テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
481
52
16
「ピピィ! ピピピィ!!(神くん、起きてください! 学校始まっちゃいます!)」 社会科準備室の窓辺で、朝日を浴びて鳴いているのは一羽の小鳥——山崎 葵だ。 昨夜の雨で鳥になった彼女は、まだ人間に戻れずにいた。
「……うるせぇ。鳥なら鳥らしく、そこら辺の虫でも食ってろ……」 ソファで気だるげに身を起こしたのは、我らがリーダー、神くん。 彼は寝起きの悪い手つきで、制服のポケットを探る。だが、そこにあるはずの「命の源(煙草)」が、一箱丸ごと空になっていた。
「……最悪だ。禁煙で死ぬか、孤独で消えるか、どっちが先か選ばなきゃならねーらしい」 神くんの顔色が、いつにも増して青ざめていく。
その時、準備室の姿見がふわりと光り、一人の美しい青年が歩み出てきた。 陸番・玲亜。手にはアンティークな霧吹きと、ハサミを持っている。
「おはようございます、神様。おやおや、今朝はひどい顔色ですね。それに葵さん……あら、可愛い小鳥さん。羽が少し乱れていますよ」 玲亜は優しく微笑み、小鳥の葵をそっと手のひらに乗せた。 「『皮を剥ぐ鏡』の私に、その乱れた羽を整えさせてください。……大丈夫、痛くはありませんよ。本当のあなたを、もっと美しくしてあげるだけですから」
玲亜が霧吹きで「お湯」を葵に一吹きすると、魔法のように羽が溶け、葵は元の制服姿に戻った。
玲亜が葵を人間に戻した直後、学校中に異変が起きる。 「きゃあああ! 私の顔が!!」 廊下から悲鳴が上がる。見ると、鏡を見た生徒たちの「顔」が、のっぺらぼうのように消えていくではないか。
「……玲亜、お前の噂が暴走してるぞ。何をした」 神くんが鋭い視線を向ける。だが、玲亜は悲しげに首を振った。 「私ではありません。……何者かが、私の『鏡の境界』を悪用して、生徒たちの『美への嫉妬』を食らっているようです」
どうやら、玲亜の優しさに付け入る強力な外来怪異が、校内に潜り込んだらしい。
顔を奪われ混乱する生徒たち。壱番(阿良々木)や弐番(リヴァイ)は、別の境界の騒ぎで手一杯。 神くんは苛立ちを隠せない。 「……ったく。こんな時にアイツがいれば……あのアゴのラインが綺麗な、黒髪の『彼』なら、こんなゴミみたいな怪異、一瞬で喰らってくれるんだろうが……」
葵は、神くんがピンチの時ですら「カネキくん」を想ってうっとりしているのを見て、複雑な気持ちになる。 「神くん! 今はカネキ先輩より、目の前の事件です! 玲亜さんも困ってます!」
「……分かってるよ。葵、玲亜。行くぞ」 神くんは最後の一本のシケモクに火をつけようとしたが、ライターの火がつかない。 「……チッ。火がつかないなら、力でねじ伏せるだけだ。俺がリーダーだってことを、あの野良怪異どもに思い出させてやる」
神くんは葵の手を引き、玲亜を伴って、顔の消えた生徒たちが彷徨う戦場(廊下)へと足を踏み出す。
その頃、校門付近には、黒いマスクを被り、どこか寂しげな眼差しをした一人の少年——カネキが、不穏な空気を感じ取って立ち止まっていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!