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ひまなつが目を覚ましたとき、朝の光が差し込んでいた。
ベッドの中、ぬくもりはちゃんと隣にある。
ぐったりと眠り込んだままのいるま。
無防備な寝顔に、ひまなつはじっと見つめたまま、ぼんやりとまばたきを繰り返す。
(……昨日の夜、手、出されるかと思った)
気づいていた。
いるまが、何度もためらっていたこと。
手を伸ばしかけて、でもやめて、深く息を吐いて……。
その度に、ひまなつの心もぎゅっとなった。
ちょっとだけ、物足りなくて。
でもそれ以上に、いるまが優しすぎて。
「……ばかだな、いるまは」
ぽつりとつぶやいて、ひまなつはそっとその頬に指を這わせた。
その指先に、目を開けたいるまの視線が重なる。
「……起きてたの?」
「……今起きたとこ」
「嘘。さっき寝言で俺の名前呼んでたぞ」
「……嘘つけ……」
少し睨むような目で見返すと、いるまはにやっと笑って、ひまなつを引き寄せた。
ぐいっと抱き込むようにして、胸元に顔をうずめる。
「なあ、なつ」
「ん」
「ほんとに手出していいのかよ」
――ドキン、と心臓が跳ねた。
ひまなつは黙ったまま、少しだけ体を動かして、いるまの顔を見つめる。
その瞳には、確かな熱が宿っていた。
「……俺、ずっと我慢してた。お前が怖がるんじゃないかって。嫌がるんじゃないかって」
「……俺が?」
「お前、痛いの嫌いだろ。怖いのも嫌いだろ。だから、ちゃんと、そういう時が来るまで待とうって……」
「……でも、」
そう言いかけたひまなつを、いるまが抱き寄せて口を塞いだ。
やさしい、でも熱を孕んだキス。
一度、二度、そして三度。
何度も、名前を呼ぶように、想いを伝えるように。
唇を離したあと、いるまが低く囁いた。
「していい』って言うまで、俺は手出さないから」
ひまなつは少し頬を染めながら、うつむき気味に言った。
「……痛いのも、怖いのも……本当は、嫌だけど」
小さな声、震える睫毛。
「でも……いるまなら、してほしいって思ってる」
その言葉に、いるまの中で何かが弾けた。
ゆっくりと、でも迷いなくひまなつの顎に指をかけ、顔を上げさせる。
「……もう知らねぇからな」
低く、喉を震わせるような声。
そして、そのまま重なる唇。
深く、熱く、そして何度も。
ひまなつは初めこそ驚いたように身を強ばらせたが、いるまの舌が優しく絡んでくるにつれ、徐々にその体から力が抜けていく。
息継ぎの合間に、耳元でささやかれる。
「嫌だったら、ちゃんと言えよ」
「……嫌じゃ、ない……」
いるまの手がひまなつの腰にまわり、ぐっと引き寄せる。
ふたりの距離がなくなるほどに近づいて、舌と唇だけで気持ちを伝え合う。
時折、ひまなつが小さく甘い吐息を漏らす。
「ん、……いる、ま……」
名前を呼ぶ声は、どこか熱に浮かされたようで、耳に触れるたびにいるまの理性が削れていく。
キスは10分も続いていた。
それでも終わる気配はない。
ひまなつはそのぬくもりに、ただただ溺れていった。
胸の奥がじんわりと熱を持ち、知らない感覚に包まれながら、ひまなつは思った。
(ああ……いるまが、こんなに優しいなんて……)
唇がやっと離れたとき、ひまなつの瞳はとろりと潤み、息は少し乱れていた。
いるまはそんなひまなつの髪を撫でながら、愛しげに微笑んだ。
「……可愛すぎて、まじやべぇ」
「ばか……」
顔を真っ赤にしながらも、ひまなつはその胸に身を預ける。
そして静かに囁いた。
「……独り占めにしていいよ」
いるまは、そっと唇を重ねなおし、まるでその言葉に応えるように深く息を吸い込んだ。
時間をかけて、ゆっくりと肌が触れ合う。
いるまの手はとても優しく、ひまなつの体を何度も確かめるように撫でて、緊張を解いていく。
だんだんと体の距離がなくなっていく中で、ひまなつはふと目を潤ませた。
不意にあふれた涙に気づいたいるまが、すぐに動きを止めた。
「……やっぱ、無理すんな。やめ――」
「……やだ」
ひまなつの声は小さく、でも強かった。
腕がぐっと、いるまの背中に回される。
「離れんな。……お願い」
その言葉に、いるまはぎゅっとひまなつを抱きしめた。
「……分かった」
再び、唇が重なる。
今度は、涙ごと包み込むようなキス。
確かめるように、何度も。
心を溶かすように、ゆっくりと。
触れるたび、ひまなつの体は少しずつその愛に応えていった。
痛みも、不安も、ぬくもりの中で薄れていく。
ぴったりと繋がったふたりは、言葉ではもう足りなかった。
ひまなつは、時折甘く息を漏らしながら、ただただいるまに身を委ねた。
薄暗い部屋の中、いるまがゆっくりと腰を動かし始める。
そのたびに、ひまなつの身体から小さな声が漏れる。
「ん……あっ……いるま、そんなに……」と、恥ずかしそうに目を伏せつつも、どこか甘えた声が混じっている。
いるまはそんなひまなつの反応を見逃さず、少し意地悪く微笑んだ。
「可愛いな、そんな声出すなよ」と、囁きながらも、その指はひまなつの背中を優しく撫でる。
