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アリスは鼻をヒクヒクさせた
「うん?・・・・・なんか臭くない?」
「ありすぅ~~~~~!チャッカマンあったよぉ~~~」
「ありがと!アキ君 」
シューーーーーーーー・・・・
シューーーーーーーー・・・・
「さぁ!点けるわよ 」
その時バンッとキッチン横の勝手口が開き、直哉が突進してきた
「何やってるんだ!お前ら! 」
チャッカマンで火を点けようとするアリスの手を、直哉が勢いよく払い飛ばし、チャッカマンは床に転がった
そして素早くガスの元栓を締めた
明がゴホゴホむせる
「いっ・・息ができなぁ~いい・・」
「な・・・ナオ君?何をっ!うっ・・・ゴホゴホッ 」
アリスはツンとくる匂いにむせた
いっ・・・息が出来ないっ!・・・
「息を吸うな!!窓を開けろ!!」
直哉も自分の口をキッチンペーパーで押さえ、窓をバンッと勢いよく開けた、そして勝手口も玄関のドアも開けて回った
「家中の窓を開けて外に出ろ!一酸化炭素中毒になるぞ!!」
アリスもゴホゴホ、口を押えて、ヨロヨロとリビングの窓を全開にした
「くさぁ~いい・・・ 」
明もふらついていた
なぜかアリスの頭はぼぅ・・っとし、体中の力が抜け、その場にしゃがみこんでしまった。そしてその隣で明も同様座り込んだ
ぼんやりした記憶の中、二人は直哉にズルズル外に引きずり出された
直哉に家の前の芝生に転がされ、やっと意識がハッキリしてきた頃、二人は怒り狂った直哉に大目玉をくらった
「まったくプロパンガスも知らないなんて!!困ったお嬢様だ!!この家を爆破させる所だったんだぞっっ!!」
うわ~ん・・・
「ごめんなさぁ~いい・・・ 」
「ごめんなさぁ~いい・・・ 」
「俺が帰って来たからよかったものの、家の外までガス臭かったんだぞ!!どうしてあれを気づかないんだ!とんでもないな!」
怒り心頭に仁王立ちして腰に手を当てている、作業着姿の直哉の前に、二人は抱き合って正座していた
こうなったのは自分のせいだ、アリスは申し訳ない気持ちでいっぱいだった
「なっ・・・ナオ・・・アリス、おっ怒らないであげて・・」
明が必死に泣くアリスに抱き着いて庇っている
ヒック・・・ヒック「いいのよ~~~アキ君~~~私がわるいのよ~~~・・・ 」
さすがに二人抱き合って、おいおい泣いているアリスと明を見ると、直哉も怒りが収まって来た
「ったく・・・ずいぶんと仲良くなったものだな」
直哉が腕を組んで、片眉を上げて明とアリスを睨む
「あ・・アリス!この家を綺麗にしてくれてたんだ、それでお湯で汚れを拭こうって・・・ 」
「ごめんなさぁ~いい・・・・ 」
アリスがこの世の終わりのような、悲観にくれた声をあげた
明はアリスを必死でかばって、直哉がアリスをいじめた悪いヤツのように見ている。生まれてから自分をこんな目で見る弟は初めてだ
俺か?俺が悪いのか?
「あ・・・アリス、牧場主の奥さんらしくしたかったんだ・・・ここを綺麗にして、クッキー焼いて・・・み・・みんなが帰ってくるの待ってようって・・」
「牧場主の奥さんらしく?」
直哉はアリスを見やった・・・兄貴はあまり多くを語ろうとしない人間だ。もちろん直哉にもアリスの事は何の説明もなかった
でも今までとは比べ物にならないほど、アリスが来てから兄貴はよく笑い、明るくなって幸せそうだった
明とアリスの面倒を兄貴がかいがいしく、見ているのは直哉も知っている
もちろんそれで上手くいくなら、自分が口出しすることではないと思っていた
しかしやっぱり彼女はそれでは、物足りなかったんだろう・・・
直哉が分析した所、このお嬢さんは自尊心がとても高い、ただ守られてばかりで満足する女性では到底なさそうだ
ボリ・・・・
「え~っっと・・・・この家を?綺麗にしてくれようとしてたんだって?」
バツが悪そうに直哉が頭を掻いて言った
グスッ・・・
「そのつもりだったんだけど・・・・ごめんなさい・・・私・・・北斗さんのおうちで大人しくしてるわ・・・」
しょんぼり肩を落として、パンパンと膝の葉っぱを払い、アリスがトボトボと北斗の家に歩いて行こうとした
途端に直哉の胸が罪悪感で痛んだ
「あ~~~っ・・・ちょっと!待ってよ、ごめん・・言い過ぎたよ・・・家を爆破されかけて、あまりにも度肝を抜かれたもんでさ」
直哉の言葉にピタリとアリスは立ち止まった、でもまだこっちを振り向かない
「ア・・・・アリスぅ~・・・おかたずけしようよ!お・・おいしいクッキー焼くんでしょ!」
「ううん・・・・もういいの・・・もう余計なことしないわ・・・ 」
またアリスは涙をぐいっと拭った、明が直哉に必死にすがって言った
「な・・・ナオ!アリス!お片付けの資格を持ってるんだよ!!凄いんだよ!! 」
「資格?」
すかさずピッとアリスが、ポケットから取り出して「整理収納アドバイザー」の免許書を直哉に見せた
顔はこちらを向かずまだうなだれている、立ち止まったままのアリスは哀愁感、漂っている
「あ~!わかったよ!手伝うよ!義姉さん!本当はずっとこの屋敷を綺麗にしたかったんだ!でも片付け方がわからなかったんだ、指導してよ!! 」
「本当?!」
アリスが嬉しそうに両手を組んだ