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廊下を埋め尽くす「顔のない生徒たち」。その正体は、玲亜の鏡の力を奪った野良怪異の集合体だった。 神くんが重い腰を上げようとした、その時――。
――ドサッ、と重い音が響く。
一瞬だった。 数秒前まで廊下を埋め尽くしていた怪異たちが、何かに「喰われた」かのように消失している。 静まり返った廊下の中心に、一人の少年が立っていた。 白い髪、顔の半分を覆う不気味なマスク、そして背中から揺らめく赤黒い異形の触手――カネキだった。
「……見つけた。ここが、怪異の根源ですか」 カネキの冷徹な眼差しが、神くんを捉える。殺気が肌を刺す。
葵は恐怖で震え、玲亜は咄嗟に二人を庇うように前に出る。だが、神くんだけは違った。 彼は震える手で(禁煙中なので習慣で)空のポケットを叩き、鼻で笑ってみせた。
「……たくっ。どこの誰かと思えば、随分と趣味の悪いマスクをつけた『お掃除係』のお出ましだな。見てるこっちのセンスが疑われる。なぁ、カネキくん?」
心臓は「推し」の登場にバックバクだが、口から出るのは鋭い毒。それが孤独の神様の流儀だった。
カネキは眉をひそめる。 「……僕の名前を、なぜ。……あなたは、この学校の害悪ですか?」
カネキが赫子を構え、一歩踏み出す。 葵が「待ってください! 神くんは悪い人じゃ……!」と叫ぶが、神くんはそれを手で制した。
「害悪? 心外だな。俺はこのクソッタレな学校の平穏を、煙草も吸わずに守ってやってるボランティアだ。お前こそ、そんな不気味なものを振り回して、玲亜が磨いた床を汚すなよ。掃除の担当(リヴァイ)が来たら、お前、その触手ごと雑巾絞りにされるぞ」
「……口の減らない神様だ」 カネキの瞳に、少しだけ困惑の色が混ざる。
カネキの赫子が神くんの喉元で止まる。 神くんは逃げもしない。それどころか、カネキの至近距離でその顔をまじまじと見つめた。
「……相変わらず、不幸が似合いすぎる顔をしてるな。見てるだけでこっちまで胃が痛くなる。……おい葵、この不幸面に湿布でも貼ってやれ。それか玲亜、こいつのボサボサな髪をどうにかしろ。……目障りだ(訳:間近で見られて幸せすぎて死にそう)」
「ええっ!? そんな、カネキ先輩に湿布なんて……!」と慌てる葵。 「ふふ、確かに、少しトリートメントが必要かもしれませんね」とハサミを構える玲亜。
校舎の奥から、さらに巨大な怪異の気配が迫る。 カネキは神くんの毒舌に毒気を抜かれたのか、構えを少し解いた。
「……あなたのことは後でゆっくり『査定』します。今は、あの大きなのを片付けるのが先だ」
カネキが背を向け、奥へと走り出す。 その背中を見送りながら、神くんは膝の震えを隠すようにポケットに手を突っ込み、小さく呟いた。
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