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「………死に、たくない…なぁ…」
か細い声で微かに呟いたが、確かに聞こえたシオンの最期の言葉
緊急手術室に連れて行かれる、シオンがボソッと呟いた言葉
「…ッ、クソ!!」
病院の壁を叩く
ものに当たっても意味は無いのに、何かに当たらないと気がすまなかった
────ミアレシティ
あれからシオンは解毒剤のお陰か一命を取り留めたものの、目を覚まさずただ小さく浅い息を繰り返すだけの植物人間になってしまった
医者からは目覚める確率は低いと告げられた
「………すー…………すー……」
しかしまだ息をしているだけマシということだろうか。
「………カラスバ様」
「分かっとる」
あの日から何時間も飲まず食わずでここにいるオレを気にかけているのだろう
少し悲しそうな顔をしたジプソがカラスバに声をかける
「…可愛い彼女のお願い、聞いたらんとな」
そう言って寝ているシオンの髪を少し直した後立ち上がり、ジプソと共に病室を後にした
───コウジンタウン
「ジプソ、ここであっとるんやろうな。」
「はい、ここで頂いた情報の者が働いてるとお聞きしております」
「そ、ほな行こか」
そう言ってブティック店に入る
「いらっしゃい…ま、ませ〜!!」
ブティック店に入ると若い女性の定員がカラスバ達に近寄る
しかしどう見てもそのスジそうな2人に恐怖し若干笑顔が引き攣っている
「ここにこの女働いとるやろ?」
「えっ!?あ、ミアちゃん…?ちょ、ちょっと待っててくださいね!!」
シオンから送られた妹の写真を定員に見せる
すると定員は慌てて裏に行き、ミアを呼ぶ
すると「は〜い!!」という元気な声と共にミアが現れるがカラスバを見た瞬間目を見開き固まる
「すまんけど、今席外せる?」
「…すみません先輩〜!ちょっと今日早退させて頂いていいですか?」
「もももも勿論よ!!」
こんな場面を見てダメなんて言えるはずないだろう、女の定員は頷くとミアは申し訳なさそうに謝ったあと裏に行く
「営業中にすまんかったわ。」
「あ!い、いえ!またお越しください〜!!」
そう言われ、そのまま店の裏へ行きミアを待っていると先程のキャピキャピした笑顔はどこへ行ったのか、据わった目をした無愛想な女がカラスバ達を睨んでいた
「なんや、その様子やとオレらの事も知っとるようやな」
「……なんの用。」
「コレ、お前やったらよう分かるんやない?」
そう言ってミア……いやアザミの前にシオンが首につけていた黒色の半分に別れた装置を見せつけるように投げるとその瞬間アザミの顔が青ざめる
「なん、で…これ…取れて………」
「これが取れる条件、お前やったらよう分かっとるやろ。」
「姉さん、は…姉さんに何したの!!」
「カラスバ様!!」
そう言って服からナイフを出したかと思えば一瞬で間合いを詰めカラスバにナイフを向けるアザミ
「…アイツが自らやったんや。」
「そんなの信じるわけないでしょ!?どうせアンタが拷問かなんかして───」
「好きな女に…そない事できるわけないやろ」
顔を歪め、辛そうに絞り出した声を出すカラスバを見て目を大きく見開いたあとナイフを持っていた手を力なく下ろす
「これから仇討ちに行くさかい。お前は暫くサビ組で保護させて貰うで。」
「どういうこと…?」
「お前に傷1つあったら、シオンが悲しむやろ」
そんなカラスバの言葉に口を噛み締め「どういう、こと…」と呟いた
「(やっぱこの装置に毒を仕込まれていたか。施設の情報を話した瞬間に毒が入るように仕組まれていたんやろな)」
装置を見ると内側に小さな針が出ている
この針がシオンの自由を奪っていたのか
『──触らないでッ!!』
パーティへ潜入調査した際、ユカリに装置を引っ張られ取り乱していたのはそういう事かと理解し、ため息を着く
「…普通なら即死なはずなんだけど…」
「下手な事喋らん方がええ。お前のそれも何がトリガーかわからんのやから」
その言葉にアザミがグッと唇を紡ぐがその表情は葛藤しているように見える
きっと情報を伝えたいが、死ぬ度胸はないと言ったところだろうか
「(まあ、それが普通やろな)」
誰でも死は怖いもんや。
やけどアイツは自分の命より周りの命を優先した
「はぁ……」
いつから、覚悟が決まっていたのか。
あの日か?いやそれともあの日?
何度後悔しても遅い
しかしもっと早くに気づいていればと悔やんでも悔やみきれない
「………姉さん、姉さん……」
ミアレに戻りシオンの病室へ案内すると、アザミが反応しないシオンの手を強く握り何度も何度も名前を呼ぶ
「しばらくの間、コイツのこと頼んだわ」
そんな様子のアザミに声をかけるとアザミは小さく頷く
それを見届け病室を出ようとした瞬間、ボソッとアザミが呟く
「──(あの人達は)特段強い訳じゃないから、一気に行ったらいいと思うよ。あと、赤髪の子には気をつけて」
「…おおきに。」
「………ごめんなさい。ありがとう」
そう呟いた声は震えていた
カラスバ達が居なくなった部屋でアザミはシオンの手を握りながら話しかける
「姉さん、もうあの時には計画立ててたの?」
あの日、あの人を殺してしまった罪悪感から姉に当たってしまったあの日
『──冬までには絶対終わらすから』
『来年には自由だから』
その言葉の意味が今なら理解できる
あの施設は私達が外に出た人間しか場所を外に伝える方法は無い
けれど伝えれば、首の装置が起動し話す事もなくあの人達お手製の強い毒により死に至る
今まで私達の前に5人外に出されたが誰も戻ってこなかったから、きっと失敗したのだろう
多分最初は姉さんもあの人を殺すつもりだっただろう。
けど情を持ってしまった、よりにも寄って1番厄介な感情をあの人に抱いてしまった
だから、この選択肢をしたのだろう
カラスバを信じて、カラスバの技量とサビ組という組織を信じ自分を犠牲にして施設の居場所を明かしたのだろう
自分にはサビ組やカラスバがあの施設を潰せる程の能力をもっているか分からない
けどあの人達自体に何か特段強い能力がある訳では無いし、下手をうたない限り一気に攻め込めば確実に潰せるだろう
「(でも…私はこのままでいいの?)」
姉さんは自分の命を犠牲にして私達を助けようとしてくれた
カラスバやサビ組は危険を顧みず、言えば何の得もないはずなのにあそこへ向かって行った
それなのに私は何もしなくていいの?
『自由に生きなさいアザミ。
君がすることは君が生きる事で必要な事で何も悪くない。殺すも殺さないも君の自由。
君の人生なんじゃから、自由に決めたらいい』
「───ダメ、私も…やらなきゃ」
あの人の言葉を思い出しシオンの手を握ったあと、アザミも走って病室を後にした