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井野匠
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#すとぷり
るぃ@BL好き 🎀♡
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……記者会見、という表現をしたのには理由がある。
オレに協力してくれる人達に向けて、今回の投票会について納得の説明をするべきだと思ったからだ。
選挙活動の一環として放課後に集会を開きます、今回の件に興味のある人はどうぞ、出入り自由で誰でもいらっしゃいと校内放送をかけてみたが――――、
オープンに参席募集をしたとはいえ、
まさか、ここまで集まるとは。
「ヒーローさん! メニメニ椅子必要だったノデ、おとなり教室からパクリしてきましたヨ!」
「任せきりで悪ぃなメレンゲ。 御山もありがとよ、助かるぜ」
「メレンゲは設営の現場監督をしていただけで何もしてない。 真に褒められるべきは僕だけだと思う」
「エエー! ホワイどうしてデス、シュージロ!ワタシ、頑張って右ー! 左ー! 言いマシタヨ!?」
「はぁ、もう、いいや。 にしてもさ、よくこんな人集まったね。 もっと大きい教室借りた方が良かったんじゃない?」
「あぁ、驚きだよ……」
集まっても二十に満たないくらいだと思っていた。
まだまだ活動し始めたばかりで宣伝は足りていないし、校門でのビラ配りは昨日が初日だった。
それで……、今この場に集まってるのは六十近く、それ以上だ。
当然に椅子は足りず、後ろの方で立ち聞きする者までいるくらいだ。
「えっと……、今日は集まってくれてありがとう、皆」
オレの恐る恐るした挨拶を聞いた教室が、ゆっくりと静まり返っていく。
一人一人の顔を見ていくと、見知った顔もいれば、恐らく野次馬的な興味本位で寄ってきたであろう見知らぬ顔もいる。
ひとつ確かなことは……、彼らは何かの間違いでここにいるわけじゃない。
オレの声掛けで集結し……、オレの話を聞きに来ているということが、その目線から、しっかりと、分かった。
「今日この集会を開いたのは、皆にオレがやろうとしてることを知ってもらうためなんだ。 ……オレは、生徒会長の一条大亞を解任させたいって思ってる。 そのために、学校中を巻き込んだ大規模な投票会を開くつもりだ。……ってことは知ってるか。 知ってるから、集まってくれたんだもんな」
投票に影響を出さぬよう、あまり弱々しそうなところは見せたくないが……、これは緊張せざるを得ない。
ディオと体育館の舞台上に立った時は客席が暗くって一人一人を認識しきれなかったからそこまで何も感じなかったが、こうして自分に注目が集中していることが明らかな場面では、狙っていてもリラックスなどできない。
どこにでもいる普通の学生が、そんな人の前に立てるような肝座ってるわけがねえんだ。
「……皆の中に、今の生徒会長に不満を持ってる奴はいないか? ちっちゃい事でもいい、皆のエピソードとか考えを聞かせて欲しい。 ……流星、頼めるか?」
「おう! ヨッ……、こらせっと! オイス、みんなー! 俺ちゃん一条と中学の頃からの同級生なんだけどサ。 あいつスゲー真面目で、正義感強くてよ。 生徒会長に立候補したって聞いた時も、あいつが!?ってはならなかった。 まぁあいつなら向いてるなってくらいに思ってたんだ。 でも今は……、あいつを止めてやりてえって思ってる。 あいつは正しいことをしてるつもりなんだろうけど、ちょっとやり過ぎてる。 あんまさ、あいつらしくねーのよ。 もうこの集会に来てる皆は話を聞いて来てると思うけどサ、さっき配布したプリントにもある通り、煌っちは一条に退学させられそうになってんのよ。 しかも冤罪で! これは流石にありえなくね?」
集まった全員にまでは行き届いていないが、集会に訪れた生徒らには先着順でプリントを配布していた。
内容はオレの退学の件を中心にした、一条の権力乱用をまとめたものだ。
