TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

1.根源的恐怖

「あっ、あ…」

「手…っ…腕…!」

「腕が…」

闇の悪魔は、この場にいた誰にも触れていなかった。

にも関わらず、この場にいた全員の腕が落ちた。痛みもなく、ただ腕だけが、壊れたおもちゃの部品のようにポトリと落ちた。

闇の悪魔は触れずに落としたのだ。院瀬見たちに向かって近づくその動き、たったそれだけの所作で。

音もなく、視界も奪われた闇の中で、手探りすらも許さないという恐怖。これが根源的恐怖の名を持つ悪魔の力だ。

混乱に陥れられた中、外国風の顔立ちをした青年が闇の悪魔の前にひざまずいた。

「私は人形の悪魔です」

青年は後ろで仰向けに倒れているデンジをちらりと見る。

「約束通り、チェンソーの心臓を持ってきました。私にどうか…マキマを殺せる力をください

青年の言葉に、隊員たちは耳を疑った。

2.強者の実力

「マキマさんを殺す…だぁ…?」

言葉を発したのはデンジだった。他の全員は圧倒的強者を前に憔悴しょうすいし、落ちた腕を見つめて弱々しく崩れ落ちたままだ。口を開くことすらできない。

闇の悪魔が青年の首元に向かって手を伸ばす。数人の人間の骨を繋ぎ合わせたような、長く細い腕。

と同時に、青年は首を捕まれ、音もなく頭をもぎ取られた。なんの抵抗もなく倒れ、死に絶えた。

なんとかこの闇の恐怖から逃れようと、隊員たちはそれぞれ攻撃を仕掛けるために動き出す。

だが、それも全て無駄に終わった。

宮城公安の1人が闇の悪魔の背後を取り、自身が持つ石の悪魔を使い、闇の悪魔を石化しようと目論んだが、姿を隠していた石の悪魔が見つかり、契約者もろとも石化され粉々に砕かれた。

続くビームが自らの血をデンジに飲ませ、口でスターターロープを思いきり引いた。それを見た闇の悪魔がビームに向かって指をさす。たったそれだけの動作でビームは首と胴体を切断され、鈍く音を立てて転がった。

超越者に対し絶望しきり、動けずにいる魔人たちを背に、宮城公安のもう1人とクァンシが蹴りを武器に動いた。が、2人は闇の悪魔に触れることすらできずに全身を切り刻まれ、背後にいた魔人たちもその攻撃を食らった。

リヅもイサナも攻撃がかすり、顔や体の皮膚が深く裂け、皮一枚のところまでちぎれ、力なく倒れた。

みんな死んでいく。何もできないまま目の前で命が失われていく。

(まただ…また私は…)

この時、院瀬見だけでなくアキも同じ思いを持っていた。

援護に出たいのに、そのためにここにいるというのに、触れる隙すら与えられない。一歩でも動けば途端に死ぬと全身で感じるのだ。

そんな中飛び出したのは暴力。

仮面を取っている。今まで制限していた力をここで解放したのだ。

暴力は宮城公安隊員と同じく闇の悪魔の背後を取り、かかと落としを食らわせようとした。

しかし圧倒的なパワーを誇る暴力でさえ、闇の悪魔に一撃を入れることはできなかった。何語とも認識できない呪言のようなものを闇の悪魔が呟いた瞬間、全身穴だらけの蜂の巣にされ、地に落ちた。

闇の悪魔が暴力に注意を引かれている間、起き上がったデンジが不完全なチェンソーの出し方をした状態で攻撃に出た。当然デンジの攻撃を効かず、体を雑巾のように絞られ、骨を砕かれて再び倒れた。

