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ドレスローザの町を、ボロボロの体で走る。途中簡単な応急手当はしたが、既に包帯に血が滲んでいる。でも正直アドレナリンが出ているのか痛みはあまり感じない。
「大丈夫ですか? そんな怪我をして……」
「大丈夫、です……それよりも、コロッセオはどっちですか…?」
「コロッセオは……」
訪ねた通行人が指を指そうとした時、激しい衝撃音が聞こえた。俺の体は勝手に動き出した。徐々にコロッセオが見えてくる。
捲れた地面に土埃、割れたガラスや建物の残骸。その中心に立つ男――ドフラミンゴ。ドフラミンゴの前に倒れているの、ローじゃないか? こんなに早く決着ついたのか? それもあの男の勝利で?
あれ…ドフラミンゴ、何持ってんだ…? 銃……じゃ、ないよな……?
俺は走り出す。やめてくれと心の中で何度も叫びながら。いや、声にも出していたかもしれない。だけど俺の声は誰にも届かない。ドフラミンゴは倒れたままのローに向かって金の装飾が施された銃を向けていた。
ドン、という音と共に、またローの体が大きく仰け反った。ドフラミンゴは無表情のまま、再び引き金を引く。今度は腹に命中する。次は肩、足……俺は飛び出してローに覆いかぶさる。ここでドフラミンゴに歯向かえたら、どんなにかっこよかっただろうか? いわゆるヒーローのようなものになれただろうか?
でも弱くて情けない俺から出た言葉は――
「やめてください……」
懇願だった。
ああ、本当にカッコ悪い。
ローの口から鮮血が流れる。体が冷たくなっていく。
「トラ男!!」
目の前のコロッセオからルフィの声が聞こえた。そして次に聞こえた声は、ドフラミンゴの声だ。
「騒がしくしてすまなかったな。七武海海賊、トラファルガー・ロー。コイツが今朝の王位放棄誤報事件の犯人だ。俺を引きずり降ろそうとしていたが、安心しろ。今退治した」
ドフラミンゴの言葉に、その場にいた通行人たちは歓喜の雄たけびを上げる。俺はただ、自分の無力さを噛み締めることしかできなかった。
俺は一体何のためにここにいるんだろう。偉そうにローに「ついて行く」なんて言ったのに、何もできずにこうして見ているだけ。何が一緒に戦いたいだ。笑わせるんじゃねえよ……。
「おい! ミンゴ! お前、よくもトラ男を!!」
「麦わら、てめえにとやかく言われる筋合いはねえ。ローはもともとおれの部下。ケジメはおれがつける」
ドフラミンゴはそう言うと、ゾロと錦えもんがこちらに向かって走り出した。
「ジェイデン! トラ男を運べ! 錦はジェイデンにつけ! あいつ手負いだ!」
「承知!」
「えっ、あ、ああ」
ゾロに指示され、俺は慌ててローを抱え上げた。俺より身長が高いはずなのに、とても軽く感じる。傷だらけで青白い顔、生気のない目……これが死の気配というものなのだろうか……? 俺の頭の中を嫌な考えばかりが駆け巡る。
逃げようとした時、俺は自分の体が重くなるのを感じた。それは俺が手負いだからではない。
「ふじ、とら…ァッ!!」
「すいやせん、あっしにも仕事が残ってましてね」
藤虎の能力により、俺ちは身動きが取れなくなったのだ。だがすぐにゾロが藤虎に斬りかかり、一瞬俺にかかった重力が弱まる。
「ゾロ! 藤虎はズシズシの実の能力、重力を、」
忠告しようとした時、藤虎が重力操作をしたことにより床に大きな穴が開き、ゾロがその穴に落ちていく。
「ゾロ殿!」
『ゾロがどうした? 錦えもん!』
錦えもんの腰にいる電伝虫からウソップの声が聞こえた。錦えもんは今見たありのままを口にした。ゾロが消えた、と。
「錦えもん避けろ!」
「は――うわああっ!!」
俺の横にいた錦えもんがドフラミンゴの攻撃で吹っ飛ばされる。見てるだけじゃだめだ。見てるだけじゃ、見てるだけじゃ!!!
「嵐脚ッ!」
俺はローを抱えたまま技を放つ。ドフラミンゴの体を切り裂くように放った鎌風は、あっさりと避けられてしまう。くそ……ッ、俺にはこんなことくらいしかできないのか……? 違う。俺はもっと、もっと戦えるはずだ。
「ご一行さんに親切にしていただいたってえのに、恩を仇で返すようでなんとも因果な渡世にござんす」
「なんと! ドフラミンゴと共におる男が、か…海軍大将でござった!」
「くっ……嵐脚……嵐脚……ッ」
俺の攻撃はことごとくドフラミンゴの体に当たらない。まるで遊ばれているようだ。ドフラミンゴは笑いながら俺に向かって歩いてきたかと思えば、ふっと姿を消す。視界に捉えようと目線を動かした時、俺の足に何かが触れたような感触がした。――かと思えば次の瞬間。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!!」
俺の左足は折られていた。激痛に思わず叫ぶ。
ローを抱えていた腕の力も緩み、俺はそのまま倒れ込む。
ああ、俺は死ぬのか……? このままじゃローも死んじまう……そんなことになったら俺は、俺は――。
霞む視界の中、俺は自分の体が浮くのがわかった。ドフラミンゴの手が俺の首を掴んでいる。苦しい、息ができない。意識が、飛び……――