ゆっくり腰を動かすいるまの手が、ひまなつの背中から首筋へと這い上がる。ひまなつはその温もりに小さく息を漏らす。
「だ、だめ……そこ……っ」と、照れ隠しのように目を逸らしつつも、指先はいるまの肩にしっかり絡んでいた。
いるまはその様子をじっと見つめ、低く甘い声で囁く。
「お前、すげぇ敏感だな」
ひまなつは顔を赤らめながらも、少しだけ口を開いた。
「……そんなの、知らない」
それでも身体は嘘をつかず、いるまの動きに合わせて小刻みに震えてしまう。
ゆっくりと腰を沈め、ひまなつの中に押し込むいるま。痛みと快感が混ざり合い、ひまなつの目に涙が浮かぶ。
「…いるま、やめないで……」
いるまは困ったように眉をひそめ、ゆっくり腰を引いた。
「お前、マジで可愛いな」
そう言いながらも、彼はそっと唇を重ね、またゆっくりと動きを繰り返す。ひまなつの声が次第に甘く、切なげに変わっていく。
「いるま……あぁっ……」
熱に溶けていくような甘い吐息が、部屋に満ちていった。
ゆっくりと体が解れ、ひまなつの呼吸も落ち着いてきた頃。いるまは少しずつ動きのペースを上げていった。
「んっ……いるまっ……!」
奥を突かれるたびに、ひまなつの身体はビクンと震え、甘く切ない喘ぎ声が漏れる。
「もう我慢できねぇか?」と、いるまは低く囁きながらも、冷静な眼差しでひまなつを見つめる。
ひまなつは顔を真っ赤に染めながら、必死に耐えるように目を閉じ、声を押し殺す。
「だ、だめ……そんな……やめて……」
けれど身体は嘘をつかず、動くたびにひまなつの中に熱が広がっていく。
いるまの指が優しく、けれど力強くひまなつの背中を撫でる。
「素直に声出せよ。お前の声、すげぇ好きだ」
ひまなつは耳まで真っ赤にして、やっと小さな声で漏らした。
「いるま……」
その名前を呼ぶ声に、いるまは胸を締め付けられるような感覚を覚えながらも、腰を動かし続けた。
いるまの動きに合わせて、ひまなつの体は震え、甘い喘ぎ声が次々と漏れていく。
「あっ…ああっ…いるまっ…だめっ、そんなに…!」
「んっ…もう、我慢できない…いやっ…ああっ…」
体の奥を突かれるたびに、ひまなつの声は高まり、涙がこぼれそうになる。
「いやぁっ…いるま、優しくしてって言ったのに…でも、こんなに気持ちいいなんて…ああっ…!」
いるまはそんなひまなつの声に少しだけ微笑みを浮かべ、ゆっくり、そして確実に腰を動かし続ける。
「ああっ、あああっ…いるまっ、好き…! もっと…もっとして…!」
その声に応えるように、いるまは強さを増していき、ふたりの熱はどんどん高まっていった。
いるまの動きが激しさを増す中、ひまなつは息を荒げて叫ぶ。
「出るっ…!」
その声とともに体が震え、ひまなつは深い快感に果てる。だが、いるまは動きを緩めることなく、スピードを維持したまま腰を動かし続ける。
果てたばかりで敏感になっているひまなつは、体をビクビクと震わせながら、再び甘く切ない喘ぎ声を漏らす。
「んっ…ああっ…いるま、もっと…!」
ひまなつはいるまに抱きつき、唇を求める。深く熱いキスが交わされると、声で快感を逃すことはできないものの、全身を満たす幸福感で胸がいっぱいになる。
「もっと、離さないで……」
そう囁きながら、ひまなつはいるまの腕の中で蕩けるように身を委ねていった。
いるまの激しい動きに何度も果て、ひまなつは蕩けきっていった。
頭の中が空っぽになり、何も考えられなくなったその表情に、いるまは恍惚とした笑みを浮かべながら、何度も優しく囁く。
「愛してる…ずっと…」
その言葉に、快感と幸福が混じり合った涙がひまなつの頬を伝う。
「んっ…ああ、いるま…気持ちいい…好き…」と、甘く喘ぎながら微笑むひまなつ。
いるまはそっとひまなつの先端を指で擦り、さらに強い快感を与える。
ひまなつは悲鳴に近い喘ぎ声を上げ、背中を思わず反らせる。
二人は同時に激しく果て、そのままひまなつは深い眠りに落ちていった。
いるまは優しく抱き寄せ、彼の温もりを感じながら静かに見守った。
___
昼下がりの柔らかな光が静かな寝室を照らす。
ひまなつはふと目を覚まし、ぼんやりと天井を見つめた。じんわりと感じる腰の重さと鈍い痛みに、昨夜の記憶がじわじわと蘇る。
「……ん……」
目を細めて小さく唸ると、隣で腕枕をしていたいるまがその気配に気づいて目を開けた。
「起きたか、なつ」
掠れた低音が耳に優しく届く。
ひまなつは少しだけ頷き、まだ眠たそうなまま、ふにゃっと微笑んだ。
「……腰、ちょっと痛いけど……」
そう言いながらも、その顔はどこか満ち足りていて、穏やかで、幸せそうだった。
いるまはその笑顔をじっと見つめたまま、無言でひまなつの髪をそっと撫でる。
そしてそのまま、体を引き寄せるようにして、ひまなつの額に軽く唇を触れさせた。
「痛ぇ思いさせたのに、そんな顔すんなよ……惚れ直すだろ」
ひまなつはその言葉に小さく笑い、いるまの胸に顔を寄せた。
「だって……いるまと一緒にいられるの、嬉しいから」
その言葉に、いるまはふっと息を吐くように笑って、もう一度、今度は唇にそっと口づけを落とした。
何も言わず、ただ優しく、長く。
言葉よりもそのキスがすべてを物語っていた。