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井野匠
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#すとぷり
るぃ@BL好き 🎀♡
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「ほうほう、解任のための選挙とは。 これはまた面白いことを考えたのう」
「認識違いが起きないように注釈させてもらいますけど、選挙に勝ったからってオレが生徒会長に成り代わろうってわけではないです。 ただ、一条は独善的でやり過ぎています。 会長の座を任せられない。 オレが勝ったら、これから先の日継高生徒の学生生活、来年度以降の新入生たちを迎える規則整備のために一条を解任するだけの選挙です」
「ほほ……、上手い言い方をしよる。 まるで小さな政治家じゃなあ」
計画を聞いた校長は、終始笑顔で頷いていた。
この計画には先生らの力添えが必要不可欠だ。
ここで「そんなことが許されるわけないだろう」と跳ね除けられてしまっては早々に詰みだったわけだが……、
「応援しよう。 生徒が自ら考え、壱から描いた画を動かしたいとこうして言っているのを、否定するのは勿体がないというものじゃ。 選挙活動期間を決めなさい、それまでは退学の処理が進まないようにしてあげよう。 それに選挙活動に必要なものはわしから口利きしておくからの、好きに使いなさい」
と、かなりアッサリと許諾を獲得したのだった。
こうしてオレは、選挙活動をすることになった。
生徒会長の座を継続しようとする一条VS一条を解任させたい勢力、その代表としてオレが出る。
全校生徒を対象に投票をおこない、過半数票を獲得したサイドの思想が押し通る。
生徒会長の座は一条にとって最大の武器だ。風紀委員というサイドアームがありはするが、矢張り会長ほどのビッグネームではない。
そんな称号を剥奪しようとしているのだ、一条は全力を以て抵抗してくるだろう。
どこまで抗えるのかはわからない。
勝機も濃いとは言い難いだろう。
だが……、実のところオレの狙いは選挙で勝つことじゃない。 校長たち教師陣にこの意思をアピールすることが目的だ。
ここまでの大事を起こせば、少なくとも反一条派から声があがる。
例えそれが誰かを引きずり降ろそうとする暗い”熱”だとしても、自主性と自由意思を大切にする日継高校で、それは評価に値するものと捉えられるはずだ。
その”熱”を起こした発火剤たるオレは、特に注目される。
そこで、情状酌量の余地を願うのだ。
だからオレにとっては、勝利も敗北も、当選も落選も問題ではない。 今回の件が大きく波及すればするほど有利、上手く立ち回って一条を解任まで追い込めたら更に確実な勝利へ近づくっていう努力目標なのだ。
校長を通したことで解任選挙の開催が決まり、準備期間が始まった。
勝敗がメインの狙いではないとはいえ、”熱”を増強させるためには体裁が必要だ。
それなりにできる限りの準備は揃える必要がある。
選挙活動の準備、といえば……。
まずは認知してもらうための校内ポスターだろうか。
―――――――――――――――――――――
「……で、私を頼りに来たわけかよ」
「選挙ポスターを描いてくれねえか? オリジナルは一枚だけでいい、あとはコピーして量産したのを貼りまくるからさ」
「どうして私が……」
「いいだろ、絵に関しちゃお前以外に頼れる奴がいないんだ。 ってか、オレが他の奴に頼んだらどうせ、何だこの絵は!ってまた大騒ぎするだろ」
「まるで私が苦情屋のような事を言うなよな。 ……はぁ。 仕方がないな、受けよう。 ただし描くのは絵だけだ、記載する文章は君が決めて、君が書け。 解任選挙をするにも、ポスターを作るにも、運動には理由が要る。 どれだけ良いイラストを描こうと、中身がゴミ屑では意味が無い。 作品が汚れる。 私を利用するんだ、相応の責任と覚悟くらい背負ってもらおうか」
「スローガンか……、そういうのやったことねえけど、分かったやってみる」
「気安く言っているけど、何か勘違いしていないか? これは不信任案の投票で、普通の選挙のそれとは勝手が違うものだよ? 煌と一条の投票決戦ではあるが、どちらかを生徒会長に就任させるための人選びの会ではない。 つまりは、ポスターを用意すること自体すら、本当は少しズレた行動だと言いたいんだ」
