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#しーちゃんの小説コンテスト
めんだこ🤍🐙✨️
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(株)姫神V
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ルルちゃさん、第十二章読みました。博士がセトをかばって倒れるシーン、胸がぎゅっとなりました…「父さん」と呼んだ瞬間の涙が止まらなくて。町のみんなが「化け物じゃない」って叫ぶ温かさも、セトがやっと自分の居場所を見つけたんだなって感じられて、すごく沁みました。次が気になります!
夜の港町に、緊張が張り詰めていた。
海から吹く風が、誰も言葉を発さない静寂を揺らす。
神代は研究所の部隊へ銃を向けたまま、一歩も動かなかった。
「最後に命令する。」
「武器を下ろせ。」
しかし、理事会直属部隊の指揮官は鼻で笑う。
「神代鷹真。」
「君は研究者としても、軍人としても失格だ。」
「感情に流された。」
「……そうかもしれない。」
神代は小さく笑う。
「だが、人を人として扱うことを忘れた時点で、我々は研究者ではない。」
「実験体No.0124は道具ではない。」
「セトという、一人の人間だ。」
その言葉に、セトは目を見開いた。
神代が初めて、自分を番号ではなく名前で呼んだ。
「神代さん……。」
「撃て。」
指揮官の短い命令が響く。
次の瞬間、乾いた銃声が夜空を裂いた。
パンッ!
神代はとっさに身体をひねる。
弾は肩をかすめ、鮮血が飛び散った。
「ぐっ……!」
「神代!」
思わずセトが叫ぶ。
「来るな!」
神代は傷口を押さえながら怒鳴る。
「君は町を守れ!」
その瞬間、十数人の隊員が一斉に港へ雪崩れ込んできた。
「目標確保!」
「散開!」
セトは深く息を吸う。
(もう……逃げない。)
左目の青が静かに輝き、右目の黄色が鋭く光る。
長い青と水色の髪が風に舞う。
狼耳が立ち、白衣の裾が揺れた。
「ルル!」
「避難して!」
「嫌だ!」
「お願い!」
ルルは歯を食いしばる。
本当は離れたくない。
だが、セトの瞳には強い決意が宿っていた。
「……絶対帰ってこい。」
「うん。」
「約束だ。」
「約束。」
二人は短く笑い合った。
隊員の一人が麻酔弾を撃つ。
パンッ!
セトは地面を蹴った。
まるで風そのものになったような速さで弾をかわす。
「速い!」
そのまま一人の懐へ潜り込み、腕を掴む。
「ごめん。」
力を込めると、武器だけがきれいに地面へ落ちた。
骨は折らない。
命も奪わない。
セトは最後まで、人を傷つけたくなかった。
次々と武器を奪われ、隊員たちは後退する。
「化け物……。」
誰かが呟いた。
その言葉を聞いた瞬間、セトの動きが止まる。
化け物。
研究所で何度も浴びせられた言葉。
胸が締めつけられる。
「違う。」
その声はルルだった。
「セトは化け物なんかじゃない!」
町の人々も続く。
「そうだ!」
「セトくんは俺たちの家族だ!」
「うちの町の子だ!」
その声が港中に響く。
セトの瞳から涙が一筋こぼれた。
「みんな……。」
その時だった。
港の外れから一台の黒い車が猛スピードで走ってくる。
「何だ!?」
急ブレーキと共に止まった車から、一人の老人が降りてきた。
白衣姿。
しかし、その白衣は泥と血で汚れていた。
「博士!」
セトは息を呑む。
博士は荒い息をつきながら歩いてくる。
「間に……合ったか。」
「どうしてここに……!」
神代が驚く。
博士は苦笑した。
「牢を壊して逃げてきた。」
「最後くらい、自分の罪と向き合いたくてね。」
理事会の指揮官は顔をしかめる。
「裏切り者が。」
博士はセトの前へ立った。
「もう十分だ。」
「責任は、私が取る。」
「博士……。」
「セト。」
博士は初めて、優しくその名を呼んだ。
「すまなかった。」
「私は君を守ると約束したのに。」
「傷つけることしかできなかった。」
「父親失格だ。」
セトは何も言えない。
博士の目から、一筋の涙が流れていた。
「……僕。」
セトはゆっくり口を開く。
「ずっと。」
「どうしてなのか分からなかった。」
「でも。」
「今なら少しだけ分かる。」
博士は顔を上げる。
「あなたは最初から悪い人じゃなかった。」
「途中で、間違えちゃっただけ。」
その言葉に博士は声を詰まらせた。
「セト……。」
「でも。」
セトは首を横に振る。
「許せるわけじゃない。」
「研究所で苦しかったことも。」
「痛かったことも。」
「忘れられない。」
博士は静かに頷く。
「それでいい。」
「許される資格など、私にはない。」
「それでも。」
「最後に一つだけ。」
博士はセトの肩へ震える手を置いた。
「幸せになってくれ。」
「それだけが、私の願いだ。」
その瞬間。
乾いた銃声が鳴り響く。
パンッ!!
「博士!!」
理事会の指揮官が放った弾が、博士の胸を貫いた。
博士はセトをかばうように前へ倒れる。
「……っ。」
「博士!」
セトは慌てて抱き起こす。
白衣が真っ赤に染まっていく。
「なん……で。」
博士は弱々しく笑った。
「これで……ようやく。」
「君を守れた。」
「昔……約束しただろう。」
「家族になるって。」
セトの涙が止まらない。
「しゃべらないで!」
「死なないで!」
博士は震える手でセトの頭を撫でる。
幼い頃、一度だけ撫でてもらった記憶が、断片的によみがえった。
雪の日。
温かいスープ。
「おいしいか?」
と笑う博士。
忘れていた記憶が、涙とともによみがえる。
「……父さん。」
その呼び方に、博士の目が大きく見開かれた。
そして、安心したように微笑む。
「ありがとう……。」
その一言を最後に、博士の手は静かに力を失った。
夜空には、静かに雨が降り始めていた。
セトは博士を抱き締めたまま、声にならない涙を流し続ける。
ルルはそんなセトの背中をそっと抱き寄せた。
神代は拳を強く握り締め、理事会の指揮官を睨みつける。
「……もう終わりだ。」
その瞳には、怒りと悲しみ、そして覚悟が宿っていた。
博士の最期は、港町に新たな決意を生み出した。
セトはもう逃げない。
ルルと共に、自分の居場所を守るために。
そして神代は、理事会そのものを止めるために戦うことを決意する。
港町を巡る戦いは、ついに最後の局面へと動き始めた。