「あいつ生徒会長だし、風紀委員長だからさ! 悪即斬って感じなの理解は出来るよ? そーゆーの出来んの、スゲーとも思う。 でもやり方がわりーよ、これじゃ敵作っちまう。……それにヤベーのは煌っちの件だけじゃないよな? 皆もいくつか思い当たるとこあるっしょ? 最近の頭髪検査の厳しさ!! 遅刻者への待遇!! 生徒指導票とかいう訳わかんねーイエローカード! もちろん悪いことしてんのはこっちだけどよ、最近は厳しすぎだぜ? なぁ!?」
流星の問いに、教室に集まった面々が一斉に首を縦に振り始めた。
「やっぱそうだよなぁ! 最近の一条はルールルールって規則ばっか新設しやがんだ。 それじゃ不満が出るに決まってんだろ? その一番悪い例が煌の件だ! そうだろ?」
「ああ……、今回この解任投票を企画するにあたって、クラスメイトや知り合いに一条についての評判を聴いて回ったんだが……、あんまり良いものじゃなかった。 不満は人それぞれ、部費の申請基準が厳しくなったとか、校則が増えたって報告する度に全体集会が長くなってウザイとか、ホント、色々だ」
誰も疑問を呈するような顔をしない。
聞いてる皆も、報告に挙がった内容に共感しているようだ。
「一条が生徒会長になってまだ五ヶ月だろ? オレは転入生だから、あいつの働きっぷりを見たのはまだ二週間ちょいくらいしかないけどさ。 そんなオレでも分かるぜ、もともと自由度高かった高校で急にあんな風に縛り始めたら、反発が起きんのは目に見えてんだろ。 それでも今まで大きく反抗勢力ってのが出てこなかったのは……、みんな怖かったからだろ?」
選挙期間中に起きた対抗馬の不自然な連続辞退。
一条の副生徒会長就任時に起きた、当時の生徒会長の唐突な辞職。
アイツを中心に起きている、まるで一条が権力を得られるように働く物事の数々。
普通に考えれば……、まさかそんなって雲を払いながらも、誰だって同じ可能性を頭に過ぎらせるだろう。
一条が裏で画を描いていたのではないか、と。
「オレはこのまま何もアクション起こさなきゃあ退学だ。 ウソみてえな話だが……、一条は本気らしい。 こうなっちまったからには、もう後がねえ。 でもな、後がねえってことは、失うもんがねえ。 何も怖くはねえってことだ。 オレは一条と戦う。 あいつを解任させれば退学免除も、皆が煩わしいって思ってる柵も元に戻る。 だから……、皆の力を貸してくれないか? 今週末、多目的ホールで投票会をやる予定だ。 一人一票、オレか一条に投票してくれ。 オレに票が集まれば一条政権は解体。 あいつに票が集まれば現状維持だ。 ……えと、なにか質問あるか?」
リスナー達は隣の生徒とヒソヒソ話をするだけで、一人として挙手をしたり、立ち上がって声をあげることはなかった。
日本人らしいっつーか、なんというか。
まあこんな雑な鼓舞で急にやる気出して意見し始めたら、もうずっと前に反発してるよなあそりゃあ。
「……この集会はオレの考えを皆に知ってもらいたいってことで開いたのは勿論そうなんだが、皆がどう考えてんのか認識を擦り合わせるためのものでもあるんだ。 投票まで時間もねえし、気になることは何でも聞いて欲しい。 答えられるもんはなんでも答える」
「では質問だが、この学校に己の代わりになれるものはいるのか?」
それは、ハッキリと強い語気の一声だった。
教室の前扉から登場したのは白い学ランに身を包む男……、一条大亞。
今の今まで話題に挙がっていた敵将の登場に、教室中が一瞬にして静まり返ってしまった。
「当校は過大規模校とまではいかないにせよ、かなりの生徒数を抱えている。 その数、実に666人。 それだけの人数がいれば、中には己のやり方を非難する者が出てくるのも必然だろう。 しかし、己は断言できる。 666人の中に一条大亞の代替えとなる人材は一人もいない。 君たちを見下してるつもりはない、しかし己ほどの終始一貫した正義心を持つ者を……、少なくとも己は知らない。 その証拠に、己を解任させようと働く神無月君の話にも、この被害者アピール資料にも、己が降りたあとに代わる者についての記述がない。 案がない。 思い当たらない。 ……そう、代わりなどいないのだ」