「まあ、そうなんだが……」
確かに……、オレは選挙と投票を少し混同視するような活動をしようとしている。
しかし、それはただの勘違いな行動ではない。ある程度の計算が組まれている。
ポスターというのは選挙に出ている党首などがポストに選ばれるために、知名度促進を狙って発行するものだ。
その点、今回オレ達が作るポスターは選挙があること自体を周知してもらうための宣伝施策としての側面が強い。
人を集め、急遽開催かつ非強制のイベントに足を運んでもらわなければならないので、宣伝は当然に必要となってくるのだ。
そう、人ではなく、イベント開催を知らせるための興行的な広告。
どうして解任投票ではなく選挙的なアクションをするのかって点についても、同様の理由があった。
「勝つには”旗”が必要なんだ。 オレがやろうとしてんのは一条の生徒会長権限存続or退任っつー、一見したらややこしいもんだ。 突き詰めれば、一条を信じて今の生徒会体制を続けるか?それとも辞めさせるべきか?ってだけの問いなんだが、相手には一条という頭がいるのに対して、アンチ勢力には代表がいない。 これじゃあ一条に対してどんなヤツらが対立組織として立ち上がってんのか、分かり辛えだろ? 不鮮明なものには興味も湧きずらいし、わざわざ票を入れたいとは思わねえのが普通だ。 選挙なんて堅苦しいもの高校生が興味あるとも思えねえし、少しでも小難しさを植え付けちまったら思考放棄、興味離脱されちまう。 でもこれが、オレと一条のどちらが生徒会長に相応しいか?っていう、orじゃなくてVSの構造なら……、途端に分かりやすくなる。 その方がずっと投票に参加しやすくなるはずだ。 だから……、選挙的なフローと手法を取ることで、少しでもこのVSの体系に近づけて見せることで、投票を周知しやすく、参加しやすくさせてえんだ。 そのために……、本気で生徒会長って座を襲名する気はねえが、オレは”旗”になる。 一条VSオレって明瞭な対立構造に仕上げるために、代表を名乗るつもりだ。 ……学内不信任投票なんてビッグインパクトな大事を企ててんだ。 やるなら徹底的に印象に残さねーと、意味ねえからな」
「……君ってやつは、本当に、どうしてそんなにも変な方向にばかり思い切りがいいのか。 友達や妹、自分以外の者が絡むとすぐおかしくなってしまうね。 私では考えられないな、面倒事の頭目に、しかも自らなんて……」
まあいい、と仕切られ、
「ポスターを用意したい理由は分かった。 そうなると他にも選挙的な準備が必要になるわけだけど、目処は立っているのかい?」
「ああ、色んなやつに声掛けて協力してもらってる。 上手くいくかはまだ分かんねえけどな」
―――――――――――――――――――――
「選挙活動〜!?😮 お手伝いって言われても、あたし選挙とか行ったことなくて……、何をお手伝いすればいいのかサッパリぴーまんですよ……😇」
「朝ちょっと早めに登校して、一緒に校門で挨拶しながらビラ配ってほしいんだ。 ほら、六道さんって色んな女子グループと仲良いだろ? オレ転入してきたばっかだからまだ知り合い少なくてさ、女子は特に!」
「そゆことね、まるまる把握! 私のこと頼ってくれるなんて嬉しーし、なーんか細かいこと分かんないけど早起き頑張っちゃうよ!」
と、ビジュアル的に目を惹きやすく友達も多いであろう六道さんにビラ配りをお願いしたり、
―――――――――――――――――――――
「ほう、神無月君が選挙に立候補を」
「いや、厳密には違うんだが……、まあ似たようなもんだ。 それで、演説のために台本を用意する必要があってさ、オレはそういう論理的な言葉選びとか上手く出来なくてよ。 でも伊神なら良いアドバイスくれそうだな、って思って声掛けたんだ」
「成程、面白い行動だね。 自発的に企画したこともあって、教師陣への良い印象点稼ぎになる……、これはビハインドを取ってしまったな」
「ビハ……? よく分かんねえけど、もし協力してくれるなら、協力者の一員としてちゃんと伊神の名前は出す。 比較的に低い労力で先生の目に留められるチャンスのはずだ」
「それだ! それだよ神無月君」
「えっ? それ、って……、何のことだ?」
