しやから!!」
「…へへっ、いい…なぁ……今…1番、愛されてる」
シオンの視界はもうボヤけてカラスバの顔が見えなかった
耳も、段々遠くなる。死が近づいてきてるのだと分かる。
「───ン!───院着い─!!──シオン!!──てくな!────オレを、置いてくな!!」
病院についたのだろうか、周りがなにか騒がしいような気がする
カラスバの悲痛な声が聞こえる
その瞬間、カラスバとの思い出やポケモン達と過ごした日々が蘇る
「(まだまだ、これからなのに)」
ずっと前にこうすることは決めていたのに、今更そう心の中で思ってしまう自分がいた
好きな人と色んな所に言って、色んな景色を自由に見ていく
普通の女の子の暮らしをしてみたかった
けど、自分にはカラスバさんを殺す事も施設の皆やアザミを見殺しにする事も出来なかった
そもそも自分は普通の女の子ではなかった
「(嗚呼、よく生きた…)」
ミアレシティに降り立ってからは、幸せな1年だった
桜に夏の青空、秋の紅葉、そして冬の雪
雪なんかは好きな人と見ることが出来た、少しだけだけど恋人のようなことが出来た
それだけでもう十分に自由に生きれた気がする
そう思い込みたい、そう思わないと辛くなる
弱音を、吐いてしまいそうになる
ああ、これからなのに
もっと色んな景色を見たいのに
アザミ達ともいろんな所へ遊びに行きたい
カラスバさんと一緒に色んなことをしたい
もっと愛されたい、愛して欲しい
やっぱり、私以外の女の人の事なんか好きにならないで欲しい
死んでもずっと想い続けて欲しい
私を忘れないでずっと想って欲しい、
1番に愛して欲しい
「………死に、たくない…なぁ…」