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死体。血溜まりの中に同化する死体。
大量出血のせいで本来の色を失った肌。
血がなくても分かるはっきりと分かる死の色。
死後硬直が始まっていないであろう新しい死体。
鉄臭い匂い。
眼前には死体。
精神的なショック。
情報処理が追いつかず、生理的嫌悪感に駆られ涙が出てくる始末。
視界が真っ黒に染まったとき、誰かのぬくもりを感じた__
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首領の命令は絶対。
其れが彼の所属する「ポートマフィア」の掟だった。
無論、彼の立場である「5大幹部」は首領に意見を言うことも許される特別な存在だった。
彼はよほどのことがなければ意見しなかったが。
今回も何も言わずに医務室に運んだのだ。
只少し、淋しげな表情を一瞬垣間見せただけで。
異能力を使い少女を持ち上げ、
部下の運転する黒塗りの車に一緒に乗り本部まで連れてきた。
周りを歩く部下は未だ幼い少女を憐れみ、通夜の様な薄暗い雰囲気を醸し出していた。
その集団を見、幹部の腕の中で眠る少女を見た人間は事情を察し、あるものは痛ましいものを見る目を。そしてまたある者は悲しみからかそっと目をそらした。
医務室に運ばれていく少女。目立った外傷は見受けられないが幹部に抱えられた時点で完全に終わった、ということである。
部下に運ばせれば良い、が。万が一逃がしたら、?そうなればその部下に罰が下り、監督としての責任を問われる。まあ、彼の場合、任せて自身に罰が下るのを嫌がり、自らやっている、というわけではなく、只単に一番近くにいたのが自分だから、という理由であろう。又は部下に余計なストレスをかけまい、という配慮か。
いずれにせよ少女を見たものは、、、、、、特に妻子を大事にしている構成員は悲しげに眉をよせ、目を反らした。
そんな様子を見ていた彼は腕の中の少女を一瞥し、また前を向き、複雑な心境のなか医務室へと少女を運ぶのだった。
此の後首領室に報告しなくては、と思いつつ。
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目が覚めた時、其処は病院特有の消毒や薬品の匂いが充満する場所だった。
手足の物に気が付かなければ病院だと思っていただろう。
手錠を掛けられ、足かせが付けられてさえいなければ。
妙に冷静な侭の自身の頭。
誘拐され、監禁されたのであろう。
逃げようにも此処がどこかわからない時点で諦めることしかできないのだ。
「はあ、、、、、」
思わずため息が漏れる。
手錠のせいで起き上がりにくい上体を起こし、周りを見渡す。
見れば見るほど病院だった。
窓は一つもなく、ホコリも一つもなかった。
中也「起きたか?」
ぴくり、と跳ね上がる肩。
いま見渡したはず。
何処に居た?
中也「最初から居たぞ?」
風景に同化していたらしい。あれか、例の異能力か。
きっと此の人はカメレオンのような異能力なんだろうなあ、、、
「あの、此処は何処でしょうか。」
そう聞けば男は少しバツが悪そうに目を反らし、言いづらそうに口を開いた
中也「ポートマフィア本部だ、」
「ぽーとまふぃあ、?」
全然聞いたことがない。
本部ってことは支部があるのか。
まふぃあ、、、、、って盗賊とかのことじゃなかったっけ、?
中也「おま、!ポートマフィアを知らねえのか、!?」
男性は此れでもかと言うほど驚愕していた。
眼球が落ちそうなくらい目を見開きこちらを凝視している。
「有名なんですか?」
私がそう聞けば諦めた様に肩を落としたのだった。
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