「プレゼンにおいて肝心な点は、発言の中にリスナーが聞き入れたいと思えるようなメリットを提示し、より強い興味を持ってもらうことだよ。 今、君がしたようにね。 それを上手くできなければ誰も演説に足を止めてはくれない。 ……そのプラン、一枚噛もう。 ローコストハイリターンで点数稼ぎに繋がりそうな美味しい話だ。 こんな一大アクションを起こすような性格の君に貸しを作れるというのも悪くない……」
と、ペラペラ小難しいことを語りながらも、伊神は協力を受諾してくれた。
―――――――――――――――――――――
その後もクラスメイトを中心に、知り合い達に次々と協力を仰いでいく中で……、どうしても広報能力の高い仲間の協力が欲しいと感じ、初対面の奴にも声を掛けてみた。
「ええっ!! そんなメチャ面白そーなビッグイベントをしようとしていたんですかニャー!? 私の知らないところで!! エーッびっくりですよ! 勿論です、勿論協力します!! いやさせてくださーい!! 代わりにね、代わりに密着取材! させてくださいね、ウハー! 楽しそー!」
「お、おう……!」
彼女はオレと野崎、妹の理紗と同様、ディオの一件でこの日継高校へ一時転入してきた生徒の一人だ。
赤いウルフカットに、大きな目にギザギザの歯……、前の学校じゃ放送部をやっていた河津一花。
確か、五連勝伝説で御山と勝人が短距離走勝負をする時の実況解説を務めていたっけか。
クラス長として他クラスや委員会と広い繋がりを持つ押金さんに声をかけた時に聞いた噂で、広報部にとんでもないやり手の新人が入ってきたってハナシですよ!とのことだったが……、実際に広報部の部員に聞いてみると、全員が必ず河津一花の名前をあげたので驚いた。
「確認したいんだが、広報部ってお昼の放送とか、イベント事の時に誘導したりする役回りなんだよな?」
「そーですね! ただ、前の放送部との違いは取り扱うメディアの多さですよっ! スクールタイムの校内放送はモチロン、校内新聞の発刊! 学校の公式ページに掲載される校外向けの活動報告書! その他モッロモッロ! うひゃーっ、報道狂いの私にとってこの仕事量はゴートゥヘヴン!! 幸せ幸せ〜!!」
報道狂いって……、自分でヤベー自称使うなよ……。
「私はですね、歴史の転換点をこの手で報道するのが憧れなんですよ! それが大きかれ、小さかれ! 神様の奇跡も悪魔の悪戯も、どんな救世もどんな天災も、発明も事件も! 聖書に書き残されるように誰かが書き残したり、言い伝えたり、報道しなければ歴史には残りません! 周知もされません! でも逆に言えば、報道すればどんな小さな出来事だって歴史に残りうる! しかも、まっーたくの無労力で報道主の私の名前とセットで人類史に足跡を残す、ってすんぽーですよ!! だから常にネタを探し続けてます……、面白そうなネタを……!」
「……えっと、まぁ、助かるよ。 校内放送とか、投票日当日の会場の案内とか、河津さんには色々と手伝ってもらいたいことがある。 そのためには密着取材だって受ける。 だから、よろしく頼む」
「一花でいいですよ一花でー! いやー、タナボタですなー! カモネギですなー! 頼まれなくても勝手に取材に押し入ってたと思いますけど、そんな面白ネタが自分から来てくれるなんてー! 腹ペコライオン達の前にシマウマさんが自分に塩ふって綺麗なお皿とナイフフォークセットにナプキンまで用意して現れてくれるようなもんですよーー!!」
「オレ、シマウマか……」
これまた濃厚な奴とお知り合いになったりと。
予想外に協力の手は広がり、少し勝算が出てきた。
なんせ急遽開催のイベントだ、二年生は修学旅行もあるし時間が切迫している。
これだけの人が助力してくれているし、間に合わなかった手をつけられなかったじゃ済まされない。
出来ることからやっていかなければ。
次のアクションは……、そうだな。
今回の投票がどんなものなのかを知ってもらうために、具体的な説明を行なうためにオープンなシチュでの記者会見でもするべきだろうか。
コメント
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読み終えました!第80話、一気に選挙活動が動き出して熱かったですね。主人公が「勝つことより“熱”を興すこと」を狙ってるのがすごく彼らしい。ポスターをイベント告知として割り切る戦略も、対立構造をわかりやすく見せるための“旗”になる覚悟も納得です。六道さんや伊神、河津さんら個性派が次々に協力してくる流れも楽しくて、これからどう盛り上がるのかワクワクしました!