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7 - 第7話 ゆめのなかでしんだ

♥

9

2026年03月01日

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――冷たい。

それが、最初に感じたことだった。


『……っ』


琴音は、息ができなかった。


胸が、重い。


押しつぶされるような感覚。


目を開けると、空が見えた。


歪んだ空。


黒い影が、上から覆いかぶさってくる。


『あ、れ……』


身体が、動かない。


影が、ゆっくりと腕を振り上げる。


『ちょ、待っ……』


次の瞬間。


胸に、何かが突き刺さった。


『――――っ!!』


声にならない叫び。


熱いのに、冷たい。


視界が赤く染まっていく。


『しな……つ……』


名前を呼ぼうとして、


そこで世界が、途切れた。



『……っは!!』


琴音は、勢いよく上体を起こした。


『……はぁ、はぁ……』


自分の部屋。


天井。


いつもの景色。


夢だ。


そう思った瞬間、


胸に、ずきりと痛みが走った。


『……いたい』


手で押さえる。


もちろん、傷なんてない。


でも。


『……なんで』


涙が、勝手に出てきた。


『……なんで、泣いてんの』


理由が、分からない。


ただ、


「死んだ」


という感覚だけが、はっきり残っていた。


翌朝。


『おはよー……』


いつもより元気のない声で、琴音は教室に入った。


『……琴音?』


詩夏が、すぐに気づく。


『顔色、悪い』


『え、そう?』


琴音は無理に笑った。


『ちょっと寝不足なだけ!』


嘘だった。


詩夏は何も言わなかったが、


その目は、少し心配そうだった。


そこへ。


『おはよ〜』


ちなが、いつもの調子で入ってくる。


琴音は、その顔を見た瞬間、


なぜか胸が締めつけられた。


『……っ』


『? どうしたの、琴音』


ちなが首をかしげる。


『……いや』


琴音は視線を逸らした。


『なんか、変な夢見ただけ』


その一言で。


ちなの表情が、ほんの一瞬だけ凍った。


『……夢?』


『うん』


琴音は軽く言う。


『なんかさ〜

悪者にやられる夢』


詩夏が、はっと顔を上げた。


『……どんな』


『え?』


『……どんな夢、だったの』


琴音は少し考える。


『えーっと……』


言葉にしようとした瞬間、


頭が、ずきりと痛んだ。


『……よく、分かんない』




『胸、刺されて』


『しなつの名前呼ぼうとして』


『……終わった』


それだけ。


詩夏の背中に、冷たいものが走る。


ちなは、何も言えなかった。


(……見てる)


(前の、世界を)


その日一日、


琴音はどこか上の空だった。


授業中も、

休み時間も。


『……あ』


何度か、

『ここ、危ない』


という感覚が突然湧く。


でも理由は分からない。


『……変なの』


放課後。


3人で歩いていると、


案の定、空気が歪んだ。


『……来る』


詩夏が言う。


琴音の心臓が、跳ねた。


『……っ』


『大丈夫?』


ちなが小声で聞く。


『う、うん』


そう答えたけど、

足が、少し震えていた。


戦闘が始まる。


悪者が、琴音に向かって動いた瞬間。


『左――!!』


琴音は、考える前に叫んでいた。


次の瞬間、


そこを影が貫いた。


『……っ』


『琴音!?』


『だ、大丈夫……』


でも、本人が一番驚いていた。


『……今の』


(なんで、分かった)


ちなは、唇を噛む。


(……これ以上は)

(まずい)


戦闘は、いつも通り勝利で終わった。


でも。


『……ねえ』


帰り道、琴音がぽつりと言った。


『私さ』

『一回、死んだことある気がする』


詩夏が、立ち止まる。


『……何言って』


『分かってる、変だよね』


琴音は笑おうとした。

でも、うまく笑えなかった。


『でもさ……』


『すごく、怖かった』


ちなは、胸が痛くなるのを感じた。


『……夢だよ』


そう言うしかなかった。


『ただの、夢』


琴音は、うなずいた。


『……だよね』




その夜。


ちなはベットの上で横になってた


巻き戻すたびに、

記憶は消える。


でも。


感情は、消えない。


『……ごめん』


誰にも届かない声で、ちなは呟いた。


『でも』

『まだ、終われない』


翌朝。


詩夏は、ふと考えた。


(琴音は、夢を見た)


(ちなさんは……何も言わなかった)


胸の奥に、

小さな疑問が芽生える。


まだ、形にならない。


でも確かに、

何かがズレ始めていた。




夢の中で死んだ

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