まるで、初恋を知った少年みたいな気分。
「いやいやいや…いかんぞ…。俺には、妻と子供が…」
独り言を言いながら、車を走らせる。
恐らく今の顔は相当ふ抜けているだろう。
そう思いながら窓の景色をちらっと眺めた。
だけど…車の窓ガラスに映る自分を見て現実に引き戻された。
ボサボサの頭に、手入れを怠った髭。肌はカサカサで、ところどころ刻まれたシワ。
どこからどう見ても老け込んだ中年だ。
見た目だけじゃない。中身だって、今じゃ妻に相手にされなくなるほどつまらない。
子供も、俺には懐かない。きっと父親としての器がないのを感じているんだろう。
それに対して、藤塚さんは綺麗で、可愛らしく若い。未来に無限の可能性を秘めている。
そんな彼女が…
「…こんなおじさん、本気で好きになるわけないよな…」
自嘲気味に呟いた声は、虚しく車の中に響いて消えていった。
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