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【大好きの100乗】
「好き」
突然そう言われて、思わず顔を上げた。
放課後の教室。
夕焼けに染まる机の向こうで、悠真がにこにこ笑っている。
「……急になに」
警戒しながら聞くと、悠真は頬杖をついてこちらを見た。
「今日まだ言ってなかったなーって」
意味が分からない。
いや、分かるけど。
分かるから困る。
「一日一回は言わないと落ち着かないんだよね」
へらっと笑う悠真に、胸がむず痒くなる。
この人、本当にずるい。
「……恥ずかしくないの」
「全然?」
即答だった。
迷いもなくて、余計に心臓に悪い。
「だって好きだし」
さらっと言う。
呼吸するみたいに。
その自然さが、たまに怖い。
「俺さ」
悠真は机に突っ伏しながら、こちらを見上げる。
「多分、世界で一番お前のこと好き」
「大袈裟」
そう返すと、悠真は不満そうに唇を尖らせた。
「大袈裟じゃないもん」
子供みたいな反応に、少し笑ってしまう。
すると悠真は嬉しそうに目を細めた。
「笑った」
その一言だけで、また胸がうるさくなる。
なんなんだ、本当に。
「ねえ」
悠真がそっとこちらの手に触れる。
指先が熱い。
「好きの10倍くらい好き」
「なにそれ」
「大好きの100乗くらい」
その瞬間。
思わず吹き出した。
意味分かんない。
馬鹿みたい。
でも。
そんなことを真顔で言ってくれる人なんて、きっと一生いない。
「……重いよ」
笑いながら言うと、悠真は少しだけ寂しそうに笑った。
「嫌?」
その顔がずるかった。
そんな顔されたら、嫌なんて言えるわけない。
「……別に」
そう返すと、悠真はぱっと嬉しそうに笑う。
太陽みたいな笑顔だった。
ああ。
こんなの。
好きになるしかないじゃん。
「じゃあもっと好きになって」
握られた手に、少し力がこもる。
夕焼けの教室。
隣で笑う声。
触れた指先の熱。
全部まとめて、胸がいっぱいになる。
きっとこれが、
“大好きの100乗”だった。
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