教室に集まっていたリスナーの大多数が、一条と目が合わないように前の者の陰に顔を隠したり、神無月派だと目くじらを立てられたくない野次馬たちがこそこそと退室していく。
「己は正当な手順を踏み、生徒会長になった。 他生徒たちから票を集め、栄えあるこの座に選ばれたのだ。 つまり、己を選んだのは君たちだ。 君たち本人が選んだのだ。 そんな己よりも正しい者が、今この場にいるか? ……いいか諸君、己はポッと出の転校生の方が起こした少数派閥なんぞには屈しない。 正義は多数派にある。 ここで宣言しておこう、己はこの選挙で九割以上の支持票を得て勝利すると。 ……それでは、当日を楽しみにしている」
自身は潔白であると。
不足でも過剰でもなく、一条大亞の行動の全ては生徒会長として真に正しいのだと。
振舞が、語気が、姿勢が、思想が、一条の持つ溢れかえる程の圧倒的な自信を物語っていた。
「神無月煌。 まさかお前がここまでするとは思っていなかった。 正直に言おう、見くびっていたと。 しかし、正常な規範意識のない行動は支持されるべきではないということを今回の投票で教えてやる」
「……その正常ってやつはお前が決めるもんじゃねえよ、一条」
「そうだ。 それを決めるのは多数決だ。 違和感も善悪も、全ては多数決が決めるだろう。 ……そういえば、お前とこうして面と向かって論議するのは初めてだな。 集会が終わったら生徒会室へ来るといい、投票に向けていくつか準備が必要だろう。 当日の流れについても握っておきたい。 敵だからといって、何もかも断交してしまっては物事が進まんだろう? では、後ほどまた会おう」
そう言い残し、教室から颯爽と退室していった。
生徒会室で話し合い。
普通に会話だけでハイおしまいってことにはならないだろうな。
奴がその気になれば……、オレも奴が潰したと思われる元生徒会長や他立候補者のように、なにかされるかもしれない。
しかもこいつは、『支配者』疑惑の最有力候補だ。そんな奴とタイマンで顔合わせってんだから恐ろしい。
兎に角、何が起きるかわからない危機感を常に持って望むしかない……。
「一条……、何を狙ってやがる……?」
―――――――――――――――――――――
「……見つけた」
Aクラス職員フロアの一室。
湾曲したモニターに食らいつくロゴスは、文字化けの海の中に埋もれていた座標数値を発見していた。
数値をそのまま地図閲覧アプリケーションに入力し、航空写真で地点を確認する。
画面に現れたのは、画質の悪い街外れの廃教会。
航空写真でも分かる程に屋根が穴空きで、誰かが出入りしているとは思えない。
しかし逆手に取れば……、テロリスト達の溜まり場としては優秀なロケーションとも言える。
「……ここでEXEと呼ばれている指導者が、構成員の願いを叶える儀式をしている。 間違いない、私の『墓荒らし』には如何なる者の記憶も嘘をつくことはできない……」
座標地点を示した地図のスクリーンショットを保存し、周辺地域へのアクセスを調べ始める。
「ここを押さえれば、EXEを確保できる。 奴の願いを叶える力の正体も判明する……。 願いを……、叶える……、力…………」
その後、フロアが消灯されてもまだ、ロゴスは『墓荒らし』の内容と睨めっこを続けた。
部屋の明かりと縦長の人型シルエットだけが、廊下に伸びていた。
コメント
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わあ、第81話読みました…!神無月くんが開いた集会、想像以上に人が集まっていてドキドキしました。流星くんの呼びかけで会場の空気が一気に「自分たちも思ってた!」っていう共感の輪になったのが印象的です。そこに一条さんが颯爽と現れて「代わりはいるのか」って言い放つシーン、痺れました…彼なりの正義と覚悟がにじみ出ていて、敵ながらカッコいい。でも周りの子たちが気圧されて退室していく描写が切なかったです。そして最後のロゴスのシークエンス、EXEの拠点を突き止めた…?次の展開が気になります!