その次の瞬間に、なおも死なずにいた暴力は口から腕を生やし、頭上からもう一度攻撃をしようと立ち上がった。

それもあえなく、闇の悪魔がどこからか出した鈴のついた剣によって胴を貫かれ、全身から血を噴き出して死んだ。

「…!!」

噴水のように頭上から勢いよく降りかかる暴力の血を院瀬見は頭から受けた。ぼたぼたと赤黒い血液が滴り落ちてくるのが分かった。

残る天使と、早川アキ。膝をついて動くことのできないアキを、闇の悪魔は上から威圧するように覗き込む。

瞳孔が開いたまま微動だにしなくなったリヅとイサナを背に置いた院瀬見は血を被りながら、闇の悪魔を食い入るように見つめた。

暴力への攻撃に使った、鋭く大きな鈴剣。

漆黒のマントをなびかせ、洋風の装いをしているように見える闇の悪魔には少し不釣り合いな和風の剣。

院瀬見には見覚えがあった。

3.鈴のついた剣

忘れもしない、18歳の秋。

6年もの間行方不明だった両親と弟が、突如として森で発見された。

時効による捜索打ち切りギリギリのタイミングで発見、そして事件から長らく経っていたこともあり、死体は当然白骨化。粉々になり跡形もなくなった状態だった。かろうじて腐食せず、周りに落ちて残っていた靴や持ち物などでやっと身元がわれたらしい。

発見現場の近くには使われなくなった古い神社があった。 鳥居もとっくにち果て、赤い塗装がほとんど剥げていたのを院瀬見は覚えている。

そのすぐ側に落ちていたのが、鈴のついた錆びた剣。

そして元々手の部分だったであろう骨の集まりの中に、これもまた錆びた大きな鈴。

考えられるものとして、剣に触った─鈴を手にしていたのは院瀬見の弟・カザメ。

そして今、それと全く同じ形状をした真新しい剣を闇の悪魔が持っている。

相手に触れることなく瞬く間に殺す、悪魔としてのその強さ。

死体発見現場に落ちていた鈴の剣。弟らしき死体が手にしていた鈴。

心臓の鼓動が大きく響いた。

4.真相

「…なぁ」

院瀬見は俯き、跪いたまま声を上げた。

「お前だろ…」

「…! 院瀬見…やめろ…」

同じく俯いたまま視線を変えないアキが止めるももう遅い。

「なぁ…お前だろ…!!」

院瀬見は体を起こし、片膝を立てた。

私の命より大切な家族を殺したのは─お前だろって言ってんだ!!

全ての憶測が線で一本に繋がった。

家族が人気のない森で発見されたのは、既に命を落とし、倒れていたカザメを両親が森で発見したから。

カザメが森に入ったのは、滅多に目にすることのない珍しい剣が森に落ちていたのを見つけたから。

カザメが命を落としたのは、もともと闇の悪魔が落としたものである剣に触れたから。鈴を誤って取ってしまったから。

何らかの方法によって現世に闇の悪魔が現れたとき、剣を落としていき、それをカザメが拾ったことによって闇の悪魔の怒りに触れた。

極めつけはデンジが闇の悪魔に攻撃をしかけたときだ。身体を捻り回され、耐え難い音を響かせながら、骨をバラバラに砕かれていた。

家族もそうだった。

普通の事故や人間の手による他殺なら、3人分の骨が混ざり合って発見されるような惨事になるはずがない。

「その剣を見たことがある…お前に触れずとも人が死ぬなら、剣にだって触れたら即死なんだろ…」

闇の悪魔は視線をゆっくりと院瀬見に向けた。

「カザメが…死んだ弟が昔、その剣についた鈴を手にして見つかった。お前が殺したんだろ…お前がさっきしてみせたみたいに、私の家族を捻り潰して、骨を折って殺したんだろ…!!

怒りが爆発するのを押し殺し、震える声でそう言う院瀬見の前に、闇の悪魔は立ちはだかった。

そして、自身の頭上から何かを引き出す

「─!!」

酷く錆びついた鈴の剣。本来であれば4つついているはずのひとつ、鈴がなくなっているもの。

あの時院瀬見が見たものと全く同じものだった。

テメェ…!!!

「よせ─⋯!」

院瀬見はアキの静止を押し切り、闇の悪魔に飛びかかろうとした。

だが、院瀬見程度では当然勝てるはずがなかった。

身体中の至る部分─両脚から胴、首や皮膚などを捻りちぎられ、裂かれ、あっけなく殺された。


気づけば一行は地獄から抜け出していた。

ほんの一瞬のことだった、どこからともなく蜘蛛の悪魔・プリンシが現れたと思えば、その”中”から更にマキマが現れた。

マキマは闇の悪魔からの攻撃を受けながらも、死んだはずの外国の青年の元に近づいて触れ、地獄の悪魔に新たな契約を申し込んでいた。

全てを捧げる代わりに、この場にいる全員をお帰しください、と。

闇の悪魔や地獄の悪魔がどうなったかは定かでない。隊員や魔人たちが死に倒れていた地獄は一変し、デパートの屋上へと姿を変えた。

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