_毒医 side
『おい、てめぇら』
「「「「はい」」」」」
『どうしたらこうなるんだよ』
オレの前に椅子を五脚並ばせ、幹部+頭領をそこに座らせる。
オレがこんなこと出来る場所は看医室しかない。
つまりここは看医室って訳だ。
幹部+頭領がほぼ全員揃って看医室に集まるってどういうことだよ。
舐めてんのか、お前ら。
『…、事情は後で聞くわ』
『甲鳥、消毒。筆走…は指示出した奴に包帯巻いてけ』
『神崎、痛み止め。ラチア、メス』
甲「はい」
筆「はい」
神「はいは〜〜い」
ラ「えっメス…???」
『……、メスは冗談』
良かったぁ、と数名が胸を撫で下ろす。
ほんとに解剖してやろうかお前たち。
免許持ってねぇけどな。
『ラチアは”あれ”持って来い』
ラ「はーい!」
“あれ”と聞いて目の前の5人が青ざめる。
…こいつらは何を想像してるんだ。
オレがそんなサイコパス医師な訳ねぇだろ。
甲「消毒の予備、なくなってきてたので取りに行ってきます」
『おう、頼んだ』
筆「茜クン、包帯巻くね」
『おう…、ってオレ茜じゃねぇわ』
茜「え??」
神「痛み止め飲む人〜」
『そんな軽いノリの薬だったか、痛み止めって』
「「「「はーい」」」」
『軽いノリだったわ』
最早コントをしている。
そんなことはどうでも良いが、こいつらの傷口から検出されている能力残穢がすべて全く同じだ。
1vs5で、しかもその5はうちの柱ばっかりで?
それで1側が勝ったとは到底思えないな。
分身の能力か?
…、だとしたら直接攻撃力が無さすぎる、勝てない。
鏡返しの能力か?
…、だとしたら5人一斉に叩けば良いだろ。
いや待て待て待て、なんで5人全員が同じ場所に居ると仮定している?
分身全員に鏡返しの能力があれば?
…まぁそれなら有り得なくはないか。
…、、、これだから考察は苦手だ。
糖分が足りなくなる。
『…終わり』
『何があったか全部。隠さず。言え』
『隠したら解剖な』
ラチアが持ってきた箱からメスを取り出し、ペン回しの如くメスを回す。
足「えとねぇ、俺の能力を使う奴が居て、普通に強くて負けた」
「でもそいつは刀使わなかったな…、あと俺と容姿は全然違ったから俺のコピー説はないと思う」
月「あたしも足立とほぼ一緒。だけど、見た目はめっちゃ似てる」
「なんなら身体能力もほぼ一緒だった…、と思う、多分」
雨「私は月ノと一緒だよ」
「身体能力…、はよく分かんないけど、ほんと見た目はそっくり」
黒「足立くんと同じかなぁ」
「でも、武器は一緒だった!見た目は違うけど」
茜「えっ!?全然誰とも違った〜!!」
「同じ能力使ってくるのはそうなんだけど、見た目何も見れなかったや」
『…ほーん…?』
『筆走、聞いてたか』
筆「聞いてたよ」
こいつ包帯巻きながらずっと話聞いてたのかよ。
彼の手の上に雑に置かれた包帯を勝手に取って、机の上に置き換える。
甲「戻りまし…、た」
空いていた椅子に腰掛け、足を組みながら考え続ける筆走の圧に
驚いたのか、甲鳥の声が段々と小さくなる。
ラ「大丈夫ですよ、組織のためのこと考えてますから!」
甲「ほんとですか…??人殺しそうな勢いですけど…」
神「あれがコツキの普通だよ」
甲「え…、」
筆「…、うん、分かった…、と思う」
数秒の間で甲鳥が引いた所で、筆走が立ち上がる。
看医室の端にあるホワイトボードを引っ張ってきて、説明しだす。
筆「まず、犯人は恐らく”僕”だ」