🖤💚　自己犠牲からの脱却

阿部ちゃんは夏でもあまり肌を見せない。

寒がりだと本人は言うし、エアコンもきいているからそういうものなのかなと思っていた。

その日は、特別暑かった。

スタジオでエアコンをかけて練習していても汗が流れる。

メンバーがどんどん薄着になっていく中、阿部ちゃんは相変わらずオーバーサイズのロンT。袖をまくる事もしない。

途中で岩本くんが阿部ちゃんに声をかけた。

ちょっと顔色が悪いらしい。

阿部ちゃんは

💚「実は朝からちょっと調子おかしかったんだ。あっちで少し休んでもいい？」

と言い、岩本くんも

💛「戻れそうならでいい、無理するなよ」

と返していた。

こうしてスタジオの隅に座る阿部ちゃんと、練習を再開する俺たち。

練習中は目をやる余裕はないけど、合間に見たら座っていたはずの阿部ちゃんは横になっていた。

休憩になり、阿部ちゃんの様子が気になったけど、スタッフさんが慌ただしくなって岩本くんが呼ばれたから出しゃばらないでおいた。

💛「救急車呼ぼう」

突然の声にスタジオは緊張が走った。スタッフさんたちはバタバタと連絡やら何やらに分担する。

俺はたまらず阿部ちゃんのもとへ駆け寄る。

🖤「…なんで？」

あんなに激しいダンスをしながら長袖で汗ひとつかいていなかった阿部ちゃんが、服が張り付くほど大量の汗を流しながら寝ていた。

後から聞いたら、失神していたらしい。