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「藤塚さん、お疲れ様です。今、お帰りですか?」

ふわり、と上品な笑顔。周りには花が舞っていそうな綺麗で整った顔立ち。

誰もがその仕草に、魅了されるだろう。

……この人の本性を知らなければ。

「…わざとらしい笑顔は止めてくださいよ。」

制服を脱ぎ、ハンガーにかけると目の前の女性を睨み付けた。

すると彼女…雛瀬さんは、しばらく無言になったあと、肩をすくめてため息をつく。

上っ面の笑顔が剥がれた。

「全く、ほんとーに可愛げがないんだから。」

「別にあなたに可愛いとか思われたくないので。ていうか、あまり職場で話しかけないでくれません?誰かに聞かれたくないんで。では…」

一刻も早く、ここから立ち去りたい一心で身支度を整えると、足早に動き出そうとする。

ところが――

「まあまあ、そんなに焦らないで?ちょーっとお姉さんとお話しましょう?この時間はみんな帰ってしばらくは誰も来ないから。」

「いっ…」

目にも止まらぬ早さで腕を捕まれ、呼び戻されてしまった。

華奢なその体型のどこにそんな力があるのか、振りほどこうとしてもびくともしなかった。

彼女の表情は笑顔だったが、無言の圧力を全身に感じる。

このまま帰さないわよ。そういわれてるみたいだった。

これ以上抵抗するのは無駄だと悟り、私は身体の力を緩めた。

何を言いたいのかは既に予想できていた。

「お姉さんって…年齢的にはおばさんの間違いじゃ…」

「…何か言った?」

腕に込められた力が強まる。

「いった…!!な、何でもないですから離してください…!!逃げませんから…」

「そう?ならよかった。」

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