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mo4民のちい
198
朝の教室は、少しだけ眠たかった。
窓から差し込む光が、机の上を白く照らしている。
詩夏は、ぼんやりと外を見ていた。
(……今日も、何も起きないといい)
そんなことを考えるようになったのは、いつからだろう。
『詩夏!おはよー!』
元気な声と一緒に琴音が席に座る。
『ねえ詩夏!昨日の筋肉痛やばくない?』
『たしかに』
『でしょー!』
笑い合う。
それだけで、少し気が楽になる。
でも——。
『おはよ〜』
少し遅れて、ちなが教室に入ってきた。
その瞬間、詩夏の胸がすっと軽くなった。
(……あ)
自分でも、はっきり分かるくらい。
(ちなさんがいる)
それだけで、「今日は大丈夫」だと思えてしまう。
昼休み。
詩夏と琴音は、ちなを挟んで机をくっつけていた。
『ねえちなちゃん!』
琴音が言う。
『今日さ、もし来たらどうする?』
『来たら?』
『ほら!悪者!』
ちなは、ストローでジュースをかき混ぜながら答える。
『いつも通りでしょ〜!』
その一言で、2人の肩から力が抜けた。
『…だよね』
詩夏が小さく息を吐く。
『ちなさんがいれば何とかなる』
ちなは、その言葉に一瞬だけ動きを止めた。
『それ、あんまり言わない方がいいよ』
『え?』
『私がいなくても2人は戦えるでしょ? 』
笑顔だった。
でも、どこか困ったような声。
琴音は首をかしげる。
『えー!でも実際そうじゃん!ちなちゃんめっちゃ頼りになるし!』
詩夏も頷いてしまう。
『安心…するんです』
正直な気持ちだった。
ちなは、何も言えなくなった。
放課後。
帰り道の途中で、空気が歪んだ。
『……来る』
詩夏が立ち止まる。
周囲の色が落ち、音が消える。
『うわ、今日は早いね』
琴音が苦笑いをする。
ちなは二人を見た。
『……行ける?』
『うん』
『大丈夫!』
即答だった。
詩夏は、氷を張る。
琴音は、火を灯す。
——でも。
『ちなさん!』
詩夏の声が先にでた。
『指示、ください!』
ちなは、はっとする。
(……あっ)
『右!』
反射的に叫ぶ。
その通りに動き、悪者は崩れた。
勝利。
いつも通り。
『よし!』
琴音が笑う。
『やっぱちなちゃんがいると違うよね!』
詩夏も無意識に言ってしまう。
『……ちなさんが居るから勝てました』
ちなは笑えなかった。
夜。
ちなは、自分の部屋で天井を見つめていた。
自分がいないと、2人が不安になる。
それは、守っているのとは違う。
(依存、させてる)
もし、ここで自分がいなくなったら。
2人は、戦えるだろうか。
答えは、分かっていた。
『……ごめんね』
誰に向けた言葉かは自分でも分からなかった。
翌朝。
詩夏は、登校途中でふと思った。
(もし、ちなさんがいなかったら)
胸が、ぎゅっと苦しくなる。
(……嫌だ)
その感情が、
危険だということに、詩夏はまだ気づいていなかった。
安心できる人
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