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転生――死後、別の存在として生まれ変わるという考え方。輪廻とあわせて輪廻転生とも言う。
なぜ俺がいきなりこんな宗教染みたことを言い始めたのかと言えば、理由は単純で、俺は今まさにその転生を体験しているからだ。繰り返しになるが、転生とは死んでからまた新たな命として生まれることであり、それはすなわち赤ん坊からやり直すことを意味する。ここには本来、死ぬ前の記憶は受け継がれない。だが俺はくっきりはっきり前世の記憶が残っている。
一体どういうことなのだろう。そう思ってももう俺は赤ん坊だ。ふにゃふにゃだし、到底一人でなんて生きていけない。この体では親に頼るしかないのだ。
だから俺は考えるのをやめた。
考えてどうにかなる問題でもない気がしたし、そもそも考えたところでどうにもならないなら考えない方がマシというものだ。そういうわけで、俺は深く考えるのを放棄した。
「ジェイデン、愛しい子。貴方は兄を支えるために生まれてきたのよ」
母親らしき女性が優しく語りかけてくる。声音はとてもやさしく、まるで子守唄を歌われているようだが、言っている言葉はちょっと、いや大分おかしい。兄を支えるために生まれてきた? どういうこっちゃ。普通逆じゃないのか? 俺の方が弟なんだろ?兄が弟を守れ的なのが普通じゃね?
そう思ったが、悲しいかな。そんな疑問を口に出すことはできない。赤ん坊は喋れないからね!
……それにしても、この母親は美人である。金髪碧眼の美女、つーことは俺も将来は金髪碧眼のイケメンになるかもしれんな。前世ではそこそこルックスだったのでそれは素直に嬉しい。というか着てる服めっちゃ豪華だな。まるで王族みたいじゃないか。
いや、この場合はマジで俺王族なんじゃね? 絶対そう。王族生まれなんてめんどくさそうだけど楽そうだなあ。人生イージーモードとかにならんかな。
そんなことを思っていると、これまた王様らしい男がつかつかと歩いてきて母親の隣に立った。そしてこちらを見下ろして言う。
「生まれたか」
そう言って男は母親の肩を抱く。う~ん、こいつが父親……。威厳があって貫禄がある感じではあるが……、なんというか、冗談が通じなさそうな堅物っぽい雰囲気の男だ。あまり子供には好かれないだろうなぁ。
父親は続けて俺の顔を見て言った。
「第二王子であるお前はいずれこの国の王となる第一王子のライアネルを支える存在として生を受けた。これは大変名誉なことなのだぞ」
…………はっはーん? 数あるラノベや漫画なんかを見てきた俺にはわかるわかるぞ?
つまりこれはあれだろ? よくある兄貴が主人公で、弟である俺はそいつを支えになって最終的に殺されちゃったり駒のように雑に扱われるやつだろ? 兄貴至上主義だろ??
あ~はいはい。わかりました。なるほどね。
(家出しよ!!)
齢ゼロ歳。俺は母親の腕の中で家出を決意した。